ファンタジー大河と銘打つ『精霊の守り人』は、その壮大な原作の世界をビジュアル化するセットデザインも見逃せません!シーズン2では『空想美術ファクトリー』と題し、美術担当・山口類児さんのインタビューを連載します。セットの見どころ、技術解説、スタッフしか知らない裏話など、「行ってみたくなる」情報が満載です。第1回はシーズン2のこだわりや苦心した点についてお話をうかがいました。
■原作のイメージから生まれた世界観を共有して。
『精霊の守り人』という世界観をみんなで共有するために、美術スタッフが資料をつくって「ベースはこんな感じ」というのを装飾、大道具、小道具などのスタッフにプレゼンして、イメージを整理しながら、キャッチボールをしてつくっていきます。絵コンテもちゃんと描きますよ。建物の設定は絵コンテに沿って、ここに天井をつけてとか、バルコニーの外の街もつくってとか、リアリティがあるものを描いてもらって、演出家を含めて打ち合わせを何十回も重ねました。シーズン2はセット数が多いので、世界観をキープしつつ、それぞれのシーンで個性を出して全体をまとめ上げるのが大変でしたね。
■ベースになったのは夢やロマンを感じる時代。
シーズン1で世界観は共有できていたので、各チーム内に「ここは手をかける」とか「これは時代的にありえない」という、レギュレーション(規制)ができていました。言葉にすると陳腐になってしまいそうですがファンタジーとして、人々が夢やロマンを感じる時代ということで、中国の三国時代から日本の平安時代の最初くらいまでをベースにしました。大きく物づくりのレベルは変わっていなくて、全部が手づくりで出来ているイメージ。産業革命的なものはなし、ガラスはなし、大量生産はできないよ、火薬もなしね、と確認しながら作業をしていました。きれいな装飾品とかは小道具のスタッフがその基準に沿って集めてきたものです。直線的なものよりも、手づくりの美しさやぬくもりにこだわりました。
■一番こだわったのはリアリティ。
僕たち美術スタッフが最もこだわったのは「リアリティ」。手をかけてエイジングするという、いわゆる「汚し」の作業もあれば、人々が大切にしているものだとしたら、きちんと装飾が施されているはずだから入れよう…とか、そういう小さなことを「これでもか」と積み重ねていきました。そうすることで、本来あり得ない時代設定と物語にリアリティが帯びてくるので、みんな頑張って、つくり込んでくれました。使い込んだ感じがあると、その世界に入っていくことができるんです。観てくれる人が守り人の世界に自然に入り込めるように、しらけさせないことが大事です。つくり物ぽくて、我が強すぎるデザインでは話について行けない。かといって既視感のあるものではなく目新しいものをつくりたかったので、その調合の具合が難しかったですね。
■人物デザインチームと火花を散らして。
リアリティと目新しさのさじかげんも難しい部分でしたが、衣装とセットとのバランスも気を配っているところです。例えば、柘植さん(人物デザイン監修)から、タルシュ帝国の衣装みたいな、まさに挑戦状のようなデザインがバーンときます(笑)。でも、それを受け入れる空間をつくることが美術の役割なので、空間と紛争が調和する親和性のあるデザインとして、世界観を成立させることに注力しました。
■ 実在しない世界を具現化するVFX。
リアリティと目新しさのさじかげんも難しい部分でしたが、衣装とセットとのバランスも気を配っているところです。例えば、柘植さん(人物デザイン監修)から、タルシュ帝国の衣装みたいな、まさに挑戦状のようなデザインがバーンときます(笑)。でも、それを受け入れる空間をつくることが美術の役割なので、空間と紛争が調和する親和性のあるデザインとして、世界観を成立させることに注力しました。
『精霊の守り人』アイデアの結晶 「アスラエフェクトのスゴ技に迫る!」
「精霊の守り人」番組公式ホームページ
http://nhk.jp/moribito
投稿者:スタッフ | 投稿時間:11:30 | カテゴリ:精霊の守り人