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「しょうもない人間が僕も大好き」大杉漣さん、現場を語る!~短編ドラマシリーズ「あなたに似た誰か」~

「しょうもない人間が僕も大好き」
大杉漣さん、現場を語る!
~短編ドラマシリーズ「あなたに似た誰か」~

8月13日(火)からスタートする「あなたに似た誰か」。
藤原新也さんの短編集「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」等から、3作品をドラマ化したシリーズです。
それを記念して(?)、第1話「カハタレバナ」で主人公を演じた大杉漣さんと、番組の後藤チーフプロデューサー、無類の藤原新也ファンで、今回監督を務めた西谷Dがスペシャルな対談!!を行いました。
「しょうもないことを一生懸命にやる、しょうもない人たちが主人公のドラマ」とは、一体…!?
 

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01_anata_13089.jpg(左から後藤CP、大杉漣さん、西谷D)

――今回は夢の対談企画ということで、主演の大杉漣さん、後藤CP、西谷Dのお三方にお集まりいただきました。早速、第1話「カハタレバナ」について伺っていきたいと思います。まずは大杉漣さん、今回の企画を聞いたときの印象はいかがでしたか?

 

大杉漣(以下、大杉):
藤原新也さんの作品は以前から拝見しておりまして、いつか機会があれば、藤原さんの作品に出させていただきたいと思っていました。西谷Dが昨年撮られた『永遠の泉』も拝見していましたので、このお話を頂いた時は、本当にうれしかったですね!

後藤チーフプロデューサー(以下、後藤):
このドラマは「この話をやりたい!」という、西谷Dの強い思いがあって実現したんです。

西谷ディレクター(以下、西谷):
原作の藤原さんは、実は僕の初演出作品でも主演してくださったんです。北九州放送局の開局30年記念ドラマで、26年前の作品。90分の作品ながら、ものすごい低予算番組で、脚本と主演の両方を藤原さんにお願いしたところ“しょうがないからやるか”と、引き受けてくださったんです。藤原さんが42歳の時でした。

 

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大杉:
藤原さん、今回もどこかに出演されているんですよね。

西谷:
第3話でご出演頂いていますので、ぜひ探してみてください。

大杉:
西谷さんが、藤原さんに惹かれる魅力というのは、どういったところですか。

西谷:
「東京漂流」「メメント・モリ」などを20代の頃に読みまして、こんなことを言う人はどんな人なんだろう、と。藤原さんが撮られた写真からも、今までの芸術写真とは違う圧倒的なインパクトを受けました。私自身も“死”については子供の頃から興味があって、それを美学に変換して、文章や写真を撮られている。そこに魅力を感じて今に至る…という感じです。

 

――藤原さんの短編から、「カハタレバナ」「記憶の海」「車窓の向こうの人生」の3編を選ばれた経緯をお聞かせください。

西谷:
「カハタレバナ」は非常にやりたいと思っていた作品でしたが、企画段階ではどの作品でも「作れたら嬉しい」という気持ちでした。北九州局にいた当時の先輩で、同じく藤原新也さんのファンでもある上司から「お前たちで責任を持つなら」と太鼓判をもらって、選ばせて頂いたのがこの3作品です。

後藤:
僕と西谷Dとでドラマを作ると今回みたいな話のチョイスになるんですよ。ちょっとダメだなあって感じの人々が主人公になるのは、自分たちがダメな人間だというのが分かってるからなんですよね。

大杉:
そんなことはないですよ(笑)

後藤:
だから“ダメなワールド”にスタッフと役者さんをどれだけ引き込めるか、というところがある(笑)

西谷:
スタッフ・キャストには、だいたいダメなひとが集まってくるんだよね(笑)

大杉:
このドラマの記者会見の後で、藤原さんが別れ際に「どうも、しょうもない人間を演じてくれてありがとう」と仰ってくれて(笑)。これ、愛情のことばですよね、すごく嬉しかったんです。そして僕も「しょうもない人間が僕も大好きです」と言ったんです。“しょうもない”ことが、きちっとすることより、いかに重要かということで。

