土曜ドラマ 天使にリクエストを~人生最後の願い~

土曜ドラマ 天使にリクエストを~人生最後の願い~

【インタビュー】江口洋介さん×上白石萌歌さん×作・大森寿美男さん

天使にリクエストを~人生最後の願い~

過去を背負った探偵・島田と助手・亜花里の息の合った掛け合いは、どのように作られたのでしょう?
キャストはこの2人しかいない!と考えていたという作者の大森寿美男さんが迫ります。

■昭和のハードボイルドなにおいのある、過去を背負った複雑な役柄

大森寿美男さん(以下、大森):
主人公・島田修悟を一番すてきに演じてくれるのは、江口さんしかいないと思ってたんですよ。

江口洋介さん(以下、江口):
ほんとですか?ありがとうございます。島田は我が子を失った深い悲しみがあるんですけど、死を肯定するというのもおかしいですし、否定するのもおかしいんですよね。だからあまりウェットになりたくないなとは思いました。
悲しみをずっと継続することはできなくて、お腹がすいたらごはんを食べるし、風呂にも入る。生きたいんだけれど上手く生きられなくてもがいている、そういう男の日常を意識しながらやっていました。
島田を立ち直らせようとしてくれる亜花里(上白石萌歌)と探偵事務所を始めて、なんとか少しでも前を向こうと生きていく中で、財団を作りたいという佐藤和子さん(倍賞美津子)と出会って、そこから物語が一気に転がっていく…。ゲストの梶芽衣子さん、山本學さん、塩見三省さん、長い年月を俳優としてやってきた方々と一緒に、このドラマの持っているロードムービーみたいな部分と、役者同士が出会っていく、そういうものを乗せて最後まで引っ張っていけたかなとは思っています。

天使にリクエストを

大森:
江口さんと同世代の昭和生まれなので、昭和に見たもの聞いたものにいまだに刺激を受けながら、なんとか新しいものを作りたいなと思っているタイプの作り手なもんですから。昭和の原田芳雄さんとか松田優作さんとか、人間臭いハードボイルドのにおいを出すドラマを作るには、江口さんが最後の砦だと思ったんです。

江口:
そうですか…。

大森:
そして、ハードボイルドな江口さんの横には、昭和のアイドル映画のようなみずみずしい華のある輝きが欲しかったんです。

上白石萌歌さん(以下、上白石):
亜花里ちゃんて、私が出会った役の中で、一番スパイスの効いた子だったのかな。荒々しい部分もあるんですけど、根底には人を信じられないところがあって。きっと、彼女は島田さんに出会っていなければ、こんなに目がキラキラ光ることもなかったと思うので、島田と亜花里ちゃんの役はすごく作用しあっていて、お互いを生かし生かされているような関係性だなと感じていました。

天使にリクエストを

大森:
上白石さんにはクラシカルな魅力があって、初々しいけど修羅場をくぐり抜けて来た感じが自然に出てくるというね。梶芽衣子さんと2人のシーンも、違和感なく作れていて、すごくいいシーンになってる。これってすごいことだと思うんです。

江口:
確かに。上白石さんは、どこかすごく肝が据わっている。サラっとやれちゃうところがあって。

上白石:
いやいや、ずっとドキドキしてます。

江口:
控え室に入ったら葛藤しているんだろうけど、出てきた時はそれを一切見せない。陰の努力家だと思います。

■島田と亜花里のバディっぷりに注目

大森:
第1回と2回を観て、2人はすごく息があっているというか、芝居のトーンがあっているというか、男と女でもなく、家族でもなく、ただの上司と部下でもなくて、でも特別な関係で特別な愛情を持って接しているというのが、最初から出ていました。

江口:
そうですか。

上白石:
よかったです。

大森:
よーいドンで芝居を合わせて自然にそうなっていったんですか?なにか最初に話し合ったんですか?

江口:
入念な計算がありましたよね(笑)

上白石:
そうですね。リハーサルは結構大変で(笑)

大森:
探り探りでしたか。

江口:
本読みだけして、いきなりドンでは、ああは行かなかったと思います。実際にセットでリハーサルをして、積み重ねられたのがよかったですね。

上白石:
島田を事務所で起こすシーンは、クランクインの日に収録したのですが、「すみません、江口さん。叩いてもいいですか?」って聞いて、バシバシ叩いて(笑)

江口:
本番思いっきり来るんですよ。物投げてきたりとかね。危なくてしょうがないくらい、すごい勢いでくるんだよね(笑)

上白石:
あはは。

江口:
面白かったですよ、むき出しになってくれるから。

大森:
この2人がこうだったら、どんな濃い依頼人がこの先来ても大丈夫だって思いましたよ。画面に出た瞬間から、僕の会いたかった島田修悟さんだったし、亜花里ちゃんでした。

江口:
嬉しいですね。

大森:
いろいろ試行錯誤があってそこに至るわけですね。

■ベテラン俳優陣との競演

大森:
倍賞さんや梶さんが出てくれるだけで、僕はワクワクしてしまう。ただのファンなんですけども。上白石さんは、梶さんの若いころの映画って観たりします?

