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時代劇職人列伝【四】床山・野崎徹の場合

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時代劇職人列伝【四】
床山・野崎徹の場合


時代劇作りを裏側で支える、テレビ職人たちの奮闘を描く『時代劇職人列伝』。
第4回は「軍師官兵衛」でかつらを担当する、野崎徹さんにご登場いただきます。
かつらといえば時代劇、時代劇といえばかつら…というくらい、かつらは時代劇にとって大事な存在なのですが、かつらがどうやって出来ているのか、床山さんの仕事現場はどうなっているのか、見たことがない人がほとんどではないでしょうか?
というわけで、未知そして禁断の(?)「かつら部屋」に潜入です!!!


時代劇といえば、マゲを結った武士、総髪の浪人、そしてツルツルの月代(さかやき。ざっくり言うと、頭を沿った部分)...そんな映像が思い浮かびますよね。
床山さんの部屋には、かつらがワッサワッサと積まれているのでは...とワクワクドキドキしつつ、「軍師官兵衛」のかつら部屋へとお邪魔します。

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ファッッッッッッッ????
なんですかこれは????

...と、見たことのない風景にビックリしていたら、笑顔の素敵なお兄さんが現れました。

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...ということで、本日の職人!!!!
床山・野崎徹さんの登場です。
野崎さんは、メイクやかつらを担当する会社のスタッフさん。
まずはいつも通り、ざっくりと「床山の仕事の何たるか」を伺ってみました。

編集部「まずは、かつらさんの仕事について簡単に教えてください。さすがに出来合いのかつらをポンと乗っけるだけ、と思っている人はいないと思うのですが...」
野崎「そんなわけではないですね(笑)。かつらって、実はその都度その都度、結っているんですよ」
編集部「結っている???」
野崎「さっきビックリされていたコレ、ありますよね。これを土台にして、僕たちが一つずつ、役柄に合わせて髪の毛を結っていくんですよ」

03_jidaigeki_141114.jpgコレ。羽二重(はぶたえ)と呼ぶそうです。

編集部「おおお、なるほど。『カポッとはめればOKかんたん武士のかつらセット』みたいなのが初めからあるわけではないのですね」
野崎「ないです(笑)。ベースになる、長髪のかつら自体を作る職人さんが別にいて、僕たちはそれを役柄に合わせて、結っていく仕事なんですね。きれいな武士から浪人、町人、お百姓さんまで、キャラに合わせて整えたり、ぼさぼさにしたり、工夫しながら仕事をしています」
編集部「女性キャラはチョンマゲがなかったり、男性キャラと仕事がかなり違うと思うのですが、床山さんも男性担当・女性担当で分かれていたりしますか?」
野崎「軍師官兵衛では、誰それが誰の担当、みたいな感じで役割分担されていますが、基本的には男性の髪の毛でも、女性も髪の毛でも結えますよ」

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編集部「時代劇自体が日本の伝統文化の積み重ねだと思うんですが、かつらさんの仕事も相当な昔からあるものですよね。やはり技術の積み重ねとか、革新があったりするのですか?」
野崎「そうですね。さすがに独学で出来るものではなくて、先輩からの指導を受けて、日々学んでいます。あとは、先輩の仕事をしっかり見て、技を盗む。こういう積み重ねが昔から続いているのだと思います」
編集部「野崎さんは、どうしてこの世界に入ろうと思われたのですか?」
野崎「実はもともと、メイクの専門学校に通っていたんです。そこでひょんなことから、時代劇というか、かつらの世界があるんだっていうのを知って、やってみようって思って。そこから勉強をはじめて、現場に入れるようになってから、暫くは先輩のカバン持ちをしていましたね」
編集部「もう何年くらいのキャリアなのですか?」
野崎「20年くらいかな...でも、もっとキャリアの長い、大ベテランの先輩方がいらっしゃいますからね。まだまだです」
編集部「20年といえば凄く長い時間だと思うのですが、そろそろ一人前だなって、先輩から言われたりはしますか?」
野崎「言われたことがないですね(笑)。というより、どの先輩も、自分自身を一人前だとは思ってはいないんじゃないかな。職人の世界ですから、永遠に終わりがないものだと、みんな思っているのではないでしょうか」
編集部「持ち道具さんや小道具さんにも、同じようなことを言われました。ゴールのない努力が何十年も積み重なって、面白い時代劇になっているんだと思うと、テレビを見るのが楽しみになりますね」