後藤:
演じていただいた大杉さんも、自分の中のしょうもない部分をうまく出してくださって。もう、ほんと、どうしようもなく出してくださって(笑)

西谷:
ないのにね~。

大杉:
ありますよ(笑)

 

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後藤:
じつは、第1話「カハタレバナ」の主人公・武藤は、西谷Dの分身みたいなものなんですよ。

大杉:
僕にもダブる部分がありましたよ。武藤さんの心根の部分…世の中に対してちょっとすねた部分というか、人と真正面に向きあわない部分。こういう部分も大事だなと思うことがあって、人として、それがエネルギーになっていることもあると思いました。

 

――武藤役を演じられて、心に残ったセリフやシーンはありましたか?

大杉:
土手を歩くシーンですね。本仮屋ユイカさん演じる、さと子の子どもに会うシーン。土手を一緒に歩くんですが、あの時の寒さはもう、今までに味わったことのないものでした。家に帰りたいくらい!

西谷:
 “家に帰りたい”ってすごいね(笑)

大杉:
 “寒い”を通り越して“痛い”と思うほどガツンときてましたね。台詞もうまく喋れなくなる状況で。そんな中なのに、本仮屋ユイカさんが抱く赤ちゃんが、素晴らしい演技をしてくれました。

後藤:
大杉さん、暖房に口を近づけて、「口が回らない!」って言ってましたよね(笑)。その寒い中でも、赤ちゃんの演技はすごかったですよね。大杉さんに抱かれて泣くシーンで、ちゃんと泣いてくれたりして。

西谷:
本当にイヤだったんですよ(笑)

大杉:
このおじさんに抱かれるのが嫌だったという(笑)。まさにシチュエーション通り、奇跡のカットですね。現場で起きた小さな奇跡というか、神様が味方してくれているような、一瞬の出来事があったりするんですよね。

後藤:
本仮屋さんが振り向いた時の、あの表情がとてもいいんです。赤ちゃんを抱いて、こちらを向くあの感じ、キュンとしました。その後に大杉さんがひとりトコトコと歩いていくバックショット。今回のカメラマンが、また素晴らしいんです、1・2話の藤田浩久カメラマン、3話の中野英世カメラマンのふたりです。

大杉:
西谷さんの演出はライブなんです。細かく指示をされることは、俳優にとっては心地いい部分と、そこに甘えてはいけないという部分がありますが、西谷さんの場合は非常にライブ感があって、僕個人としては、とても好きな現場でした。これは声を大にして言いたい。(突如、大声で)「好きな現場だぞ~!」って。

西谷:
ここで大声で言ってもしょうがないでしょ(笑)

大杉:
大きい声で話しても文字が大きくなるわけじゃないから(笑)。本当にいい現場でしたね。今回はいろいろな場所でロケしましたが、どこも楽しかったですね。そして、現場での西谷Dのたたずまいが、またいいんですよ。見ていないようで見ていてくれている。なんというか、圧力をかけない感じ。藤田カメラマンと西谷Dの共同作業という感じがしていましたね。

そうそう、撮影前夜に雪が降ったこともありました。スタッフ総出で血眼になって雪を除けて、路面に残った水を拭って。いざ撮影となったら雪はひとつもありませんでした。重要なシーンで、雪があると台無しになるところだったので、スタッフも大変だったと思います。

 

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後藤:
僕はバッティングセンターのシーンが好きですね。

大杉:
あのシーンは、武藤という男の心情が表れたところでした。実はバットをひきずるというのを一度やってみたかったんです。昔、家の近所に野球好きのおじさんで、金属バットをひきずりながら歩くひとがいたんです。その姿に嫌悪感というか、バットを引きずるなよという思いを持っていて。すごく威圧感があったので、その感覚を思い出してやってみました。

 

――完全に余談ですが、後藤CPがこれまでスタッフブログに書かれていたネタですけれども、ついにダイエットに成功されたそうですね!

