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「メイドインジャパン」に学ぶ デキる男のスーツ学

「メイドインジャパン」に学ぶ
デキる男のスーツ学

26日からスタートする、バリッバリの社会派ドラマ「メイドインジャパン」。倒産寸前の会社を再建すべく、水面下で奔走する“企業戦士”たちの奮闘劇です。
ここで見逃せないのが、出演者のみなさんのスーツの着こなし。企業戦士の凛々しさを表現する、大事なアイテムですもんね。
というわけで、唐沢寿明さん・高橋克実さんなど、番組の出演者陣を例にして、「着る人のイメージを引き立てる」スーツの着こなし方を、スタイリストの宮本茉莉さんから学んでみましょう!!

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<宮本茉莉さんプロフィール>

スタイリスト/コスチュームデザイナー。映画、ドラマを中心に活動。『綱引いちゃった』水田伸生監督/『爆心 長崎の空』日向寺太郎監督/よる☆ドラ『書店員ミチルの身の上話』/『80年後のKENJI』ほか多数



編 ドラマ「メイドインジャパン」のスタイリングを通じて、着る人を引き立てる、スーツの着こなしを学んでいきたいと思います。まず宮本さん、このドラマの企画を聞いた時、スタイリストとしてどう思われましたか?

宮本茉莉(以下、宮本) 社会派ドラマと聞いてワクワクしました。また主演が唐沢寿明さんと聞いて、さらに面白そうだなと。衣裳的には、ビジネススーツという決められた枠の中での表現になるので、「どうやって個性を出すのか?」「現代のビジネスシーンをどこまでリアルに表現するのか?」など、いろいろと難しそうだなとも感じました。
その後、高橋プロデューサーから「七人の侍」というコンセプトを伺ったり、監督から「泥臭い衣裳にしたい」というオーダーをいただいたりして、イメージを膨らませていきました。そして台本を読んだあと、“キャラクター裏設定”を考えていきました。それぞれのスーツや洋服の選び方のベースとなるものです。
例えば、矢作さん(唐沢寿明)は営業一筋に生きてきた人ですから当然自分の見せ方を知っています。長年の経験の中で見いだした俺流を貫き、自分のスタイルを確立している人。素材は丈夫で長持ちするもの、形もオーソドックスだけれどどこにでも通用するようなスタイル。などです。

 なるほど。スーツで自分を語ることが出来るんですね。これは読者の皆さんのスーツ選びにも、参考になると思います。ところで今作では、スーツをイチから仕立てたそうですね。

宮本 まず最初に、高橋プロデューサーに「スーツを作らせて下さい!」と頼むところから始まったんです(笑)。やはりスーツは体に合っていてこそ格好良く見えるものですから。

 単純に、生地を決めて、採寸して終わりじゃなくて、宮本さんなりの細かい微調整を、監督と一緒にやっていましたよね。

宮本 そうですね。それぞれのキャラクターに合わせてデザインをしているのですが、素材によって見え方や着心地がずいぶん違ってきます。仮縫いの時に、監督やご本人に相談して、細かい調整をやらせていただきました。
唐沢さんの仮縫いの時は「今っぽくなくて、いいね」という褒め言葉?をいただきました。
ちょっとウエストを絞ったり、パンツを細くすると、グンと今っぽくなるのですが、あえてやらない。という我慢をしました。

 衣裳打ち合わせの際に、色々と資料を作られたそうですが…。

宮本 今回は絵を描く時間が無かったので、イメージ写真に素材(生地)を貼り込んだものですね。こういった資料を見ながら細かい衣裳の打合せをしていきました。

編 素材感にこだわるということでしょうか

宮本 極端なデザインが出来るわけではないので、素材が重要ですよね。スーツの生地に合わせてワイシャツの素材や色、デザインを決め、仕上げにネクタイの方向性を探ってVゾーンの出来上がりです。

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●矢作篤志役/唐沢寿明さんのスタイリング

編 ここからは、出演者のみなさんごとに、スタイリングのコツやエピソードをお伺いしたいと思います。まず、唐沢さんのスタイリングについては?

宮本 唐沢さん演じる矢作は、営業一筋の無骨な人。これさえあれば大丈夫…という、俺流を見つけた人です。
ネイビーのオーソドックスなスーツなんですけれども、素材はとても丈夫で、光沢があるものです。一番多く登場するのが、ブルーのワイシャツに紺のレジメンタイです。タクミのイメージカラーがブルーということで、ブルーを基調にしたスタイリングが多いですね。
ポスター等のメインビジュアルのネクタイは、イタリアンレッドのパワータイですね。赤の発色がとても綺麗なネクタイです。これが物語上のキーになる部分で使われています。
他にはブルーとグレーの小紋タイをシーンによって使い分けています。でもほんとに唐沢さんはディンプル(ネクタイの結び目のくぼみ)の作り方がお上手です。ネクタイの結び方一つで人物が深くなります。ありがたいです。

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●中国企業「来生(ライシェ)」チームのスタイリング

編 高橋克実さんはじめとする中国企業「来生(ライシェ)」チームは、どう衣裳をお決めになりましたか?

