4月16日(土)放送
次世代カーへの挑戦 〜電気自動車は普及するか〜
 最高時速は370キロ、一回充電すれば300キロメートルを走るという、これまでの常識を覆すスーパー電気自動車が誕生した。開発したのは慶應大学教授の清水浩さん(57歳)。排気ガスを出さないエコ・カーを普及させようと、20年以上にわたって、電気自動車の研究開発に携わってきた。

 「これまで電気自動車が社会に普及してこなかった理由のひとつが、性能的にエンジン車に劣っていたからだ」。そう考える清水さんは、モーターや電池といった電気自動車の核となる部品で最先端の技術を結集させ、加速性能ではポルシェよりも勝る電気自動車を作ることに成功した。実は、モーターや電池の技術は日本が世界をリードしており、今回の高性能電気自動車の開発は日本だからこそ実現できたと、清水さんは日本の製造業の底力を強調する。

 しかし、産業界の電気自動車への対応は厳しいのが現状だ。背景には電池を中心とした生産コストがエンジン車よりも割高になってしまうこと。そして、これまでの自動車産業の中核技術であるエンジンが不要になってしまうことへのメーカー側の抵抗があるという。

 大気汚染が激しいカリフォルニア州は1990年代初頭、新たに販売する車のうちの一定量を、排気ガスを全く出さない低公害車にすべきだとする法案を提出。これを実現するため、日本も含め世界の大手メーカーは電気自動車の開発に乗り出した。しかし、規制はいつの間にか緩和されていまい、電気自動車は忘れ去られていった。

 そうした中、電気自動車の実用化を推し進めようとする国が現れた。中国である。環境問題解決の切り札として、注目したのが比較的簡単に製作できる電気自動車だった。オリンピックが開かれる2008年までには北京市内に1000台の電動バスの導入を計画するなど、国を挙げて電気自動車の産業化を推進している。

 果たして、高い技術力を持ちながらもなかなか普及が進まない電気自動車が日本社会に受け入れられる日は来るのか?電気自動車を取り巻く産業界の現状と課題、そして、これからの車社会の在り方について議論していく。
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