先進国で唯一、“施設”で暮らす知的障害者が増え続けている日本。「まちで暮らしたい」という障害者本人の声は長く封印されてきた。そのなかで宮城県は去年、県内すべての施設入所者を順次、地域社会へと送り出す「施設解体宣言」を発表。関係者に衝撃を与えた。
県内最大の施設、宮城県船形コロニーではすでに150人近くが地域に移り住んだ。去年6月には、比較的重度の障害者5人が仙台市内にある住宅地の一軒家、“グループホーム”で共同生活を始めた。食事や近所づきあいは福祉法人が派遣したスタッフがサポートしている。
はじめは戸惑い気味だった5人だが、日を追うごとに変化が出てきた。自閉傾向がある人がみんなの分のコーヒーを入れるようになったり、無表情だった人が好きな歌を口ずさんだりするようになったのだ。また、町内の清掃に参加するなど地道な活動を続けた結果、地域の人たちの協力も得られるようになってきた。
しかし、知的障害者が地域で暮らしていくのは容易ではない。就労が難しい重度障害者が昼間何をして過ごすか、地域での支援体制、万一のけがや病気の際の備えなど、いくつもの高いハードルが待ち受けている。
受け皿となる民間の福祉法人は、この難局をどう乗り越えていくのか? 誰もが地域でともに暮らせる社会は可能なのか? この壮大な実験の成否は21世紀の日本を占う試金石である。
番組では、施設を出てまちのグループホームに移り住んだ重度の知的障害者を1年にわたり取材。日本の地域福祉の現状と課題を浮き彫りにする。
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