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あブログ

制作スタッフによる現場日誌

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「定規とコンパスだけ?」の衝撃

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「もん」を担当する上で調べた資料によると、江戸時代には上絵師(紋のデザイナー)が沢山いたにも係わらず、彼ら職人についての情報が全く残って無いそうです。

とはいえ、現代の絵師にもちゃんと日本古来の描き方引き継がれています。
西洋の数学的アプローチとは異なる日本の職人が考え出した作図方法は、職人の形への拘りが伺えます。

そして何よりも驚かされたのは使用する道具は「定規」と「コンパス」のみという事でした。
つまり「直線」と「円」だけで全ての紋章の形を作図出来るわけです。
日本の名も無き職人達の創造性に感動しました。 

私はアニメーション担当なので、上絵師さんの作図データを元にしてコンピュータを使って動かして行く作業になります。
まず私の手元に上絵師さん自らパソコンを使って作成されたデータが届きます。
いつもパソコンを使って映像を作っている身として親近感が湧いて嬉しくなりました。
コーナー冒頭に筆で作図している上絵師さんは、コンピュータの使い方を息子さんに教わったそうです。本当に勉強熱心ですね。 

アニメーションを組む上でいつも心がけていることは 
基準を決めて書かれた線と、感覚的に書かれた線を意識し、時間の間の取り方や必要な線が分かるように補助線の残し方を変えています。出来るだけ絵師さんの描き方に忠実にし、みている子供達に伝わればと試行錯誤しています。

一見、複雑そうな形でもシンプルな円を沢山描き、
円周の一部分を繋ぎ合わせて作図されていて毎度感動させられます。

番組をみた子供達が、筆箱に入っている自分の定規とコンパスで「紋章」を作るの事にチャレンジしてくれたら、ええのにな〜と妄想してます。

 

さて次の「紋章」は線と円だけで、
どのような美しい形が描かれるのでしょうか?お楽しみに!

 

時間を操るのは面白い!

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私は「デザインの観察」の編集を担当しています。

編集とは撮影した映像から重要な部分を選び分かりやすく繋げて行く作業です。このコーナーはテロップによる文字の説明もありませんし、ナレーションによる声の説明もありません。ですから撮影された映像素材を一つ一つ上手に順番を組み合わせないと観ている人が混乱したり飽きたりしてしまいます。最後まで観て貰うためには様々な仕掛けをしなければいけません。

観察のコーナーではたくさんのスタッフが集まり1日掛かりでスタジオ撮影されます。撮影素材の長さは平均すると約2時間あります。この2時間もある素材の中から重要な部分だけを繋ぎ合わせて約2分にまとめて行きます。

編集を始める前にNGカットを含めた全ての素材を観ながらグループに分類していきます。撮影現場でNGだと思っていたカットが使えたり、OKだと思っていたカットが実は使えなかったりする事もあります。ですから基本は全ての撮影素材を観なければ行けません。まさに観察です(笑)写真素材を含めた2時間の素材を頭の中に全てインプットしてから、映像の設計図である絵コンテを見返します。絵コンテ通りに行く予感がする時もありますし、うまくはまらないなーと思う時もあります。この判断は長年の経験から学んだことです。大まかな編集プランを頭に浮かべ、記憶した映像素材から曲のリズムに合わせてどのように組み上げて行くかを考え、試行錯誤して編集して行きます。

先ほど編集は時間の繋ぎ合わせだと言いました。異なる時間の素材を組み合わせ、分かりやすく且つ興味を湧かす気持ち良い編集をしなければなりません。それらの映像素材にはちょっとした時間の仕掛けがあります。

その仕掛けは撮影から始まります。このコーナーで使う仕掛けは大まかに3つです。

 

・  スーパースロー撮影

・  コマ撮り

・  タイムラプス

 

スーパースロー撮影とは1秒間に1000コマとか2000コマ以上で記録する撮影の事を言います。通常のテレビ撮影では1秒30コマで記録しています。ですから実世界で1秒の出来事を2000コマで記録して再生すると約66倍スローになり1分以上の映像になります。例えば水風船が割れる瞬間をゆっくりと観られるようにしてくれます。スーパースローは気持ち良いのでずーっと観ていられるのですが、同じ物を1分も見せるわけには行かないので2〜3秒の見せたい部分だけを切り出します。観察のコーナーでは木に穴を開けていく電動ドリルの高速な刃の動きや競輪選手が高速にペダルを漕ぐ足の筋肉の動きなどを見せるためにスーパースローを使用しています。

また通常の何気ないものも秒間60コマの2倍スローで撮影しています。一見無駄に思うかもしれませんが、通常スピードにするか2倍のスローにするかを編集時に選ぶことが出来るのです。

歩く動作やちょっとした表情を2倍のスローで観ると動きがよく見えて気持ち良いのです。

コマ撮りとは1コマ1コマ少しずつ物を動かして1枚1枚をカメラに記録し、後で全て並べると一連のアニメーションになっている撮影方法のことです。撮影者が自由に見せたい所を強調出来るので物の変化がよく分かります。

岡崎さん担当の「箱」の回では箱を自由自在に変化させるアニメーションが見所です。和菓子の種類がどんどん増えていくといった単純な映像から物がどんどん移り変わっていく複雑なアニメーションまで作れるのがコマ撮りです。

タイムラプスとは一定の時間をあけて動きや変化を1枚ずつカメラに撮影し、長い時間を短縮して記録する撮影方法です。例えば、花が咲いていく様子や夜空の星の動きなど長時間観ないと変化が分からないような物に適しています。観察では「チョコレート」が溶けていくところで使用されています。「デザインの見学」の「あかり」の回では全編タイムラプスを使用しています。約6万枚もの写真素材から編集しました。撮影者平本さんの力作ですね(笑)

このように時間を伸ばしたり間引いたりして人間の目では体験出来ない時間を撮影で作り、編集でまとめているのです。

さらに編集作業でも時間を操作しています。それは「早送り」です。

和菓子細工は時間がかかる作業なので早回しを使っています。ただ単に早回ししても綺麗な動作に見えないので、ポイントを探し出して細かくカットを分割してから早送りしています。さらに和菓子にハサミを入れるタイミングと曲のリズムを合わせて単調な作業を楽しくみせる工夫をしています。5秒のカットに1時間以上掛けることもあるのです。楽しいから良いのですが・・・(笑)

このように撮影と編集で時間を操作して映像を作って行きます。映像にはリズムが必要です。テーマ曲のリズムに合うように調整して行くことで、より観やすく変化するのはいつも不思議で気持ち良いです。

テレビドラマなどでは、昼の街のカットの後に1度夕日を挟んでから夜の屋内カットに繋げるといった時間経過を表現するカットが入っている場合がよくあります。いつも何気なく観ている映像を「観察」してみて下さい。そこには時間を操作する技術がたくさん詰まっているはずです。