
ハリウッドで活躍する特殊メイクアーティスト、辻一弘(44歳)。
「Men in Black」「猿の惑星」など大作を次々と手掛け、アカデミー賞に2度ノミネートされた。
「顔」に猛烈な興味を持つ辻の原点は幼少期に遡る。
人々が本音をあまり表に出さない京都で生まれ育ち、さらに子どもの頃、両親が離婚したことで常に人の顔色を伺うようになったという。
しだいに人の表情を読み取る鋭い観察眼を持つようになった。そして27歳で単身アメリカへ渡り、卓越した技術と独創性で、常識を覆すさまざまな手法を生み出し、一躍ハリウッドのトップに上り詰めた。
そんな辻が最近、取り組んでいる新しい挑戦。
それは、過去の偉人の顔をある瞬間で切り取り再現する、彫刻作り。
特殊メイクの最高の技術を駆使して制作する、辻が独自に考え出したアート作品だ。
例えば10万本以上の髪の毛は一本一本手で植えていき、皮膚の色は10種類以上の色を重ねて表現するなど、一つの顔を4か月以上かけて作っていく。
そして、顔をその人の人生も凝縮させて表現することにこだわった。
昨年2作目に制作したリンカーン像は公開されるなり、インパクトのあるユニークな彫刻だとして大きな話題を集めた。
番組では、3作目に選んだアンディー・ウォーホルの彫刻作りに密着した。
ウォーホルは現代アート界に革命を起こしたが、その人物像は謎に満ちた部分が多く、自分の顔に極度のコンプレックスを持っていたという。
その波乱の人生を辻はどのように解釈し、どのように表現するのか。
世界一の特殊メイクの技に迫るとともに、辻の「顔」にこだわってきた人生と、「顔」への模索を描いていく。
これは、「顔」に魅せられてきた一人の男の物語だ。
(内容59分)