後藤:
僕が20キロのダイエットに成功した話っていうのも、HPに書いたら結構アクセスあると思うんですよ(笑)

西谷:
本で出した方が売れるよ(笑)

大杉:
炭水化物を減らしたりしたんですか?

後藤:
コンビニで食べ物を買うときに、カロリーを見るというだけなんですけどね。おにぎりが150kcalで、サラダが79kcalで…とか。摂取カロリーを計算して買うという方法です。

西谷:
たし算ができないとだめですね(笑)

大杉:
そりゃあ、引いちゃったら意味無いですからね(笑)

後藤:
お昼は300kcalと決めて、夜はもっと食べたくなっちゃうから多めに設定して…。

大杉:
なるほど。確かに見違えてますものね。

西谷:
後藤さん、意志の力が強いねぇ。

後藤:
そのへんが、今回のドラマの登場人物たちとちょっと違うところです(笑)

 

05_anata_13089.jpg ――登場人物はみなさん、意思の力が弱いんですね(笑)。さて、ここでドラマの話に戻ります。西谷D自身のお気に入りのシーンを教えてください!

西谷:
第1話で言うと、大杉さんが墓場でポロっと涙を流すところを、カメラマンがキッチリおさえていたのがうれしかったですね。あのシーンは好きです。もちろん最後の、本仮屋さんと手を振り合うところも素敵ですね。それから江波杏子さんが効いてますよね。

後藤:
素晴らしいですよね。

西谷:
2話「記憶の海」も藤田カメラマンですが、海や花など、非常に絶妙な映像を撮ってくれたと思っています。3話は中野カメラマンで、千葉の白浜海岸で、映画「バグダッドカフェ」のような映像がとても気に入っています。ハイスピードカメラ(高速度撮影用のカメラ)を使ったシーンの撮影で、4秒カメラを回すと、時間が8倍に伸びて32秒のシーンになるんですよ。宅間孝行さん(3話の主人公・山折幹夫役)が電車の窓ガラスに顔が押し付けられているシーンで、普通に芝居をしたら10秒はかかるところを、宅間さんに4秒でやってほしいとお願いしたら、見事4秒でやってくれた。あれは感動しました(笑)

 

――1~3話が完成しましたが、手ごたえを感じている部分はどんなところでしょうか。

後藤:
ドラマというのは、スタッフ・キャストそれぞれに“ここを表現したい”と思って、集まっている部分があるんです。それが合わさる瞬間が、本当に面白いんです。自分では思ってもいなかったことが、こんな風に出来るのかと。各話、3~4日という短い撮影期間でしたから、みんなが一斉に持ち寄って、ドーンとぶつかったという感じ。その瞬間を現場を見ていて、これはすごく面白くなるだろう!という感覚がありました。西谷Dが思っていないようなところにまで、内容を持っていってくれているのでは…と。たとえば1話では、大杉さんが現場の雰囲気をすごくよく作ってくれました。お芝居に入る前の段階で、スタッフや共演者をのせたりするのがうまい(笑)

西谷:
そうそう(笑)

後藤:
お芝居がどうのこうのという前の段階で、その前がすごく重要だと思いましたね。ほんと、雰囲気作りがすごいですよね!

大杉:
いやいや…(笑)

後藤:
大杉さんは、とても紳士的で柔和な方だと存じてはいましたが、皆を盛り上げて、現場をうまく進行させていく、雰囲気作りのすばらしさを感じましたね。常に声を出しているゴールキーパーのようでもあり、天才ミッドフィルダー的なすごいパスの出し方もあり、そして最後は、自分でゴールを決めちゃう(笑)

西谷:
パスが上手いですよね(笑)

後藤:
本当にパスが上手いんですよ。こんなパスを出すんだ!というのは、見ていて面白かったですね。

 

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 大杉:
後藤さんが仰るように、その作品ごとの立ち位置、というのはあると思います。僕は脇役もやりますし、主役もやりますが、作品ごとに、現場での過ごし方が同じではないんです。作品は監督を中心に作るものだと僕は思っていますので、監督の目を意識したうえで、どういう風に現場にいるか、ということも考えています。演劇論や映画論を語る立場にはないと思いますが、現場で喋った僕の言葉は“現場の言葉”なんだぞ、と思うんです。自分が上手く出来ていればいい、ということではなくて、全体の空気が良くならないといけません。今回は後藤さんや西谷さんも現場を和ませて下さいましたし、撮影の4日間が本当に楽しかったですね。

後藤:
ありがとうございます!

