2016年 319日(土)よる11時放送
再放送326日 午前0時放送(金曜深夜)

名前を失くした父
~人間爆弾“桜花”発案者の素顔~

その男は生きていた。人間爆弾と呼ばれた特攻兵器"桜花"を発案した元海軍中尉の大田正一。終戦直後、ひとり零戦に乗って海に飛び込み、自殺を遂げたはずだった。

"桜花"は太平洋戦争中、海軍が零戦の特攻に先駆けて開発を進めた特攻専用の有人飛行爆弾で、人間が操縦したままロケットを噴射し敵艦に体当たりする。この非情な兵器を考え出し、海軍上層部に提案したのが大田正一だった。しかし現実の桜花は、母機が敵艦に近づく前にアメリカの戦闘機に撃ち落とされ、ほとんど戦果を挙げられなかった。発案者の大田正一は終戦の3日後、零戦に乗って海に飛び込み、自殺を遂げたとされていた。しかし、その大田正一は生きていた。偽名を使い大阪で新しい家庭を作っていた。

息子の大屋隆司さん(63)が父の本当の名前を知ったのは中学生の時だった。子煩悩でやさしかった父と、非情な兵器を考え出した父とが結びつかず、それ以上詳しい話を聞くことはできなかった。父は本当はどんな人間だったのか。父が背負い続けたものはいったい何だったのか。戦後70年の節目を迎え、隆司さんは戦争中の父を知る元桜花搭乗員を訪ね、その人生の痕跡を探り始めた。知らなかった父の過去と向き合おうとする息子の姿を通して、今なお残る戦争の傷跡を探る。

語り:三浦貴大
(内容59分)

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人間爆弾と呼ばれた特攻兵器“桜花”。
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“桜花”を発案した大田正一。横山道雄と名前を変えて戦後を生きた。
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大田正一の息子・隆司さん。
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元“桜花”搭乗員の植木忠治さん(91)に会う。