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土曜ドラマ「破裂」 椎名桔平・滝藤賢一・仲代達矢インタビュー

土曜ドラマ「破裂」
椎名桔平・滝藤賢一・仲代達矢インタビュー

骨太で濃厚、そして男たちの野望がみなぎる医療ドラマ「破裂」。
冷徹な心臓外科医・香村を演じる椎名桔平さん、稀代の策士・佐久間を演じる滝藤賢一さん、心不全で引退状態にあった国民的名優・倉木を演じる仲代達矢さんに、収録中盤のタイミングで、番組のみどころや役作りについて伺いました。

 


【香村鷹一郎役・椎名桔平さんに聞く】

●香村という男について

編集部:
香村という役を演じていて、いかがですか?
椎名桔平さん:
香村というのは非常に多面的な人物で、色々な面が強調されるシーンがあるので、どこを中心に作っていくかなっていうのが難しかったです。大きな要素としては、まず父親との関係性。そして、対立する佐久間との対峙の仕方。更に、研究者として医療に真摯に向かっていく姿。これらをどうミックスして、一つにつなげていくか。
下手をすると役が空中分解するリスクもあるのでデリケートに、それでも思い切ってそれぞれの面を強く出していかなければならない物語になってるんですよね。

編集部:
香村は冷徹な性格で、愛を知らずに育ち、憎しみだけを持ってここまで来たという印象があるのですが...?
椎名桔平さん:
そうですね。そういう回想も十分に入ってきますし、母と自分を捨てた父親に対する憎しみが、医療という現場で再会することによってどう変化していくか、というのがこのドラマの非常に大きな肝になっています。それとは別に、そういう過去を経て、今なぜ人を救おうとしているのか、なぜ医者になったのか、なぜ「夢の治療法」を開発したのか、なぜ教授選に勝ちたいのか。そのへんのところも、どこに重きを置いて演じればいいんだろうっていう葛藤が全7話のうちにたくさんありまして、そこを一つ一つ乗り越えていくことが香村という人物像に繋がっていくんだろうなと思ってやっています。

編集部:
椎名さんの中では、香村はヒーローですか?悪役ですか?
椎名桔平さん:
それ、本当に難しいんですよね。役者というのは虚構と現実の狭間をゆらゆらと生きていくものだとよく言われますが、香村もやっぱり善と悪の狭間をゆらゆらと生きていってるような感じがしますよね。そこがまた役としては非常に魅力的ですし。こいつは何をするんだろうっていうワクワク感に繋がっていけば、見ている方には面白いんじゃないかな、と思いますね。

●佐久間との対決

編集部:
物語の中心軸である佐久間との対決、滝藤さんと演じてみていかがでしたか?
椎名桔平さん:
滝藤君は初めてご一緒するんですが、民放のドラマとかで拝見していたそれまでの印象とはまた全然違う役を作ってきてましてね。非常に長い台詞なんかもあるんですが、それを見事に演じていらっしゃるなと。ですからお芝居で対峙していて、ついこう見入っちゃうといいますかね、非常に面白い、ユニークな芝居も持ってきますし、 本当に素晴らしい俳優さんだなあと思いますね。

編集部:
二人の対決はなかなか決着がつかないまま続きますが、視聴者としてはどういうところを楽しみにして観ればいいと思いますか?
椎名桔平さん:
1話1話、香村と佐久間の対決が、こっちが勝ったり、あっちが勝ったり、どっちに転ぶのかなっていうね。知恵を使ってめまぐるしく変わっていきますから、そのシーソーゲームみたいなダイナミズムを楽しんで頂きたいですね。

●父と子の葛藤

編集部:
仲代さんとの、父と息子の葛藤というものはどうでしたか?
椎名桔平さん:
それはもう、仲代達矢さんという大先輩とご一緒するということで、存在自体が大きいわけです。その大きな存在が目の前にいらっしゃいますんで、圧倒されていることをどれだけ自分の中で抑えて役に入って行けるか、というのが最初の勝負でしたね。
仲代さんはとてもご自分の役に没頭してお芝居される方で、現場でもその役としていらっしゃったので、僕も香村として入っていけましたね。僕の役は最初から父親を恨んでますから、とにかくその憎しみと怒りをぶちまけるっていうところから入ったんですが、仲代さんの胸に飛び込んで思いっきりやらせていただきました。仲代さんはもう全てのシーンを終えられたんですが、その複雑な親子関係から、自分が開発した療法で父を救うという中で、雪解けとまでは行きませんが、少しずつ変化していったということが実感としてありますので、そこの線は、やるだけやったという感じですね。

