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ドラマ10「デザイナーベイビー」 原作者は産婦人科医! 岡井崇先生インタビュー

ドラマ10「デザイナーベイビー」
原作者は産婦人科医!
岡井崇先生インタビュー

火曜よる10時から大好評放送中の「デザイナーベイビー」。
大病院を舞台に、生殖医療のタブーに切り込む骨太のミステリーですが、原作の岡井崇先生は、なんと現役の産婦人科医さんなのです。
執筆のスタイルから本作にかけた思い、産婦人科医と生殖医療を取り巻くリアルな現実まで、ご本人にあれこれ質問してきました!

 


Q:小説家と産婦人科医との両立は大変ではありませんか?
岡井崇先生(以下、岡井先生):
私には、作家をやっている、という意識はあまりないんですよ。小説を書き始めたのも、物語を通じて、産婦人科医療の危機を訴えたかったからなのです。

Q:産婦人科医療の危機を訴えたかった?
岡井先生:
少し前の話ですが、産婦人科への医療訴訟が多くなって、若手の医師が入ってこないという時期がありました。このままでは、日本は大変なことになる。悔しくて、悲しくて、学生の前で号泣しちゃったこともあります。
現代では、出産というのは安全で、無事に赤ちゃんが生まれて、お母さんも無事なのが当たり前だと思われています。ですがお産というのは大変なことで、どれだけ医療技術が進歩しても、不幸が起こることがあります。
どうして医療事故は起こるのか、どうやって裁判になるのか。患者さんには勿論、医療者にもどんなダメージがあるのかということを訴えたくて、それで小説を書き始めたのです。

Q:それが第1作の『ノーフォールト』のテーマなのですね。これは、ミステリーではない作品でした。
岡井先生:
そうです。第2作の『デザイナーベイビー』は、自分の好きなミステリーでやりたいと考えました。学生の頃、私は推理小説しか読まなかったんですよ。アガサ・クリスティーとか、イアン・フレミングとか、レイモンド・チャンドラーといった、海外のミステリー作家が中心でした。なので、小説といったらミステリーというイメージがあって(笑)。
娘はミステリー好きなのですが、ありがたいことに「面白いよ」と評価してくれました。今回はNHKでドラマ化されることになって、書いてよかったと思っています。

Q:執筆のスタイルについて教えてください。
岡井先生:
レポート用紙にシャープペンシルで書いています。あまり他にはいないかもしれませんね。
医師の仕事に影響してはいけませんから、書くのは休みの日の午前中です。朝5時か6時に起きて、眠くなるので朝食はとらずに、コーヒーを飲んで5~6時間、休みなしで書きます。明日は書こう、さぁ書くぞと思うと、朝早くに目が覚めるんですよ。
必死で書くと、隣りに人が立っていることにも気付かないくらい集中します。疲れたなぁ~という頃合いにお昼ご飯を食べて、テレビ見ながら昼寝して...執筆する日はそんな1日ですね。
これを月に3~4回やっています。休日までの1週間は、通勤の時間を利用して構想を練っていますよ。

Q:『デザイナーベイビー』の着想は、どんなふうにして生まれたのですか。
岡井先生:
遺伝子操作に関して、人類はそろそろ考えなきゃいけない段階に来ているぞ、と思っていたのです。そして、医療側からちゃんと情報発信しなければいけないと。
医師は学会などで色々と議論していますが、一般の人はどうでしょう。実際にどんな技術があって、どれだけのことが出来て、何が行われているのか、あまり知らされていないでしょう?
生殖医療には倫理的な問題が必ずついて回ります。卵子や精子を他人からもらったり、細胞に細工をしたりが、技術的に可能なのです。そして自然な妊娠と違って、医師の目の前には精子や卵子があって、手を加えようと思えば出来ます。
現状はそこまで進んでいるのです。だから、何をどこまで許容するのか、みんなで立ち止まって考えなければいけません。
大豆やトウモロコシでは、水をあげなくても育つとか、大量に収穫できるとか、そういったことが遺伝子操作によって可能になってきました。地球から飢餓をなくすために、必要なこととして研究されてきたのですね。
それが今、動物でも同じことができるようになったのです。美味しい牛肉をたくさん取れるように、食べられるようにする技術が、海外では実用化されています。ニュースでよく聞くクローンも、いまでは既に確立された技術です。
そして、今度は自分たち人間の番になった。さて、どうするのか。
能力の優れた人間を作り出してもいいのか。そういう話になってきますよね。
ご両親が「もっと知能指数の高い子にしてくれ」とか「もっと運動能力のある子にしたい」とか、医師にリクエストする。医師の側は「じゃあ、いくらくらいでやりますよ」と答える...。
そんな時代をあなたは望みますか。そして今、そういう時代が来たのですよということを、この『デザイナーベイビー』では訴えたかったのです。