宮本 高橋克実さんは現場畑の人という設定で、メインの衣裳が作業着です。スーツ戦士とは違う“現場感”や“馴染み”をどう出すかということを考えました。作業着を煮込んだり、汚したり、染色したり、試行錯誤しました。また、衣装全体の裏テーマとしてMADE IN JAPANを入れたいと思いました。オーダースーツはもちろん国産ですし、他にも色々なところに“隠れJAPAN”を使っています。そのひとつが岸部一徳さんの浴衣です。絞りで有名な有松のものです。
他には高橋克実さんがメインで着るグリーンのジャンバーも、福島の小さなメーカーさんのものです。いろいろ合わせた中で一番しっくり来たものがそれだったので内心は非常にうれしかったですね。

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●柿沼雄二役/吉岡秀隆さんのスタイリング

 続いて、吉岡さんのスタイリングについては?

宮本 ライトグレーとチャコールグレーのスーツを、細身の体に合わせたものをシーンによって使い分けています。若い方なので、ワイドカラーのシャツにネクタイは無地に見えるような地模様のソリッドタイで、スタイリッシュな着こなしをしています。
ネクタイは4本くらいあって、大画面で見ると違いが分かるんですが、かすかにレジメン、かすかにペイズリー、あとはダークスーツの時はニットタイ。もう一本はウールのレジメンタイ。ほとんど同じに見えますが、実はこだわりがあって、ダークスーツとライトスーツの時は同じネクタイはしていないんです。ダークスーツの時は薄いグレーのシャツにして、ネクタイとシャツの色を変えています。

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● 小畑かなえ役/マイコさんのスタイリング

編 女性陣についても宮本さんが担当されたということで、マイコさんのスタイリングについて教えてください。

宮本 再建戦略室唯一の女性であるマイコさんは、法務担当のキャリアウーマンという設定ですが、ご本人は役の設定よりも若い方なので、年齢を上げる見せ方を考えました。知的なスタイリングで、TPOに合わせて使い分けも出来つつ、素材感にはこだわって。
今っぽくニットジャージとか、色も流行のグレーベージュや、肌に合う明るめの色を意識して使いました。ベーシックな着こなしですが、トレンドも取り入れています。
それから、戦略室に配属されてから急にパンツスタイルになるんです。人の目を気にしなくてよくなった瞬間に。そこが女子っぽい選択だろうと。「このメンバーにしか会わないのね」と思った瞬間に「パンツでいいわ」と…(笑)
ヘアスタイルも降ろしていたんですが、「ひっつめでいいか」…という変化なんです。ネックレスはお気に入りのものをしていて、ピアスはファッションに合わせて、光るものやぶら下がるものに変えています。かなえの密かな楽しみですね。

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● 譲原桂一郎役/及川光博さんのスタイリング

編 続いて、及川さんのスタイリングについては?

宮本 私の中での裏設定がありまして…たぶん“イギリスに留学経験がある人”だと。イギリスで、ブリティッシュな着こなしを学んで帰国されたんだろうと(笑)。
「社長は見かけだろう」というところから入ったけれども、その後、経営を知れば知るほど面白くなって、今は外見と中身が成熟した時を迎えた…という勝手な設定です(笑)
英国紳士の着こなしということで、ピ−クドラペルのスリーピースにクレリックシャツ(襟が白で身頃は色や柄がある)という着こなしです。
ネクタイは無地の紺色と細かい折り柄のものです。記者会見のシーンではネイビーのスーツに白のポケットチーフという、かなりブリティッシュなスタイルで決めています。クールなメガネでさらにアップ。ご本人もとても気に入って下さって、「仕立ててもらうと違うね」って仰って下さいました。本当にうれしかったです。

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● 来生(ライシェ)社長・趙 際宇役/焦俊翔さんのスタイリング

編 焦さんのスタイリングについては?

宮本 中国ってこうだよね、という押しつけが無いようにと考えました。焦俊翔さんと、今の中国の若手起業家たちはどんなスタイルをしているのかと話をしたところ、ほとんどネクタイはしない、ということでした。
日本から来たサラリーマンとの差を出すために、ベルベットなど、日本のサラリーマンは着ないような素材を使っています。少し色を入れたいということでシャツにラベンダーなどの色を使いました。

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● 来生(ライシェ)社長秘書・玲玲役/吴映さんのスタイリング

編 社長秘書役、吴映さんのスタイリングについては?

