2011年7月24日(日) 夜10時

鯨の町に生きる

400年以上、鯨を糧に生きてきた和歌山県太地町。田畑に恵まれないこの町の人々は、古くから捕った鯨をみんなで分け合い、皮や臓物、骨や歯までも余すことなく活用してきた。鯨への感謝の念は、今なお人々の心に深く息づいている。

しかし、一昨年公開された映画「ザ・コーヴ」をきっかけに太地の暮らしは一変した。海外の反捕鯨団体が町に常駐し、激しい抗議活動を展開。「知能の高い鯨を殺すのは犯罪」と訴える反捕鯨団体は、漁師たちが鯨の命を奪う瞬間をインターネットで世界発信し、告発する。常に畏敬の念をもって、鯨の命をいただいてきた漁師たちにとっては、思いも寄らぬ仕打ちだった。

生活そのものを問われた漁師たちは思い悩み、鯨漁の存続を争うまでになった。やがて漁師たちの葛藤は、町全体を巻き込み、大きく揺れ動く。これまで当たり前だと信じてきた太地の暮らし。突如、それを否定された漁師とその家族は、異なる価値観とどう向き合うのか、他の命を奪わなければ生きていけない人間の業をどう受けとめるのか、重い問いかけに、それぞれが自分の答えを探し始める。

鯨漁師を父に持つ、14歳の少女の目を通して、揺れる「鯨の町」の半年間を見つめた。

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