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★こちらのページは2022年2月で更新を終了いたしました。

「透明なゆりかご」舞台ウラより #4

番組プロデューサーの須崎です。
第4話をご覧くださった皆さん、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。 

原作コミックの中でも衝撃が大きく、感動も深いエピソード『産科危機』。
ドラマ化するに当たって、まず若手の女性スタッフ、鹿島と新開が一冊の本を購入してきました。日本における母体死亡の症例を、全国の産婦人科医有志がまとめあげた分厚い専門書でした。そこには、医療がかなり進んでいた90年代当時でも、日本で年間に何十件も母体死亡が起きていることと、現場の医師たちの「このままではいけない」という無念の思いがつづられていました。
(ただし、2018年現在では医療従事者たちの努力により、かなり減って来ています!)

難解な医療用語がずらりと並び、しかも少し読んだだけずっしりと重たい気持ちになるその専門書を、二人は熟読し「このケースは今回のストーリー設定に近いかも」と思えるものをいくつか書き出し、脚本の安達奈緒子さんに提案しました。

安達さんがそれを手がかりに、時間をかけて熱のこもった台本を書きあげます。それを手に僕らは安達さんともども、新宿のとある喫茶店に赴きます。医療考証の名取道也さんと打合せをするためです。産婦人科医としてお忙しい名取先生、毎週●曜だけ出向く時間を作れるとのことで、そこでちょくちょく打合せするのが、僕らのルーティンとなりました。

natori.PNGのサムネイル画像 名取道也先生(撮影現場にて)

 

名取先生は台本のディテールについて「これは医療的にちょっとおかしい」と細かく指摘してくださいます。僕らはそれをそのまま受け入れる時もあれば、「先生、でも狙いとしてはここで由比の悔しさをにじませたいんです」とか食い下がる時もあります。すると先生しばし考え「わかりました。ならばこういう設定はどうですか」と代案を提示してくださいます。それを安達さんが再び登場人物の生の“言葉”としてつむいでいく…。

そんなやりとりを何往復か経て、4話の真知子の分娩については「後腹膜血腫」「ポンピング」などの専門的要素、医療的リアリティを盛り込んでいきました。
さらに演出の柴田と医療担当の鹿島が、想定したタイムテーブルに沿って「この時、榊は何をしているか。川井はどこにいるか。そこへ入って来た紗也子はどう動くか」「その時の真知子の容態は。数値は」といったことを1カット1カットのレベルで、名取先生や医療・看護指導の方たちと打合せし、詰めて行きました。

かくして撮影の日を迎えたこのシーン、美術部は90年代の緊急処置の用具から真知子さんの汗、パニックに陥る川井看護師の足元の血にいたるまで詳細に表現し、カメラマンはじめ技術部は人物たちの一瞬の表情も見逃さまいと、言わばドキュメンタリーのような緊張感で撮影に臨みました。俳優部たちの気迫は、言うまでもありません。そして、どのようなシーンになったかは、皆さんがご覧になった通りです。

maiko.png

ちなみに、由比が時折り「クロスマッチ無理か」「いまエンボリできる人いたかな・・」など専門的な言葉をつぶやいていたかと思います。ちなみに「エンボリできる人いたかな」とは、「搬送先の港南医大に、血腫の塞栓術をうまくできる医師いたかな」という意味です。ごめんなさい、ご覧になっていてさっぱり意味が分からなかったかと思いますが(僕もよく分かっていませんが)、思わず専門用語をつぶやく由比を通して、プロとしての雰囲気や緊迫感が出れば・・と思っています。

そして、
この第4話をもって、町田真知子役・マイコさんが撮り切りました。
そのクランクアップシーンは、意外にも(?)、冒頭の出産シーンでした。

 machiko.PNG

実は、当初は時間軸通りに撮影していくスケジュールを組んでいたのですが、スタッフたちが検討するうち「容態急変後のシーンに、予想以上に時間がかかりそうだ」となり、とは言え本物の赤ちゃんが絡む出産シーンをせかせか撮る訳にも行かないので、その分は後日あらためて構え直そう、ということになりました。

マイコさんにとっては言わばクランクアップが延びた形となってしまいましたが、マイコさん、撮り切った時に「真知子さんは悲しい結末となってしまったけれど、可愛い赤ちゃんと出会うシーンで撮影を終われて、今とっても幸せな気持ちです。本当にありがとうございました」と皆に挨拶。その素敵な笑顔は、第2話で悩めるアオイに微笑みかけた真知子さんそのものでした。

由比産婦人科の人たちは、町田真知子のことを決して忘れることはないだろう――

torikiri4.jpg

マイコさん、本当にお疲れさまでした! 

 

「透明なゆりかご」第5回は、「14歳の妊娠」。

院長・由比先生と、婦長・榊さんは、どのような思いで由比産婦人科を開業するにいたったのか――時計の針がさかのぼります。

17日(金)夜10時。ぜひご覧ください。

 

番組ホームぺージはこちら

 

投稿者:スタッフ | 投稿時間:22:37 | カテゴリ:透明なゆりかご

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