4月17日(土)放送
競争ではなくて 〜子どもをめぐる対話 霊長類学者と教育評論家〜
 「キレる子ども」「閉じこもり」「虐待」。教師や親たち大人と子どもの関係が複雑になり、教育の指針さえ揺らいでいる今、異色の切り口から子どもと向き合おうという2人が注目を集めている。日本を代表する霊長類学者の一人、伊澤紘生(いざわこうせい)さんと教育評論家の斎藤次郎(さいとうじろう)さんだ。
 
 宮城教育大学で教べんをとる伊澤さんは、野生のサルのいる自然こそが最高の教師だと考えている。この確信は30年前、野生のサル観察から生まれた。それまで自然界の基本原理の象徴と考えられてきたボスザルを信じていた伊澤さんは、本来サルにはボスが存在しないことをつきとめた。エサという単一の価値観のない自然界では、サルは競争せず自由きままに生きていたのだ。その姿にほれこんだ伊澤さんは今、競争社会にもまれながら教員を目指す若者にサルを観察させ、また小学生を集めてはサルのいる自然を体験する会を開いている。
 
 一方、子ども評論家の斎藤次郎さんのモットーは「子どもの事は子どもに習え」。 斎藤さんは9年前、青森県の小学校に“留学”した。一年間、小学4年生になった斎藤さんには、競争論理に突き動かされ、子どもの自然な価値観に目を向けない教師や親の姿が鮮明に見えてきた。今、子ども研究誌や母親と語る会を通じて「子どもの問題は全て大人の問題だ」と説いて回っている。
 
 子どもの問題は、子どもの生きる社会構造や大人の価値観の問題だという2人の対話から現代の教育や子育ての問題の核心を浮き彫りにする。
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