9月13日(土)放送
ニューヨーク 忘れてはイケナイ物語 〜イラストレーター 黒田征太郎〜
 9.11から2年。
 ニューヨーク在住のイラストレーター黒田征太郎さんは、あの日以来毎日、手製の絵はがきを日本に送り続けている。黒田さんの住まいは事件の現場から4キロほど北にあった。

 「あの日、いつもと変わらぬ9月11日は、恐ろしいほどの快晴でした。」
 惨劇を目の当たりにし、虚無感に突き動かされた黒田さんは、新聞や雑誌を切り取り、絵を描き、言葉を書き留めた。炎上するビルの写真に、
「HIROSIMAを連想してしまうオレは日本人?」
と書き記す。

 黒田さんは昭和14年大阪生まれ。人生の記憶は戦争から始まった。名前には出征の征。母の故郷への疎開体験はつらい思い出として刻まれている。
 戦後すぐ父が死に、貧しさの中で過ごした少年時代。黒田さんにとってアメリカは自由と豊かさの象徴、強烈なあこがれの国になった。
 高校中退後、船乗りなどさまざまな職を経てニューヨークに渡り、帰国後「ニューヨーク帰りのイラストレーター」として一躍有名に。92年にはニューヨークに移住し、自分の中のアメリカを見つめる中で、9.11、それに続くイラク戦争が起こった。

  「僕の中にある戦争」「僕の中にあるアメリカ」にこだわる黒田さんは、野坂昭如さんと共同で「戦争童話集〜忘れてはいけない物語り」を制作、「日本のグランドゼロ」広島のきのこ雲の絵を毎日何百枚も描き続けるなど、多様な活動を展開している。
 今この時代に、そして自分にとって、絵を描くことの意味は何なのか?
 ニューヨークと日本を行き来しながら、試行錯誤を続けるイラストレーター黒田征太郎が、戦争、日本、アメリカ、そして自分自身について語る。

スタジオ出演:黒田征太郎 (イラストレーター)
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