宮本 オレンジのジャケットやタートル、黄色のスカートなど原色を入れて、存在感を出しました。中国は町中を見ると、とてもカラフルですし、そういったスタイルが街に合う。伝統のカラーも日本とはトーンが違っていますし、ビビットな色を好むのかもしれないですね。

ちなみに、来生の工場の従業員の制服もピンクにしました。ピンクの帽子にポロシャツです。イメージカラーとして、ピンクがいいなと思って統一していただきました。

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● 西山慶吾役/國村隼さんのスタイリング

編 國村さんについてはいかがですか?

宮本 着こなし上手な國村さん、監督からはおしゃれになりすぎないようにという難しい注文をいただきました。工場長役で現場の人ですけれども、場面に応じて三つ揃いのスーツできちっとしていくところと、作業着姿と、戦略室のカーディガン姿でギャップを出したかったです。
最初はジャンバー姿で通勤という話もありましたが、作業着は工場だけにして、使い分けがあるという設定になりました。こだわりのネクタイ(イタリア製)をしています。やっぱりおしゃれになってしまった…かな(笑)

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●譲原会長役/岸部一徳さんのスタイリング

編 最後に、岸部さんのスタイリングについて聞かせてください。

宮本 譲原会長は20年前、タクミ電機の社長時代に着ていたスタイルのスーツを今も愛用しているという設定です。今はあまり着られていないダブルブレストのスーツですけれども、会長が生きてきた時間を感じてもらえたらと思います。素材はフランネル等の暖かみのあるもの、色は現場から遠ざかっているので、ライトベージュやライトグレイなどで余裕が出れば良いなと思いました。いざという時だけダークスーツにしています。自宅では浴衣、着物、カジュアルな部屋着などいろいろな着こなしをしていただいています。

編 岸部一徳さんは背が高い方なので、本当に格好良いですよね。
宮本 そうですね、何度かご一緒しているのですが、ずっと体型が変わられませんし、すごくバランスが良い方ですよね。あ、ダブルのスーツって、実はまた流行るんですよ、イタリアではもう流行しはじめているらしいです。

編 宮本さんご自身が一番お気に入りのスタイリングは?

宮本 そうですね…全部?(笑)といいたいところですが、とくに見て欲しいのは仕立てたスーツの肩や、背中のラインでしょうか。出来る男は背中でも語る…。
ドラマを見たビジネスマンの方に「俺もスーツをオーダーしてみようかな?」と思ってもらえたら
嬉しいです。 

編 肩や背中のライン、やっぱり大事なんですね。買う時にはちゃんと、後ろも見ないと…(笑)。ちなみに今作では、今までのお仕事と何か違いはありましたか?

宮本 カメラやモニターがたくさんあって驚きました。セットはもちろんロケでも同時に3〜4台のカメラで撮っていて、あらゆる方向から狙われているので常に“360度衣装チェック”というのが必要でした。役者さんの周囲をぐるりと回って、あちこちチェックするのですが、時には高いところから俯瞰で撮ったりするんです。しかも一台じゃない。例えば映画の撮影ですと1カメ(1台のカメラで撮影し、カットごとにカメラ位置を変えていく)が多いので、カメラ脇から見て確認出来るのですが、どこを撮られるか分からないという…緊張感。撮影についてくれていた助手の石原さんが、本当によく頑張ってくれました。

編 最後に、宮本さんが持っている、衣裳選びの「テーマ」や「ポリシー」を教えてください。

宮本 衣裳が役の中に自然に溶けこむことを一番大事にしています。あまりおしゃべりでない衣裳
が好きです。演じる方が気持ちよく役に入っていける、またはそのものになるときのお手伝いが出来たら良いなと思っています。
今回は素敵な俳優さんばかりで衣裳を着て頂けるのがほんとうに嬉しかったです。
この作品に参加させていただいて感謝しています。

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役者さんの個性、そして役のキャラクターからスーツを作っていく…というスタイリングのプロセスは、サラリーマンのスーツ選びにとっても、すごく参考になるものでした。色や素材感を大事にするのはもちろんですが、皆さんも「オレはこういうヤツだから」「オレはこう見られたいから」という、ご自身の願望やキャラクターを意識して、スーツを選ばれてみてはいかがでしょうか。
それにしても、役者さんのスーツ姿は素敵ですね。映像で見るとサイズ感・フィット感が素晴らしくて、仕立てたスーツだということがよく分かるんです。良質なスーツ・作業着が、働く男の武器になる…凛々しい男達のスーツ姿、ぜひ動画でお楽しみくださいね。
「メイドインジャパン」は、26日(土)よる9時スタートです!

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