9月10日(土)放送
島クトゥバで語る戦世

沖縄戦体験者の証言を記録する活動を行っている
写真家の比嘉豊光さん(奥右)と地域史記録家の村山友江さん(奥左)
 一般住民を巻き込んだ地上戦で10万人以上が犠牲になった沖縄戦。そのせい惨な体験を語る沖縄人の言葉は重い。このオバァ、オジィたちの証言を映像で記録している人たちがいる。「琉球弧を記録する会」――琉球弧に伝わる言葉と文化を記録に残そうと97年に発足した――の写真家・比嘉豊光と郷土史家・村山友江だ。

 証言者の語りは、すべて彼らが使ってきたシマ(集落)の言葉。これまで「戦争のことは語りたくない」と口を閉ざしてきたオバァ、オジィたちが、細かな感情とともに、標準語では語れなかった生々しい沖縄戦の記憶を、一気に吐き出している。これまでに集めた証言は400人を超えた。終戦60年の今年、新たに500人の証言を撮影することを目標に、日々記録作業が続けられている。

 沖縄にはシマ(集落)の数だけ、シマクトゥバ(方言)があると言われる。もともと水源に乏しく、台風などかれつな気候下で集落の団結力を高めて生きてきた結果だとされる。シマクトゥバとは、集落の人々の暮らしを表すものであり、人々の結びつきの象徴だった。戦前から「本土復帰」に至るまで、様々な「方言撲滅運動」にもかかわらず、シマクトゥバは生き続けてきた。それは、戦争と復興の中で傷つきながらも、集落の暮らしと人々の結びつきが生き残ってきたことを意味している。

 比嘉たちの聞き取りを追いかけながら、老人たちがシマクトゥバで語る沖縄戦の実相と、シマクトゥバの世界を描く。
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