上白石:
『仁義なき戦い』とか、アーカイブの映画館に観に行ったりしていて。だから「スクリーンで観た、あの方が、いま同じ現場にいる!」みたいな感覚です。当時の撮影方法や秘話を撮影の合間に聞いたりして、その方と同じ作品を作れているということが本当に信じられないことだなって。

天使にリクエストを

大森:
梶さんは、それこそ修羅場をくぐってきた女を演じさせたら天下一品ですもんね。それでいまのおばあさん姿がすごく美しいじゃないですか。まだ僕は、最初の依頼人の梶さんしか観てないのですけど、ベテランの人とお芝居をするのは楽しかったですか?

江口:
そうですね。今回のようにゲストという形で、ベテランの俳優さんとがっつり芝居をする機会は意外と少ないですね。そして物語もその人の人生に触れていく話なので、面白かったですね。
俳優さんだから、昔の映画を残像のように思い浮かべますし、作品を背負ってそこに立っている、その人の俳優としての生き様がそこにあるという感じがします。それが登場人物とどこかでシンクロしているような感じでやれていたので、いい経験でした。

大森:
その熱が画面に出ているし、それがこのドラマで一番意味深かったですね。

■昭和歌謡の歌唱シーンは「もったいないんじゃないかと思って」

ーー 本作の珍しい点といえば、毎回、キャストが昭和歌謡を歌うシーンがありますね。

上白石:
選曲は大森さんがされたんですか?

大森:
そうですね。僕からのリクエストだと思ってください(笑) 話の内容とリンクした曲を選ばなきゃいけないという事もありましたが、本当は最後に依頼人が聞きたい曲をリクエストされて、それを車の中で流すという設定を考えていたんですよ。でも、これは本人が歌ったほうが説得力があるんじゃないかなと。歌わせないと、もったいないんじゃないかと思って、歌ってもらうことにしたんですけども、大正解でした。歌うって祈る行為に似ているところがあるじゃないですか。まだ第1回と第2回でセットになっている最初のエピソードしか見ていないんですが、その第2回ラストの上白石さんの『アカシアの雨がやむとき』、あれはすばらしい。想像した以上にすばらしかった。

江口:
なかなか手ごわかったです(笑)。僕もふだん歌を歌うんですけど、演じている気分の中で歌を歌うとなると、ギャップがあるんですよ。

上白石:
わかります(笑)。

江口:
出来上がってみると違和感はないんだろうけど、演じている時は「なんでこいつ、ここでこれを歌ったのかな」って、心情を考えちゃうんです。だからどういう心情でつなげようかと、第1回の『無縁坂』もすごく苦労しました。「このフレーズは心情として歌えないだろう」とか、いろいろなことを思ったりして。上白石さんは絶対知らない曲ですよね。

上白石:
脚本を読んで、「へ~こんな曲があるんだ」って知って歌い始める、みたいな(笑)。

大森:
設定としては歌っているのではなく、曲を流しているんですよ。それを表現として歌ってもらっているので、実はあそこだけ〝ファンタジー〟なんです。

■生きるための糧にならないと、ドラマはなんの価値もない

ーー 本作は、クランクイン直前に新型コロナウイルスの影響で撮影が延期になり、ようやく放送となります。いま完成した作品を世に出すということに、何を感じますか?

江口:
コロナ前に撮影するのと、コロナ後に入るのでは、多分芝居が違うんだろうな、違っていてほしいと思いながらも、この撮影に臨みました。
見送ることも、死を受け入れることも、去っていく方も、不幸ではない。自分の経験のなかでも、亡くなった人を想像すると悲しい気持ちにはなるし、でも自分が覚えているその人の顔とか、言葉を、自分の中で何回もリフレインしているじゃないですか。
今まで出会った人が自分の中に入って、他人であっても思いをお互い分かち合えるのが、最大の生きる魅力だ、というのが作品のテーマだと思って演じました。こういう事態になって、生きるということを考えさせられる中で、半径数メートルの家族や周りの人達と、もう一度話したり、向き合える時間の大切さを感じてもらえるんじゃないかな。

上白石:
コロナ禍で、「死」というものを、今まで以上に身近に感じました。死を目前にした方たちが、自分の意思で自分の人生の最後をデザインしたり、自分で決定することの素晴らしさを、この作品を通して訴えることができると思っているので、この題材を今やるってことにすごく意味があると思いましたし、観る方も、この状況だからこそ、いつも以上に感じられることがあるんじゃないかなって感じています。

天使にリクエストを

大森:
死を強く意識するというのは、生を強く意識するという事なんだと改めて思うし、コロナ禍の中で、ままならない生活をしながら、いま自分が一番大切にしているものは何かって、生きる中で何を大切にしたいかって事を、自然と考えた人が結構たくさんいると思うんですよね。それと同じような感覚で「最後の願い」をとらえていただけると、自然とそういうことを考えやすくなると思うんです。敏感になっているところに、ちょうどこのドラマをぶつけられるのは、運命的なものを感じますね。

江口:
よりハートフルに感じてもらえるだろうし。

大森:
とにかく生きるための糧にならないと、ドラマはなんの価値もないので。そうなってくれると嬉しいですね。

江口:
そうですね。

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