ドラマ
甲子園とオバーと爆弾なべ
戦後の沖縄が一つになって夢を見た一日がある。1990年夏の甲子園決勝、「沖縄水産」vs「天理」の試合。当時まだ春夏通じて、優勝経験のなかった沖縄勢が栽監督のもと、初めて決勝戦に進出したとあって、沖縄中が一つになって、テレビの中継にかじりついた。道路から車が消え、お店は開店休業。試合は1対0で、惜しくも沖縄水産は涙をのんだ。この時のテレビのアナウンサーの「沖縄は今日1日だけ、夢を見ました!」という実況は今も、語り草になっている。
このドラマでは、沖縄出身のアーティストBEGINが作詞作曲した「オジー自慢のオリオンビール」「オバー自慢の爆弾鍋」に着想を得て、県勢初の優勝に向けて、勝ち上がっていく沖縄水産高校の活躍を戦中・戦後を必死に生き抜いてきた自らの人生と重ね合わせて応援するオジーとオバーを中心に描く。
那覇の市場を舞台に、人情味あふれる人々の物語が展開され、ドラマの脚本と演出を担当するのは、映画「ナビィの恋」「盆唄」等で知られる、沖縄在住の中江裕司。
【あらすじ】
1990年夏。末吉(平良進)とウサ(吉田妙子)の夫婦は那覇の市場で食堂を営んでいる。といっても、末吉は酒を飲んでばかりで昼間から働かない。毎日海へ行き、変わった漂着物を拾ってくる。ウサは不発弾の破片を再利用した鍋で食堂の料理を作る。この爆弾鍋で生計を立て、子どもを大学まで行かせたのが自慢だ。夏の甲子園が開幕してほどなく、孫娘のゆかり(蔵下穂波)が本土から帰ってくる。理由は語らないが東京でなにかあったようだ。沖縄水産が勝ち進むにつれて、盛り上がっていく市場。食堂には沖縄の戦後を支えた愛すべき人たちが通ってくる。しかしオジーは高校野球が終わると、食堂の手伝いもせず、海へ行ってしまう。そして、拾ってきた漂着物を食堂に飾る。オバーはそんなオジーを黙って見守っている。そんな中、ゆかりはオジーの秘密を知る。海に行っていたのは子どものとき、家族を疎開船・対馬丸の沈没で失ったからだと。甲子園はついに決勝へ。みなが食い入るようにテレビにかじりつく中、ウサオバーがいない。オバーは沖縄戦で亡くなった妹の遺骨をいまも探している。ゆかりはオバーが爆弾鍋で料理を作るのは、死んだ妹への供養と生きていることへの感謝だと知る。オジーがオバーを連れて市場に戻ると決勝戦は大詰めを迎えていた。沖水が負けてしまうが、市場中から拍手が起きる。みなが「オジー自慢のオリオンビール」を歌い出す。
ドラマ『甲子園とオバーと爆弾なべ』
【放送予定】
BSプレミアム 2019年8月7日(水)よる9時から9時59分
BS4K 2019年8月10日(土)よる7時から8時14分
【出演】
蔵下穂波 平良進 吉田妙子 満島ひかり ほか
【演出・脚本】
中江裕司
【制作統括】
茂木明彦(コンテンツ開発センター)
三浦尚(NHKエデュケーショナル)
中村芙美子(東京ビデオセンター)