1月14日(土)放送
お寺ルネサンスをめざして
写真左:上田紀行さん(文化人類学者)と高橋卓志住職(長野県松本市の神宮寺)との対談
写真右:新潟県新潟市の妙光寺で行われた生前戒名を与える授戒会。生きているうちから寺に関わる、人が集まる寺にする活動を進めている。

 「葬式仏教」とやゆされて久しい日本の仏教。しかし、今、お寺再生の動きが高まっている。多くのユニークな僧侶が、お寺を新しいコミュニティの中核として仏教の変革をめざそうとしている。

 文化人類学者の上田紀行(東京工業大学助教授)さんは、『がんばれ仏教』と題する著作を発表し、自ら「仏教ルネッサンス塾」の主幹を務めるなど仏教再生を考えて続けてきた。上田さんによれば、こうした新しい寺の活動は不透明な日本社会の未来を切り拓く大きな鍵を握っているという。

 「元を正せば江戸時代までの寺は日本社会で文化、教育、福祉、医療、土木など、多様な機能を持つコミュニティーセンターだった。そしてそこに住む住職は多様な側面から地域を支える指導者でありボランティアであった。全国の自治体がもつコミュニティーセンターは約2万か所、しかし全国津々浦々に広がる寺は8万件近くある。元々地域を基盤として活動するこれらの寺が再生すれば、地域の活性化に大きな意味を持つ。

 上田さんはそもそも人間の苦悩に向かい合うのが宗教であり、宗教の壁を越えて呼びかけてくる「生きる意味」のエネルギーこそが、いま未来を見失った日本人が将来を考える支えとなるという。

 番組では上田紀行さんが日本各地の革新的な寺や仏教再生の活動を続ける若い僧侶たちを訪ね、対談を重ねる。ユニークな活動を紹介しながら、寺の持つ新しい可能性と日本社会の未来の在り方を思索する。訪問する寺院の候補は、

・應典院(大阪・浄土宗):
「仏教の仕事は“問う”こと」とし、若者アートの活動を通じてつながりを図る。

・妙光寺(新潟・日蓮宗):
人生の末期に向けて、生前からの個人と寺の新たな関係を提言。

・神宮寺(松本・臨済宗):
国際援助活動やデイケアサービスを通じ、コミュニティーケアのあり方を模索。

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