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「メイドインジャパン」VFXのスゴ技に迫る!

「メイドインジャパン」
VFXのスゴ技に迫る!

MADE IN JAPANの命運をかけて、奔走する企業戦士たちの物語「メイドインジャパン」。
架空の企業を「実在しそうな企業」にする“縁の下の力持ち”。それがVFXチームです。
そのスゴ技の数々を、VFXチーフの長谷川靖さんに伺いました!
ドラマや映画、CGなど、とにかく映像が好きな方、必見の特集です!!

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■長谷川靖さん プロフィール

「メイドインジャパン」VFXチーフ。これまでも映画のVFXスーパーバイザーとして『オトシモノ』『ゲゲゲの鬼太郎』『人間失格』『さや侍』『天地明察』などに参加。


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高橋プロデューサー(以下、高橋)「メイドインジャパン」について、最初に長谷川さんにご相談したのは昨夏でしたが、このドラマの印象はいかがでしたか。

長谷川靖(以下、長谷川) 製造業が厳しい状況になっているという話は以前から聞いていましたので、面白い企画だと思いました。NHK スペシャルのような番組でなく、ドラマとして、どうエンターテインメントに作っていくのか興味がわきました。

高橋 最初の打合せから資料を沢山持ってきて下さいましたよね。すでに電機業界のことも勉強していらして、気合が入っているなと感じました。もともと社会的な題材はお好きなんでしょうか。

長谷川 そうですね。それはあるかもしれません。今度、企画書を書いて提出しますよ(笑)

高橋 ぜひお願いします(笑) そして、台本を読まれた時はいかがでしたか。

長谷川 人間劇に感動しました。例えば、企業は法人という“人格”がありますよね、そうではなくて、完全に個人と個人の物語になっていた。会長(岸部一徳)が出てきて、「会社がつぶれてもいいのか!」と言うところは、象徴的なシーンと思いました。

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【廃家電置き場】のシーンについて

高橋 ここからは実際の番組を見ながら、VFXについてお伺いしていきたいと思います。まず、1話で唐沢寿明さん演じる矢作が、再建チームの発足を命じられる“廃棄された家電の墓場”のシーン…。


<廃家電置き場・グリーンバックの前で>


高橋 我々は「廃家電の山」と呼んでいましたが、このシーンをどう表現するかが、最初の打合せのテーマでしたよね。

長谷川 初期に考えていたのは、廃家電の山の中に一本道があって、回廊になっていて、左右を埋め尽くす白物家電と黒い家電が、葬儀で使う白黒の鯨幕のように見える…というものでした。
白い家電、黒い家電は、まさに“象徴”と言えると思います。それが葬式を彷彿とさせるのは、自分たちが作ったものが、売れないという現実を意味しているのではないかと思い、テスト版のCGを作りました。
最終的には今の形に落ち着きましたが、あの倉庫のスペースをもう少しうまく利用できたら良かったな、という部分はあります。このシーンの撮影には少し広かったですね。


高橋 現場ではグリーンバック(※特定の色の部分を切り抜いて、CG合成を行うための特殊な幕)を背景に撮影して、CGで家電を合成したんですよね。このドラマは、カメラがかなり自由に動く撮影法を採っているので、「このあとの合成は大丈夫なのか」と思うことが多々ありました…(汗)


<CG加工前>


<CG加工後>

長谷川 技術的に大変だったのは、超ワイドレンズでの撮影です。ワイドレンズで撮影すると、映像が想像
以上に“ゆがむ”んです。これにはうちのスタッフも驚いていました。
パン(※カメラを左右または上下に振る撮り方)すると、レンズのゆがみの情報が全て関わってくるので、普
通に正しく合成をすると、正しくならないんです。
通常、ワイドレンズの時はカメラ位置を動かさずに撮ることが多いのですが、パンしたことで…技術的にもド
ラマチックな作業量になりました(笑)
そして“廃棄された家電をどう象徴的に見せるか”という演出面の話。
当初のプランでは、家電の山積みの頂点を尖らせていましたが、崩れる可能性を感じさせてはいけないと
いうことで、なだらかになりました。ここでは、“家電の山に十字架が立っている”かのように象徴することを意
識しました。捨てられた家電をわざわざ保管しているのは、会長(岸部一徳)があえて、我が身の節度として、
売れなかったものや廃品を残したいと思っているのだろう、と。
それがどんな思いなのかが分かる「きっかけ」にできたらと、監督と話し合いました。
僕は派手な方向に行きたいタイプなのですが、監督がアイデアを少しずつ、リアリティの方向に戻すという
バランスのとり方をしていきました。

高橋 全3話を通じて、この場所は必ず登場します。変化をつけている部分はあるのでしょうか。

長谷川 2話の最後は家電が倒れてくるシーンですから、1話とは違う意味合いに見えてきます。1話は象
徴的に、静かに。2話はダイナミックにと意識しました。よく見ないと分からないですが、揺れないはずの家
電も揺らしています。


<CG加工前>


<CG加工後>

長谷川 一瞬でもそこを派手にすることで、躍動感の表現を目指しました。このシーンでは、美術の深尾さ
んにも大変お世話になりました。よくぞこの山を作ったな、という感じですよね。