編集部:
香村にとっては、自分の父親との関係が、息子との関係にも変化を与えますね。
椎名桔平さん:
そうなんですよね。この香村という男は所帯を持ってて、一人息子がいるんですが、まあ家庭はちょっと冷めてましてね。息子に対する言動も最初、非常に冷たく感じたんですね。どうしてこんなに冷たいのかな、何か家族愛というものが喪失しているのかな、と思いましてね。父親から愛情をもらっていなかったので、普通であれば反面教師にして自分の息子には愛情を持って接していくんじゃないのかなっていう疑問もあったんですが、多分自分がもらっていない愛情に対しては、経験値としてわからないっていう不器用さがあって、息子に対して踏み込めないところがあるんでしょうね。だからそこは非常にやるせない思いで演じていました。まあこれもそこから段々変化してくるというか、仲代さん演じる父親を通じて、自分も息子との距離を縮めるという、とても見応えのあるドラマになっていると思います。

●本気で作って、本気で演じて

編集部:
仲代達矢さんが「問題作」だとおっしゃっていましたが、このドラマは老人問題とか若返りの治療とか、近未来にありうるような、タブーにも踏み込んでいますね。
椎名桔平さん:
そこはもう非常に辛口な、ある意味、世に問うような、本当に稀有なドラマだと思いますし、こういう企画を実際にドラマ化するというのはハードルが高いと思うんですけど、そこを実現させようっていう気概を感じるんですよね。自分もそういう作品の仕事を受けて、高いハードルに向かって乗り越えていかなきゃいけないっていうことを常に感じますし、ごまかしが効かない、誠心誠意やっていくしかないと。1シーン1シーン本当に気が抜けない中、この高いハードルを越えていくっていう、3ヶ月近くの長丁場ですが、そういう気持ちで臨んでいます。

編集部:
最後に、視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします。
椎名桔平さん:
今、ドラマ自体が、民放さんも含めて、お客さんが離れていきつつあるという状態が続いていると思うんですが、僕ら俳優側も、どうすれば皆さんにドラマを楽しんでいただけるのか考えるわけです。それはもうやっぱり、シンプルだけど、いいドラマを作るしかない。こういうものを世に問うんだとか、こういった作品をやりたいんだと、本気で作って、本気で演じて、それだけのエネルギーを使って、さあ、どうだと。そういったものを自信を持ってお届けできるのかと、そういうことを考えるんですね。で、正にこの「破裂」というドラマは、全スタッフ、全キャストが、これでもかっていうぐらいのエネルギーを使って、お互いに刺激を受けて、ハードな撮影だけどきっちりやってみようっていう、そういう相互関係が生まれているんですよね。そういうドラマはもう、間違いなく良いドラマだと思います。そして脚本がまた、言いたくない台詞とか、ここまで説明しなければいけないのかなって考えてしまうような台詞が無くて、感情で表現していける。それを積み重ねていけるという強さがありますよね。これは絶対観る人の感情に届くと思いますしね。この「破裂」という作品の中にいろんな感情が複雑に混ざり合っている、その集大成を、是非観てもらいたいと思います。



【佐久間和尚役・滝藤賢一さんに聞く】

●佐久間という人物

編集部:
佐久間という役をどういう人物と捉えていますか?
滝藤賢一さん:
目的が正しいという信念を持っていれば、手段は常に正当化されるという偏った考えを持つ脅威的な人物。その反面、愛嬌・ユーモアがいっぱいの、かわいらしい人物でもある。

編集部:
一方では、人々を救済しようとしているし、一方では大量殺人のような真似をするという、すごく複雑で不思議な魅力のある人物だと思うのですが......?
滝藤賢一さん:
佐久間という人物の役作りを進めれば進めるほど深みにはまっていきますね。正直、こんがらがってとっちらかってます。

編集部:
具体的にご自身が演じられる上で工夫した点は?
滝藤賢一さん:
工夫しかしてないですよ!(笑)
普通だとつまらないし、やりすぎると佐久間が本来目的としている"超高齢化社会を解決して国家財政を立て直す"という信念からずれていく気がします。周りの人たちを説き伏せていく人間力も必要でしょうし。
エンターテインメントとしては、ゲームを楽しむように演じたい。しかし、人の命を操作することは、ゲームであってはならない。ゲームとしてやった時点で、佐久間の説得力は無くなってしまう気がするので、ギリギリのラインを模索し続けています。
ただ、そのバランスは桔平さんや仲代さんと芝居する時に解消されています。お二人と向き合うと自分がイメージしてきたことが、いかに浅はかで滑稽なことかを思い知らされますから。

