スタッフブログ

倫理の先生からのメッセージ⑤~ブックリストでプレイバック~

倫理・哲学の専門家・先生たちから「ここ倫」へのメッセージも最終回。
ドラマの始まりから最終回までを、テーマに関連したお勧め本と共に一気に振り返ります!
気になる「問いかけ」の扉を開けて、ぜひ皆さんの「倫理の時間」を続けてください。


第1回/「教養がある」ってどういうこと?

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第1回では「教養」がキーワードになっていました。高柳を誘惑しようとするいち子に対し、高柳は「私は教養のある女性がタイプです」と一蹴します。またこの回の最後、彼に見合う教養を持った女性になると宣言するいち子に対し、高柳は「愛こそ貧しい知識から豊かな知識への架け橋である」というマックス・シェーラーのことばを送りました。しかし、ここで高柳が言う「教養」とは、何でしょうか。

「教養がある=知識がある」のようにも思えますが、そうするとクイズ王こそが教養がある人の代表なのでしょうか。しかし、高柳はクイズ王がタイプだと言っているようには思えません。では、どういう人のことを「教養がある」と言うのか――これは簡単に見えて実は奥深い問題です。このように「ふだんなじみがあるけれど、よくよく考えてみるとはっきりしないこと」をじっくり考えていくためにも、哲学を勉強してみるのはいかがでしょう。

【お勧め本】
戸田山和久『教養の書』
「教養とは何か」を楽しく、しかし着実に考えていく本です。


第2回/そもそも私たちは本当に「自由」なのか?

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第2回のキーワードは「自由」。冒頭の授業場面で、高柳は「自由意志にこそ人間の尊厳がある」というルネサンス期の人文主義者たちの思想を紹介していました。また、授業内で行われた「哲学対話」は「自由であることは幸せなことか」を巡るもの。電話で高柳が幸喜に語ったキルケゴールの言葉も、人間が自由であることによって生まれる不安についてのものでした。

では、その「自由」とは何でしょうか。そもそも私たちは、本当に自由なのでしょうか。人間は自然の一部であって、自然は科学が解き明かすような法則によってすべて決定されているとしてみましょう(それは十分ありえる話です)。その場合、「私たちは自由だ」と果たして言えるのでしょうか。哲学では、「自由論」という研究分野でこのような問題を真剣に考えています。

【お勧め本】
木島泰三『自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史』
古来から哲学者たちは「私たちはほんとうに自由なのか」と問い続けてきました。本書では、そうした哲学者たちの格闘の歴史を学ぶことができます。


第3回/どうしたら「よく生きる」ことができる?

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第3回冒頭の授業で、高柳は、単に生きるのではなく「よく生きる」ことを問題にしていました。ドラマでは、外見に無頓着な松田と、いつも鏡を持ち歩いて自分の外見チェックを欠かさない時代という、両極端な二人が起こす騒動が描かれますが、少なくとも、外見的な美しさが「よく生きる」こととはあまり関係がないとは言えそうです。

生徒である時代への感情が、愛なのか性的欲求なのかと高柳に問われた松田は、この問いに真摯に向き合います。高柳が時代に向けた「真の自分は「魂」である」というソクラテスの言葉は、「自分の魂に向き合うこと」が「よく生きる」ためには重要であるということを私たちに教えてくれているようにも思えます。

では「自分の魂に向き合う」とはどういうことなのか。ここから先は私たち一人ひとりが考える番なのかもしれません。

【お勧め本】
山口尚『幸福と人生の意味の哲学』
生きる意味や幸福について、古今の文学者や哲学者とともに考える本です。


第4回/「悪」を乗り越えるためには?

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第4回では、人間の本性は悪であり、悪は克服できないと考えるジュダ――理性主義者である高柳の主張を徹底的に懐疑に付すジュダは、カントの「人間は気ままに生きると争う悪になる」ということばを高柳に突き付けました。

では、ジュダの言うとおり人間の本性が悪であるなら、それを乗り越えるために何ができるのでしょうか。第4回では、陸の「考えない」姿勢が象徴的に描かれていました。陸は「その場その場で流されて何も考えずに」悪の世界に迷い込んでしまいます。そして、「なぜここにいるのか」「君はどうしたいのか」と問われても「わからない」を繰り返す陸に対し、高柳は「自分にとって何が善か悪かちゃんと考えなさい」と語気を強めます。高柳は「考える」ことが、悪を抑止し乗り越える力になると信じているようでした。この信念は、陸だけではなく私たちすべてに向けられたものであるように思えます。

【お勧め本】
御子柴善之『自分で考える勇気―カント哲学入門』
放送で引かれたイマヌエル・カントは、自分の力で考える勇気の重要性を説いた哲学者でもあります。カントの哲学に関心を持たれた方には本書をお勧めします。


第5回/「血も涙もない」ロボットでも「感情」をもてる?

