2012年3月18日(日) 夜10時

生き残った日本人へ
-髙村薫 復興を問う-

 

震災から1か月、日本中が混乱に陥るさなか大阪に作家の髙村薫を訪ねた。被災地への取材同行を依頼するためだった。地震、津波、そして放射能が蹂躙(じゅうりん)した東北に、どのような復興の道があるのか。20年前から原発に警鐘を鳴らし、阪神・淡路大震災を体験していた髙村にその答えを期待した。

 

しかし、髙村は、被災地に入ることを断った。
「ひたすら重い気分で、どう考えても逃げ道が見つからない」
そこから、1年にわたる髙村の思索を追った。

 

髙村は、日本人全員、日本という国が被災した感覚があると言った。今、この時代は、どういう時代か。被災地から離れた大阪で髙村は問い続けた。赤字国債、地方の産業の疲弊、少子化…ありとあらゆる問題を抱えている日本。東北の復興は日本の運命を左右する鍵になる。髙村がこだわったのは『理性』という言葉だった。

 

髙村へのインタビューと並行して、私たちはがれきの中から生活を再建しようとしている東北の人々に話を聞いた。高齢者が残された放射能汚染地帯。明治や昭和にも甚大な被害を受けた“津波常来地”。20年後、30年後、これらの集落の姿はどうなっているか。失われたものを元に戻す、その意味を考え始めた人たちの生の声にも耳を傾けた。

 

今、本当に必要な復興とは、何なのか。
番組は、被災地から離れた髙村の1年間の思索を、真摯に前を向く被災地の人々の姿と重ねながらたどる。さらに、東日本大震災復興構想会議・委員だった赤坂憲雄(福島県立博物館館長)と髙村薫の対談など、生き残った日本人に向けた覚悟を伴う言葉を伝える。

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