編集部:
他の役者さんとのやり取りの中で、自分がやりすぎてるなと調整したり、見えない駆け引きがあるという事ですか?
滝藤賢一さん:
それは、必ずあります。目の前の役者さんと芝居を作っていく訳ですから。「破裂」はお互いに刺激を与えられた、とても希有で幸せな現場だと思います。 ...と思っているのは、私だけかしら(笑)

編集部:
役作りは万端ですか?
滝藤賢一さん:
やってもやっても万端になることはないでしょうね。他人の人生を生きるって難しいことですよ...。ただ今回は、「何となくこんな感じかな」というのを一切排除しました。必ず、どのシーンも明確な目的を持って、その目的を達成するためには、どういう話し方、居方、行動を取ればベストかということを監督と本番直前までとことん話し合っています。

編集部:
テレビドラマでそこまで深く試行錯誤してやるのは、珍しいのでは?
滝藤賢一さん:
僕は以前からやっていますよ(笑)

●桔平さん、仲代さんとの対決

編集部:
佐久間の役だからこそ、しなきゃいけないことは?
滝藤賢一さん:
固定観念、一般常識を捨てました。常人ではないですから。ただ今回は、佐久間の前に僕が乗り越えないといけない壁がありましたね。それは、気持ちを強く持つこと。なぜなら、桔平さんと仲代さんに立ち向かっていく訳ですから。ましてや、仲代さんは師匠ですからね。恐ろしかったですよ。

編集部:
どういう点が恐ろしかったんですか?
滝藤賢一さん:
いやもう存在自体がね。他の役者さんが仲代さんと相対するのと、僕が仲代さんとお芝居をさせていただくっていうのは、もうまるで意味が違うと思っています。顔に指差すだけでも、かなり勇気が要りましたもの。がっつり対峙するのは1シーンだけなんですけど、1シーンでよかったなと思います。何シーンも仲代さんとやっていたら、僕はもう廃人のようになっているでしょうね、きっと(笑)

編集部:
桔平さんとのバトルはどうでしたか。役としてのバトルでも、俳優としてのバトルでもいいです。
滝藤賢一さん:
ほとんど僕がしゃべって、桔平さんは受ける芝居が多いですからね。桔平さん扮する香村がムキになればなる程、楽しくてしょうがなかった。台本上、反撃できない桔平さんのストレスは相当あるみたいですよ。それでも、生み出してくる桔平さんの大胆で意表をつく芝居には感服しています。まともに喰らいながらも同時に惚れ惚れしています。

編集部:
段取りというか、予定調和無しに、もう...?
滝藤賢一さん:
勿論、段取りはあります。突然、何かをやるというよりは、しっかり組み立てていらっしゃると感じます。発想力が素晴らしいですよね。普段、どういうことを考えて生きていらっしゃるんですかね。元々、憧れの俳優さんでしたが、ご一緒させていただいて、より一層、尊敬するようになりました。

編集部:
桔平さん演じる香村という人物に対してどう思われますか?
滝藤賢一さん:
二人で手を組んで、日本を変えようと思ったのか、ただ利用しようと思っただけなのか......。

編集部:
視聴者のみなさんに見て欲しいところ、楽しんで欲しいところは?
滝藤賢一さん:
それぞれのキャラクターが葛藤を抱え、野望を持ち、激しくぶつかり合います。社会問題も鋭く切り裂いていますし。大変な問題作であるからこそ、勇気を持って放送していただきたいですね(笑)見ごたえあります。是非、観ていただきたいです。



【倉木蓮太郎役・仲代達矢さんに聞く】

●初めての「俳優役」

編集部:
撮影はいかがですか?
仲代達矢さん:
私は、自慢していいかどうか分かりませんけれど、六十数年間役者をやっておりまして、まあ、大体いろんな役やってきたし、いろんな状況の中の芝居、映画、テレビ、何百本もやってきましたけども、この「破裂」という台本を頂いた時に、あ、これは初めての事が随分多いな、と。
役者って変なもんで、あーこれ今までにやった役だなって思うと、なんとなく興味が薄れるんですね。でも、あ、これは初めてだ、という役と遭遇するとね、興味持ちますね。
かつて山崎豊子さんが「白い巨塔」っていう小説をお書きになって映画にもなりましたが、テーマは全然違うんですけれども、医学の話だし状況は同じだな、と思ったんですが、今回の私の役は、仲代達矢という俳優が、倉木蓮太郎という俳優の役を演じる。俳優の役を演じるのは初めてなんです。
だから見てくださる方に、俳優ってどういうものかなと、俳優の裏側みたいなものを分かっていただくと、とても面白いだろう、と。本当はいけないんでしょうけど、私ももう82歳ですから、俳優ってこんなもんなんだよという裏側を、多少見ていただいてもいいかな、と思って毎日やっております。
この倉木には、ある面、派手で華やかで......という裏に抱えている孤独とかね、そういうものも含まれているんで、とても面白いです。
それから親子の葛藤――親子といっても、道ならぬ親子と言いますか――これも描かれる。

