木村栄文、通称エイブンさん71歳。70年代から、次々と斬新なテレビドキュメンタリーを発表、テレビ界に一大旋風を巻き起こした福岡の民放、RKB毎日の元ディレクターだ。
ドキュメンタリーは創作だ――。そういってはばからないエイブンさん、あえてドラマの手法を取り入れた「苦海浄土」など毎年話題作を発表、芸術祭の大賞をはじめテレビの主な賞を総なめにし、テレビ界の革命児と称されるようになる。現実と虚構を交錯させながら、現代社会と人間の深奥に迫る独特の世界に、多くのドキュメンタリストが影響を受けた。
そのエイブンさんに11年前、苦難が襲いかかった。難病パーキンソン病にかかり、身体が動かず、声も出なくなったのだ。妻のサポートなしには、日常の生活もままならない。しかし、その中テレビへの思いはかえって募っている。もういちどドキュメンタリーをつくりたい――。エイブンさんは、再び現場に復帰するため、最新の治療法を受けることを決意する。
番組では、妻との闘病生活の中、再び新作に取り組むエイブンさんの日々に密着。その執念を支える独特の表現世界に迫りながら、時代を駆け抜けた一人のテレビマンの生き様を描く。
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