
1995年の阪神・淡路大震災で深刻な被害を受けた街がある。神戸市西部の新長田地区。震災後、神戸市はこの街を復興させようと総事業費2,700億円の巨大開発計画を打ち出した。新長田駅南再開発事業。被災地を商業ビルや高層マンションなど44棟が建ち並ぶ「神戸の西の副都心」として再生しようとしたのである。震災で焼け出された商店主たちは、新しい街づくりに再起の希望を託した。
それから19年目を迎えた新長田。再開発ですっかり生まれ変わったはずの街に異変が起きていた。真新しい商業ビルの中にシャッターを閉じたままの場所が目立つのである。再開発によって生み出された店舗スペースが大量に売れ残り、商店街を訪れる客の数は震災前より減っている。借金をして再開発事業に参加した商店主の多くが深刻な経営悪化に苦しんでいた。震災前から新長田で商売をしてきた老舗の商店主はいう。
「店を売りたくても買い手がない。貸したくっても借り手がない。10年かそこらで資産価値が3分の1に落ちてしまう街なんてほかにあると思う?・・・ちょっと酷すぎるわ」
いま東日本大震災で再び注目される「復興」、震災から19年目を迎えた神戸の知られざる現実を伝える。