●「命」を見つめる問題作

編集部:
倉木と同じ立場だったとして、自分の病気を治せるかもしれない因子が見つかったらそれにすがりたくなりますか?
仲代達矢さん:
私はもう80過ぎましたから、そろそろだと思っています。人間の命というものには限界がありますから。個人的には、いろんな人にお世話をかけるんじゃなくて、お節介はやめてくれと、俺は俺なりに生きて死んで行くんだ、という様に思いますけれども。
しかし、人の命ってのは、やっぱり重い物ですし、尊い物ですから、社会問題にしても政治的な問題にしても、この(高齢化の)状況をどう見つめていくかっていうのを今度みたいにドラマとして見せてしまうところは、面白いですね。
このドラマの一番大きなテーマは、人間の命というものですね。やっぱり人間は生まれて、生きて、死んでいくわけですから。最近は平均年齢が随分とあがって、80過ぎ、90過ぎまで生きている人がどんどん増えてきて、この老人たちをどうしたらいいか、政治の問題にまでなってますよね。
昔、「楢山節考」という小説がありました。ある年齢に達したら老人は先に死んでいく、それが社会的風習になっていた。そういう問題もかつてはありました。今そんなこと言ったら大変でしょうけど、でもこのテレビドラマの中に、そういう老人の問題、人間の生き死にっていう問題が含まれています。それは非常にドラマチックですよね。面白いといってはいけないんだろうけど、生きるっていう問題にね、凄く直接ぶつかっている。
そこに政治の問題も入ってくる。そして色んな人物が出てきて、その虚飾と裏側が描かれる。人間同士の憎しみもあり、愛情もありですね、いろんな物を含んでいて、やってて、とても面白いなあ、と。
色んな意味で、非常に重厚なテレビドラマになるんじゃないかと思ってやっております。

編集部:
父と子の葛藤についてはどうですか?
仲代達矢さん:
実は私、子供がいないんですよ。父親と母親はいますが、父親が3人もいたという複雑な家庭で育ちましてね。ノーマルな家庭の親子はスムーズに行くけれども、複雑さを持っている親子は、いろんな意味で葛藤があるでしょうね。それをまたこのドラマはあからさまに出しています。
そういう意味では、皆さんに「楽しんで見てください」と言うよりは、もう少しスケール大きい話かなと思うんですけれどね。

編集部:
このドラマの見どころ、楽しみにしてほしいところは?
仲代達矢さん:
最近80を過ぎて、60数年間も俳優生活をやっていますが、一番気になるのはお客さんですよ。だからお客さんがどう思ってくれるかっていうのが一番興味があります。 今度の「破裂」はですね、私達はこう作ったんだと、お客さん、これをどう思いますか、という風に提供していく。お客さん、どういうものを見たいですか、というのもいいけれども、今回のように、私達作り手はこれを作りましたと、それをお客さんどう思いますかと。それを楽しみにして下さい、と、私個人としては、そう思いますね。

編集部:
議論を呼ぶかも知れないけれど、反応が楽しみ?
仲代達矢さん:
そうですね。昔からよく映画でも、テレビでも、問題作っていう言葉がありますけれども、そういう意味では問題作でしょうね。おいおい人間の命っていう物をどう考えてるんだっていう疑問が湧くお客さんが居てもいいと思うし。 私は基本的に人間関係って言うのは愛と結びついていて、なおかつお互いのニヒリズムという物も持っているもんだと、人間とはこういうもんだと、あるひとつの生き方の哲学は持っておりますけれども――やっぱり人間対人間の愛と憎しみみたいなもので人間関係っていうのは存在するんじゃないか、と。それが、こういうドラマになって、どうみなさんに見ていただけるか。「すごい楽しいからご覧ください」というようなものじゃないような気がするんですけどね。 「破裂」はそのへんの甘っちょろいドラマと違う、非常に辛口なドラマだと思っています。



土曜ドラマ「破裂」
総合 毎週土曜 よる10時から

原作:久坂部羊 脚本:浜田秀哉 音楽:蓜島邦明
出演:椎名桔平、滝藤賢一、坂井真紀、甲本雅裕、嶋田久作、モロ師岡、佐戸井けん
太/佐野史郎、キムラ緑子、仲代達矢 ほか


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