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第5回では、自傷を繰り返す由梨や、他者との身体的な距離感を掴めない幸人が抱える問題を通じて、「人間の心と身体の関係」にスポットが当たりました。人間の心と身体の関係は複雑ですが、哲学では長いことこの問題を扱ってきましたし、最近ではロボットやAIとの比較なども新たな考察の手がかりになってきています。

たとえば、「ロボットは感情をもてるのか」という問いは、単なるSF的な関心を呼ぶだけでなく、「感情とは何か」を考える手がかりにもなります。血の通っていないロボットに感情などもてるはずがない、という直観もありますが、ではなぜ「血が通っていないと感情はもてない」と思えてしまうのでしょうか。それはおそらく、感情という心の働きが血流という身体の働きと何か関係があると思われるからでしょう。でも、それは具体的にどういう関係なのでしょう――この関係をじっくり考えてみると、もしかするとロボットにも感情はもてるのではないか、という可能性も開けてきます。このように、「よくよく考えると最初の直観と反する結論が出てくるかもしれない」というところに、哲学の味わい深さがあります。

【お勧め本】
源河亨『感情の哲学入門講義』
「感情とは何か」を通じて哲学に入門させてくれる、全15講の講義です。「ロボットは感情をもてるのか」という問題も扱っています。


第6回/勉強すること自体の楽しさって?

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第6回のテーマの一つは「勉強」でした。「なぜ勉強しなければいけないのか」。これは誰もが一度は考えたことがある問いではないでしょうか。「就職のため」「進学のため」「なんとなく」「みんなやっているから」…。人によって答えはさまざまでしょう。高柳は勉強を、「進学や就職のための手段」ではなく、「それ自体が目的」と捉えているようです。難しい数学の問題を解いたり英単語を暗記するのは、何かのためではなく、それ自体が楽しいことだからそうするのだ――高柳はこんな勉強観を持っているようです。

今はまさに受験シーズンの真っただ中ですが、「勉強」という言葉を聞くと、私たちは無意識のうちに「試験」を連想してしまって、勉強それ自体が持つ楽しさに気付けずにいるようにも思えます。そうした連想から自分を解放するためにも、「なぜ勉強するのか」と問い続ける必要があるのではないでしょうか。

【お勧め本】
読書猿『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』
本書を読んで、「勉強って楽しそうだな」と感じ取ってみてください。


第7回/多数決はいい決め方?

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第7回で印象的なのは、資本主義や社会主義といった、社会全体に関する倫理の授業内容が、クラスのグループチャットから抜けるかどうかという、いち子や香緒里にとってのきわめて個人的な問題とつながっているところです。どちらも「多数派は常に正しいのか?」「私たちは多数派に従うべきなのか?」という問いが根底にあります。

ある考えに多くの人が賛同しているからといってそれが正しいとは限らないし、賛同する人の少ない考えが間違っているとも限らない――みなさんそれぞれ思い当たることがあるのではないかと思います。とはいえ、自分の考えが少数派であることがわかると不安になってしまいますし、つい自分の考えを押しつぶして多数の側に立ってしまいそうになります。そして、こうした私たち一人ひとりの意思決定が社会全体に影響を与えることもまた確かなのです。倫理を学ぶことで個人的な問題と社会的な問題とのつながりを心に留めることも大事なのではないでしょうか。

【お勧め本】
坂井豊貴『多数決を疑う――社会的選択理論とは何か』
「多数派が常に正しいわけではない」ことを選挙制度の分析を中心に掘り下げた本です。


最終回/これからも「対話」を続けるために

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最終回では、高柳が最後の授業として、いち子がグループチャットを抜けてクラスメイトから受けているいじめについて生徒たちが対話を行う場を用意します。いち子はこれからどうするのがよいのか、いまクラスで起きていることをどう考えるべきなのか、生徒たちは積極的に意見を言い合います。その結果、どんな結論が出たのか――ドラマをご覧になった方はおわかりかと思います。

このドラマを通して印象的なのは、さまざまな問題を抱える生徒たちが、他の生徒や高柳と対話をすることで倫理の問題について考える姿です。そう、昔の哲学者が書いた難しい本を読んでうんうん唸るだけが倫理や哲学ではないのです。

高柳は生徒たちに考え続けることの重要さを説きます。「考える」とは一人で考えることでもあるし、対話を通じて一緒に考えることでもあります。ドラマをご覧になったみなさんも、日々の生活の中にこうした「対話」を取り入れてみてはどうでしょうか。

【お勧め本】
土屋陽介『僕らの世界を作りかえる哲学の授業』
高柳が行ったような対話は「哲学対話」と呼ばれるもので、近年、日本でも教育現場などで積極的に導入されています。哲学対話についてもっと知りたい方には本書がお勧めです。


お勧め本の選定・文:ここ倫を推したい哲学者の会(稲岡大志・長田怜・谷田雄毅)


よるドラ「ここは今から倫理です。」

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ミニ番組「ここはぺこぱと倫理です。」

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投稿者:スタッフ | 投稿時間:16:30 | カテゴリ:ここは今から倫理です。

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