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時代劇職人列伝【参】メイク・遠藤一明の場合

時代劇職人列伝【参】
メイク・遠藤一明の場合

時代劇作りを裏側で支える、テレビ職人たちの奮闘を描く『時代劇職人列伝』。
第3回は「軍師官兵衛」でメイクを担当する、遠藤一明さんにご登場いただきます。
テレビドラマのメイクさん…というと、華やかなイメージがあるのですが、お話を聞いてみると、なんとも奥が深い、地道な努力が生きるお仕事で、驚きの連続でした!
「そうか、これもメイクさんのお仕事なんだ…」という発見にあふれたインタビュー、お楽しみください!


『時代劇職人列伝』シリーズも、これで3回目。今回も取材班は「軍師官兵衛」のスタジオへとお邪魔してきました。
スタジオ脇の小道を抜けると、メイクさんやかつらさんが待機する、鏡張りのメイクルームがあります。そこに遠藤さんがいらっしゃいました!

…ということで、本日の職人!!!!
メイク・遠藤一明さんの登場です。

遠藤さんはメイクやカツラを担当する会社のスタッフさんで、見た感じ、30代前半といった感じでしょうか。初めは少し照れながら、じっくり熱く、ご自身のお仕事を語ってくださいました!

編集部「まずは、メイクさんのお仕事についてザッと教えてください!」
遠藤「基本的には読んで字のごとくで、メイクのお仕事です。でも、メイクするのは顔だけじゃないんですよ」
編集部「顔だけじゃない???」
遠藤「たとえば、出演者が裸で出てくるシーンがあったりすると、全身のメイクをすることになります。手足だけ出てくるという場合も、同様ですね。あと、軍師官兵衛は戦国時代が舞台なので、登場人物にキズとかアザがあります。これをつけていくのも、僕たちメイクの仕事なんです」
編集部「なるほど。そういえば土牢から出てきた官兵衛の顔に、アザができていますよね。あれも遠藤さんたちのお仕事なんですか」
遠藤「そうです。あれはメイクで作ってるんですよ。色とか、形とか、打ち合わせをいっぱい重ねて、テレビでご覧いただいている形になりました」
編集部「メイクさんの仕事って、本番前に全て終わると思っていたのですが、撮影現場でずっと待機されていますよね?」
遠藤「鏡の前で見るメイクと、照明の当たったメイクと、モニタを通して見るメイク、全部違うんですね。だから現場で見て、必ずモニタでチェックしています。あとは、メイクや髪型の崩れに気をつけています。メイクが崩れると、カットとカットがつながられなくなったりしますし、そうなると役者さんの努力が水の泡ですよね。これは役者さんに大変失礼なことだと、僕は考えているんです」

編集部「役者さんの顔にかかわるお仕事なので、やはり気を遣いますよね」
遠藤「そうですね。役者さんの意見を聞くことが、一番大事です。演じるのは役者さんですし、役者さんはメイクも演技の計算に入れていますからね。役者さん本人が変だとか、このメイクは違うと感じていたら、監督を交えてディスカッションします。それとは逆に『こういうのを作って』と振られることもあって、その時は役者さんに、こうメイクすればどう見えるというのをお伝えして、ふたりで理想の形を作り上げていきます」
編集部「なるほど。当たり前ですが、マニュアル通りにパパッとこなせるお仕事ではないのですね」
遠藤「ですね。アザやケガひとつにしても、メイクの知識と、日ごろの観察と、それなりの練習がないと作れないんです。たとえば、ケガをしているスタッフがいたら、申し訳ないのですが、ケガを見せてもらって、本物がどういう色なのか、形なのか、勉強しています。そしてメイクで再現できるか、自分で練習してみます。こうすることで、自分に何ができるかが解ってくるし、メイクもどんどん良くなっていくんです」

編集部「遠藤さんは、このお仕事を初めて何年くらいですか」
遠藤「僕は全然長くなくて、まだ8年くらいですね。」
編集部「8年で長くないっていうのも、すごい世界ですね」
遠藤「いやいや、先輩とか、30年やっている人が普通にいたりしますからね。本当にまだまだ勉強です」
編集部「8年ということは、ハイビジョン化の波も経験された世代ですか?」
遠藤「それは先輩方の世代かな。ファンデーションとか、使う道具をハイビジョン対応のものにしたり、業者さんと打ち合わせて、新しく作ってもらったりしたみたいですね。先輩方のおかげで、今はハイビジョンでも十分見られるメイクになっていますが、これからは4Kになっていきますし、それは僕たちの世代の仕事ですね(笑)」
編集部「仕事を始めたばかりの頃は、やはり緊張しましたか?」
遠藤「緊張しました。現場に入っている時点で『出来る人』だと思われているし、初仕事までに猛練習しました。仲間に練習台になってもらったりして。それでも入ってから気がつくことも山ほどあって、人の仕事を見て、自分で練習して、今に至っている感じです」
編集部「メイクさんというと華麗なイメージがありますが、やはり新人さんとかも沢山入ってくるのですか?」
遠藤「やりたいって人は、いっぱいいます。でも、実際やるとなると大変だし、いっぱしになれるまでどのくらいの時間がかかるのか、自分でもまったく解らない仕事なので、ずっと続けられる人は少ないですね」
編集部「ほかの職人さんも、一人前になれたと思うことは永遠にないだろう、とおっしゃっていました」
遠藤「そうですね。一人前という概念自体がないと思います。長くやっている大先輩でも、ずっと勉強を続けているんですよね。時代の流れとか、技術とか、その都度考えたり、勉強しなきゃいけないことが多い仕事なので、一人前になれたと思うことは、ずっと無いと思います」

編集部「これから官兵衛は年をとっていくわけですが、メイクさんの腕の見せどころですよね。職人さんの仕事がわかるシーンとか、ポイントはあったりしますか?」
遠藤「うーん、これはちょっと無いですね。無いというか、いかにもメイクだと気づかれるのは、僕たちからすると、嬉しいことではないんです(笑)。官兵衛が年をとってきたなっていうのが、なんとなく伝わると嬉しいですね」
編集部「わかりやすすぎても、良い仕事ではないのですね」
遠藤「わからないのがいいんだけど、わからなかったら困る。これが、メイクの仕事だと思います」
編集部「ありがとうございました!」


というわけで、時代劇職人列伝。
第3回は「メイク」の遠藤さんにお話しを伺いました。
「わからないのがいいんだけど、わからなかったら困る」。
ドラマ作りを裏で支える、テレビ職人の心意気を見たような気がします。
というわけで、次回もお楽しみに!!

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大河ドラマ「軍師官兵衛」ホームページ


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