大杉:
「どうだっていいんじゃないか」と思うようなことでも、それをとにかく一生懸命やる。不器用だとかそうでないとか関係なく、一生懸命やったその先に、人の姿や気持ち、そういったものが見えてくることがあると思うんです。そう、一生懸命やることが楽しくて、大事だと思うんですよ。自分は俳優というポジションですが、監督がいて、スタッフがいて、全体で現場というものがある。自分に何が出来るか考えなければいけないと思うんです。そういうことも含めて、現場って楽しいですよね(笑)

西谷:
楽しいですね。

大杉:
だから続けるんです、懲りないんですよね、懲りてないんですよ(笑)。

あ、ここ、字を大きくしておいて下さいね(笑)

 

――最後に、番組の見どころを紹介してください。

後藤:
決して派手なドラマではありませんが、手間がかかっています。それぞれのキャスト・スタッフが持ち寄った、ダシが利いてるドラマです。そして、ダシの利いたスープなんだけど、味わってみると案外、毒も利いています。そんな部分があるドラマです。 

僕は自分の中で“救われたい”と思って、ドラマを作っている部分があります。自分はダメな人間だけれども、もしかしたら、幸せになれる瞬間を味わえるんじゃないか…そんなことを思いながら作っています。このドラマを見て、ああ、ダメな人間がいっぱい出ているなぁと思ってくださった時に、「あんな風に生きれば楽になるな」と、見つけてもらえる瞬間がきっとあると思います。日々疲れたり、自分のことが嫌いになって自信を無くしていたりする人にこそ、見て頂きたいドラマです。

西谷:
ぜひ、見てください。そして、パート2、3とまた続けていけたらなと思っています(笑)。
藤原さんが仰る“無限寛容”という言葉をキーワードに「藤原新也名作劇場」としてまた続けられたらうれしいです。

大杉:
藤原さんのメッセージ(番組HPに掲載)に、「静かな共感さえあればいい」という一節がありましたが、すごくいい言葉だなと思いました。生きていれば、様々なことがあります。僕が演じた武藤の人生にも、色々なことがあったんです。でも、それは特別なことではない。当たり前の人生の中に、悲喜こもごもがある。当たり前の人生の中に、悲喜こもごもがある。「ひょっとして、自分はあの時に、こう選択したから、こうなったのか」と後悔する時が、誰しもあると思うんですよね。

後藤さんが「これは後悔のドラマ」と言っていてすごく面白いなと僕は思っていました(笑)。こんなに正直に言ってしまう、信頼できる人がいるんだと(笑)。

人間のダメさ加減をよく分かっている。ちょっとしたことだけれども、背中を押してもらえる。どんよりした雲の間から、ちょっとした青空が見える。ドラマの中から、それを見つけて頂けたらと思います。

このドラマから、僕は僕なりの青空を見つけました。演じている自分というよりは、出来上がったドラマを見て、そう思いましたね。それは少しほっとする瞬間であり、藤原さんが仰る“静かな共感”に結びつくのかもしれないなぁと、思っています。

 

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大杉漣さん、後藤CP、西谷D、本当にありがとうございました!
ざっくばらんにお話いただいて、非ッッ常~~~に、和やかな対談でした。
短編ドラマシリーズ「あなたに似た誰か」は、BSプレミアムで8月13日(火)から3週連続・よる11時15分スタートです!
第1話は大杉漣さん主演の「カハタレバナ」。
どうぞ、お見逃しなく!

「あなたに似た誰か」番組ホームページへ


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