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編集部「今まで、どんな大河ドラマを担当されてきましたか?」
野崎「一番はじめに入ったのが、『秀吉』(1996)ですね」
編集部「おおお、今回は竹中直人さんの太閤殿下と再会なんですね(笑)」
野崎「そして『利家とまつ』(2002)『功名が辻』(2006)、そうそう『新選組!』(2004)も思い出の作品ですね!」
編集部「素人考えですが、一番大変だったのは『新選組!』じゃないですか?」
野崎「なんといっても、人数が多いですしね(笑)。台本を読み込んで、それぞれのキャラがかぶらないように、気をつけて取り掛かりました」
編集部「当時の思い出とか、大変だったエピソードとかはありますか?」
野崎「武田観柳斎(八嶋智人さん)の髪の毛が長くて長くて、大変でした(笑)」

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編集部「今回の軍師官兵衛では、どなたのかつらを担当されたんですか?」
野崎「官兵衛、半兵衛、光秀、いろいろな人のかつらを結っています」
編集部「官兵衛は年齢が進んだり、位が上がったりして、腕の見せ所が多そうですね」
野崎「そうですね。最初は前髪をちょっと垂らして、若々しい感じで仕上げました。そこからいったん髪の毛を上げて、ちょっとぼさぼさな感じにして、時間が進むにつれて、だんだんキッチリとした形になるように作っていきました。あとは何といっても、土牢に幽閉されるところが大変でしたね」
編集部「土牢のシーンは、セット、服、髪と何から何までボロボロでしたが、普段と違う加工をしたりとか、色々と苦労があったのでは?」
野崎「そうですね。頭を本当に汚くするのが大変でした。半年間も幽閉されているわけですから、時間の流れが表現できるように、汚し方を何パターンにも分けて、少しずつ汚していったりしました。あとは、長いヒゲをつけましたね。このヒゲも時間の経過で変えているんですよ」

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編集部「えっ、ヒゲも床山さんの担当なんですね。知りませんでした」
野崎「あっ、そうなんですか(笑)。ヒゲもかつらと同じで、僕たちが形をつくっていくんですけど、『軍師官兵衛』では一本一本、手で植えているんです」
編集部「一本一本!」
野崎「官兵衛さんだと、ヒゲを植えるだけで30分くらいかかりますね。付けひげだと、土台になる網が必要なんですが、役者さんからすると、演技がしにくいんですよ。植えたヒゲだと、泣いたり叫んだりとか、激しい演技のときにも、浮いたり剥がれたりする心配がないので、心おきなく演技できるのだそうです。あとは、地毛と合わせて植えたりもできるので、表現の幅が広がりますね」
編集部「なるほど。今日はテクニカルなことばかり聞いてしまいましたが、最後に秘訣というか、リアルなかつらをつくるポイントがあれば、教えていただけますか」
野崎「毛には、流れがあるんです。皆さんもそうだと思いますが、分かれているポイントとか、つむじの位置がありますよね。きれいにやるだけじゃ自然には見えなくて、毛の向きを意識して結ったり、植えたりするのが大事なんです」
編集部「つまり、人間の観察が必要なんですね」
野崎「一部分だけピョンと別の方向に流れていたりとか、みんな何らかのクセがありますからね。もっと言ってしまえば、本人の毛の向きに合わせて結ったり植えたりするのが、いちばんリアルになるんですよ」
編集部「ありがとうございました!」


...というわけで、時代劇職人列伝。第4回は「床山」の野崎さんにお話しを伺いました。
「本人の毛の向きに合わせて結うのが、いちばんリアルなかつらになる」というのが面白いですね。人間の体そのものを作っていくお仕事ですから、やはり人間を観察することが基礎になっているのでしょう。勉強になりました。
さて、この連載も次回で最終回。ラストは「軍師官兵衛」の衣装さんが登場して、驚きのテクニックを見せてくれます。どうぞご期待ください!

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大河ドラマ「軍師官兵衛」ホームページ


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