(※美術チームが積んだ実物の家電の山の、上部にCGを合成した)

高橋 成田の空港近くにある倉庫を借りて、よくこんなに持ってきたなというくらいの家電の量でしたね。そこ
に、リアルなモノだけでは出しきれない表現を、長谷川さんにお願いしたんですよね。

長谷川 圧倒的な存在に見えていたらうれしいです。キャストの方々のおかげで、とてもいいシーンになっ
ていて。現場で撮影を見ていた時“企業戦士に見える”ことがいいなと思いました。それぞれの分野から戦
士が集まってきたな、と。
ロールプレイングゲームの中で、仲間を集めて旅立つ勇者のような(笑)そんな意味でも象徴的なシーンに
なっていて、うれしかったです。

高橋 最初の打合せで長谷川さんが仰っていた中で、“秋葉原のビルが廃家電で出来ている”というアイデ
アがすごく面白かったですよね。

長谷川 矢作が秋葉原を歩いていて、交差点でふと空を見上げたら、タクミ電機のビルが全部、積み上
がった廃家電で出来ている。それがガラガラと崩れてくる…というアイデアです(笑)
矢作は「えっ!」と驚いて見ているけれど、周りの人は普通に歩いて普段の生活を続けている。それをタイト
ルバックでやりたかった。もうひとつはベルトコンベアーの案で、出来上がっていく家電がそのまま廃棄場に
流れていって、落とされていく(笑)
それは技術的にもそれほど難易度は高くないので、やってみたかったですね。何のために作っているのか
と、作っても捨てられる無念さを表現したかった。

高橋 残念ながらスケジュール的に無理でしたが、実現できれば予告に使いたかったですね。続いて、中
国企業ライシェ(来生)のCMが流れる、街頭ビジョンのCGについてお願いします。

 

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【ビルの大型ビジョンに流れるライシェのCM】

長谷川 このシーンには「幻のカット」があります。別のビルのバージョンがあるんですが、手前に電線が縦
と横に十字で走っていて、これをマスクで切る(※重なって見えない部分を切り抜く作業)のが大変でした。
もう、職人技的に延々と切り抜いていく作業をやりました。難易度で言うと、それを使って欲しかったです
(笑)
実際に使われたカットにも実はやっかいな事がありまして、大型ビジョンの手前に切り抜きづらい街路樹が
あって、その木を一旦全部消してしまって、似た雰囲気の別の木を当てはめて入れたのが完成版です。
よく見ると、隣の木と違うんですよ。


<CG加工前>


<CG加工後>

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【ライシェ本社ビル】

高橋 なるほど!細かい配慮ありがとうございます。続いて、「来生」の文字が飛び込んでくるCGについて
はいかがですか。

長谷川 これは中国っぽさを狙って、色使いと光り方を意識的に派手に仕上げています。

高橋 元々の床面の色が赤なので、矢作たちの歩く姿が見えづらい…ということで、色を変えたんですよね

長谷川 これはカメラが動かないので良かったです(笑)

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長谷川 ここは、撮影段階で床面にグリーンのシートを敷いて撮影しています。美術デザイナーの深尾さん
が、この建物の面白さを生かしたアイデアを出されて、この撮り方になったというカットです。面白いロケー
ションですよね。「これがライシェか!」という。

高橋 どのシーンも自由に撮っていて、本当にすみません(汗)。このビルで実際に唐沢寿明さんたちが歩
いたところはラウンジなんですよね。ピアノがあって、素敵な雰囲気のところでした。
最後に、VFXのお仕事で必ず持っているテーマやこだわりなどはありますか。

長谷川 VFXの仕事の基本は“邪魔をしない”ということです。ドラマというのは“葛藤”ですから、主人公の
葛藤を邪魔しない、けれども、映像として違う情報で盛り上げていく。美術の方たちもそうだと思います。
最終的には、役者さんの台詞が一番大切なものだと思いますので、そこに何を足すと効果的なのかを探求
していく。足すとき、ある意味リアルじゃなきゃいけないし、変にリアルでないと悪目立ちしてしまいます。
ただ逆に、単純にリアルに作ってもつまらないので、どうするとより効果的かということも探りながらやることを
いつも念頭に置いています。

高橋 本日は熱いお話、ありがとうございました!

【VFXスタッフの皆さん】
長谷川靖 藤村光貴 清水和宏 大川崇子 横林 広隆 綱島創

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というわけで、「メイドインジャパン」のVFXについて、チーフの長谷川さんにお伺いしました。
数々の、難易度の高い作業の積み重ねが、リアリティを増していたんですね。映像業界を志望されている
方や、クリエイターの方などには、ぜひ二度三度と読んでいただければと思います。
対談に出てきた「廃家電置き場」は、9日(土)放送の最終話にも登場しますので、どこまでが実物で、どこ
からCG か、じっくりと見てみるのも楽しみ方のひとつかもしれません!
「テレビ60年記念ドラマ メイドインジャパン」。最終回は2月9日(土)よる9時です!

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