Q:産婦人科の医師は、生殖医療も出産も、どちらも手がけるのでしょうか?
岡井先生:
私たちが医師になった頃は、ガンの手術もしなければいけないし、お産もあるし、胎児の病気の勉強もしなければならないし、それに不妊の治療もしなければならない。一通り、何でもできなければいけませんでした。
今は専門領域で分かれてきて、それぞれが深いことをやるようになってきました。産婦人科ではそれでも出産の占める割合が多いですが、婦人科だけを診る、不妊治療を専門にやる、という医師もいます。
子供を妊娠させるまではやりますが、妊娠できたら別の先生の仕事なのでもう診ませんよ、というように、分業というか、だんだん専門的になってきているのが現状ですね。
内科は消化器内科や腎臓内科、循環器内科、呼吸器内科と、それぞれ分かれているでしょう。外科も肝臓や心臓、脳だけを専門にやる医師がいますから、産婦人科でも専門領域に分かれているのは、不自然なことではないのですよ。

Q:岡井先生はどうして産婦人科医になろうと思ったのですか。
岡井先生:
医学生時代は外科を希望していたんです。でも、大学6年生の時に子供が生まれましてね。ちょっと難産で、妻が死んじゃうんじゃないかってすごく心配して。吸引分娩で取り上げてもらったのですが、その産婦人科の先生にすごく感謝しました。そのときに「ああ、いいなあ、産婦人科医になりたい」 と思ったのです。だから私は、どちらかと言えば、出産に携わるのほうの医師ですね!

Q:須佐見医師のキャラクターは個性的ですね。
岡井先生:
須佐見教授は、私の中では理想の医師なんですよ。思ったことをズバズバ言って、行動力があって。
私も好き勝手やっているように見えるでしょうが、これでも周りに気を使って、言いたいことも言わないで我慢しています(笑)。
踏み込んでいきたくても踏み込んでいけない、そんなジレンマを抱えているわけです。須佐見はそれがないから、私は好きなんですよ。

Q:次の作品の着想はもうありますか?
岡井先生:
あります。が、もう1~2年考えたいですね。そして、再来年あたりに書きたいなと思っています。健康でいられればですが...(笑)。

Q:最後に、視聴者の皆様にメッセージをお願いします。
岡井先生:
脚本家さんがうまいですね。私の原作よりも、ドラマの方が物語として面白いですよ(笑)。ミステリー小説が好きな人なら、ハマるんじゃないかな。
とはいえ、ミステリー好き以外の方にも見ていただきたいですね。何しろ、想像もつかない展開になりますから。ぜひ、楽しんでください。



ドラマ10「デザイナーベイビー」ホームページ公開中!

【出演】
黒木メイサ 渡部篤郎
安達祐実 臼田あさ美 渡辺大知 細田善彦 柿澤勇人 淵上泰史 安藤玉恵
山崎樹範 手塚とおる 神保悟志 ・柴俊夫・ 渡辺いっけい 松下由樹 斉藤由貴 ほか

【原作】
岡井崇「デザイナーベイビー」

【脚本】
早船歌江子

【音楽】
池頼広

【演出】
岩本仁志 代表作「救命病棟24時」「ナースのお仕事」(CX)、「ギネ」(NTV)
※NHK初演出

【制作統括】
磯智明チーフプロデューサー(NHK) 長沼誠プロデューサー(アックスオン)


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