スタッフブログ

「列車コン」は、俳優にも取材を強いた? 演出・一木正恵から

「列車コン」は、俳優にも取材を強いた?

~人の揺らぎやもろさを全力応援する、ラブストーリーを作るために~

演出:一木正恵から

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<列車コンに賭ける思い>
「列車コン」には、地元の若者たちの復興に賭ける熱い志がこめられています。
三陸の美しさをアピールし、地ビールや岩手産ワイン、ホタテやさんまなどの地の恵みで精一杯参加者をもてなすこのイベントには、
「この町を愛してほしい できればこの町で恋をして 結婚して 命を育み、傷ついた町を よりたくましく輝く町にしよう その仲間になってほしい」。
そういう いじましいまでの願いが込められています。
  
彼らの哀しい顔は見たことがない。何度行っても、こぼれんばかりの笑顔で接してくれる。
私はまず彼らの志に応えて 大船渡の美しさを、笑顔を撮る。
「被災者」ではなく、逞しく笑っている「復興者」を描くんだと決めていました。
その代わりに 本当に何があったのかは 役者さん達の胸に刻んでもらいました。
あの時の風景、家族を亡くした哀しみ。残りの人生の全てを復興に捧げる若者の言葉。
通常は希なことですが、今回の役者さん達は 私たちスタッフが脚本作りやロケ地選びの際に必要な取材に 積極的に加わっています。
ここでロケをする意味を、踏ん張って笑う大人としての矜持を、心の奥底にしまい込んだ言葉にならない思いを、肌で感じ取って演じています。そのほんの一端をご紹介します!

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<松下奈緒さんと 大船渡市役所で>
私は彼らの哀しい顔を見たことがありませんでした。
松下奈緒さんと共に市役所の会議室で、あの日の本当のことを聞くまでは――。
奈緒さんとは「ゲゲゲの女房」で出会い、今回が三度目。
どんな環境でも何度でも、豊かな情感でどんどん登ってくる、逞しい表現者です。
地方出身者であり 阪神大震災を知っている彼女に、複雑で人間らしい感情に翻弄されながら、自分なりの答えを探っていく由香里をやってほしいと熱烈オファーしました。
彼女と共に 由香里の設定である市役所職員が、いかに自宅を戻らず、戻れぬまま市民に寄り添ったかを聞いた12月初めの日のことは忘れられません。
写真では、蝋燭の明かりで物資の分配を手配する市職員の姿を、雨の中津波で壊れた膨大な車を一台一台廃車処分する姿も見ました。でも肉声で聞くあの日の闇には怯みました。
消防団の務めのために海へ下って亡くなった仲間のこと。御遺体を洗い、安置所を管理し、遺族と向き合ったこと。
話させていることに軽く後悔を覚え、ちらりと奈緒ちゃんの横顔を見ました。
彼女の目は光っていたけど、一言も聞きもらすまいと強い意志を感じる大きな目で、
相手の目を必死に見ていた。自分の言葉で感想を述べ、さらにどんどん質問していった。
予定時刻を超えること2時間半。
最後に「今日の話を聞かなかったら、由香里をやることはできなかった。何をやるべきか、見えた気がします」と語った奈緒さん。
私は、奈緒ちゃんからにじみ出ている優しさと、賢さと、強くたくましい心根が、
本当に好きです。第2話で由香里が見せる笑顔と涙は、大船渡の方が乗り越えてきた試練を必死に手繰り寄せ 腹に落とした姿です。多くの方に見ていただきたいと思います。

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<安藤政信さんと 定食屋で>

昼飯時 カツカレーをかっこむおじさんと、大きな笑い声で華やぐおばちゃん。
庶民的な定食屋にすっと座っていた安藤政信さんの異物感が半端なかった11月中旬。
この日、東京からこの地に居住を移し、復興に尽くす若い方二人と会った。
情熱的に自らの活動を語る二人を、安藤さんはやはりまっすぐに見つめていた。
多忙な彼らとの時間は、昼食を取りながらの一時間だけ。残りわずかになった時、
一緒にいたYOUNG DAISさんが尋ねた。
「復興は抜きにして、自分のために今一番したいことは何ですか?」と。
彼らは「今はこの地域の復興しか考えられない。それが公私ともに僕らの願い」と答えた。
自分が東京でのんびりしていた間に、地域を守って仲間が死んだ。天国で再会した時、笑って会える自分でいたいと。
彼らが去った後、安藤さんがぼそっと言ったことは、この物語の根幹に関わることでした。「まだ本当のことは、二人の心の内にあるような気がする」。
人間の本当の姿、あって当然の欲望。聖と俗。あるべき姿と共に、だめな方も覗き 寄り添いたい。そうでなければ人を描く意味がないと、海を見ながら語りました。
安藤さんは被災直後の岩手沿岸で身体を使ってボランティアをしており、その時の風景をはっきりと記憶に刻んでいた。その上で、今の大船渡から、風や水の揺らぎを感じ取り、達也の姿に映しこもうとしていたと思います。
感覚がむき出しのまま歩いているような人。彼が体現した達也は、もろく揺らぐけど、人間味にあふれ 演じているとは思えない迫力があると 私は思っています。

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★次は松坂慶子さん、村上弘明さん、塩見三省さんとの「取材」を書かせていただきます。
良かったら、また読んでください。

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特集ドラマ「恋の三陸 列車コンで行こう!」

【放送予定】
2016年2月27日放送スタート [総合] 毎週土曜 よる10時(全3回)

【出演】
松下奈緒、安藤政信、小倉久寛、山崎静代、黒島結菜、浅香航大、玄理 、YOUNG DAIS、壇蜜、笛木優子、松岡茉優
塩見三省、村上弘明、松坂慶子 ほか
【作】清水有生
【音楽】瀬川英史
【演出】一木正恵
【制作統括】山本敏彦

「恋の三陸 列車コンで行こう!」ホームページはこちらから

投稿者:スタッフ | 投稿時間:13:51 | カテゴリ:恋の三陸 列車コンで行こう!

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