8月28日(土)放送
アンコール(第56回・6月19日放送) 消えぬ戦世(いくさゆ)よ 〜随筆家・岡部伊都子の語りつづける沖縄〜
 沖縄戦において日本軍の組織的抵抗が終結したのは昭和20年6月23日。
 まもなく59年目の慰霊の日を迎える。
 本土と沖縄の人々に様々な意識の変化をもたらした戦後の長い歳月。この間、一貫して沖縄を見続け、語り続けている女性がいる。随筆家・岡部伊都子さんである。

 沖縄は、岡部さんの許婚(いいなずけ)だった陸軍少尉、木村邦夫(きむらくにお)さんが、昭和20年5月に戦死した場所である。当時19歳で軍国少女だった岡部さんは、出征する木村さんを喜んで戦地へ送り出した。木村さんが、彼女にだけ告白すると言い残した言葉の意味を理解できないまま・・・。

 岡部さんは戦後、木村さんに対してとった自分の行為にさいなまれることになる。
 昭和43(1968)年、岡部さんは意を決して沖縄へ渡る。まだ日本に復帰する前の沖縄である。そこで初めて岡部さんは、壮絶な沖縄戦の実相と日本から切り離された沖縄の現実に向き合うことになる。そして岡部さんは、木村さんが最後に彼女にだけ告白した言葉を世に公開し、自分のとった行為を問うことを決意する。

 以来、岡部さんは、沖縄を心の故郷と決め、復帰前、復帰後の沖縄と自宅のある京都との往復を続けている。沖縄への深い愛情と非戦の思いを文学作品にしながら、その一方で、木村さんに対する自分の行為を聴衆に直接語りかける講演の旅も続けてきた。北海道から沖縄まで、その旅路は続いている。81歳の今も、頑固に戦争の悲劇、差別の悲劇を語り続ける。
 岡部さんが、平和を希求しながら、なおも続く戦争の現実。そして風化していく沖縄の悲劇。岡部さんにとっては消えぬ戦世(いくさゆ)が続く。

 「私は沖縄の骨になりたい」と、病弱な体を奮い立たせ、痛恨の原点となった自分の経験を語り続ける岡部さん。戦争の悲劇を訴え続ける岡部さんの言葉とひたむきな姿をドキュメントする。

(6月19日に放送した番組の再放送です)
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