2012年12月2日(日) 夜10時
2012年12月9日(日) 午前0時50分 再放送

東京という夢
YASUJIと杉浦日向子

7年前46歳で惜しまれながら世を去った漫画家・杉浦日向子。「百日紅」、「百物語」など江戸を見てきたように描き、その土地の地霊に深く共振し、数々の忘れがたい名作を残した。
その杉浦がとりわけ傾倒した浮世絵師が、明治初期に活躍した井上安治であった。安治は25年という短い生涯の間に、百数十枚の江戸名所絵を残した。〈浅草橋夕景〉〈蛎殻町川岸の図〉・・・・・・隅田川沿いの暮れゆく町のゆったりしたたたずまい、静まりかえったたそがれが小さな画面の中に奇跡のように描かれている。
1988年に出版された漫画「YASUJI 東京」で、杉浦は切々と安治への思いを語り、安治の版画絵を透かしてその向こう側に明治の東京を、さらにそのずっと昔の武蔵野の原野を幻視した。杉浦は思う「東京はいつでも原野に戻る用意があるように思われる」 江戸のたび重なる大火、明治以来の近代化、大震災と東京大空襲と焼け跡からの復興。
常に死と再生、破壊と刷新を繰り返してきた東京という土地、東京という現象。
杉浦日向子が想いをはせた東京のはるかな夢の記憶、そして私たちも「東京という夢」を生きているのかも知れない。
この番組を見たあなたは、どんな夢を見ますか?


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