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ことばのないほうの世界

「つくる」をつくっている山中です。

「つくる」コーナーではタイトルのほかにことばは使っていません。
ナレーションやセリフ、字幕をふつうは使いますよね。
なぜ使わないとおもいますか?

わたしたちは日常でことばをとてもよく使います。
人になにかを伝えるときに電話やメールが便利ですよね。
「口で言わなきゃ伝わんないでしょ!」なんてお母さんによく叱られます。
「はっきり口で言ってくれなきゃわからない!」なんて恋人にも言われます。

たしかにことばはなにかを的確に伝えるには便利なものです。
でもはたしてことばがなければあまり伝わらないのでしょうか?

「つくる」のコーナーを観るとその答えがわかると思います。
もしことばがないと、人はことば以外のなにかを受け取ろうとします。
たとえば…
「石をけずるときはこんな音がするのか」
「おにいさんの動きは無駄がないな」
「職人さんの指が曲がっているな」
「ざぶとんがボロボロだ。何十年もここで作業しているんだな」

ことばがなくてもとても多くのことを伝えることができるのです。
むしろことばがないほうがより感覚的に知ることができます。人は、感覚的に知ったことについてはとても長く記憶します。好きな曲のタイトルは忘れちゃうんだけど、その曲のフレーズはよく憶えているというアレですね。

余談ですが、その昔、「表情」をいっさい使わず、劇映画をつくった人がいました。
アキ・カウリスマキという映画監督さんです。

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この人の「街のあかり」という映画では、登場人物は全員ずっと無表情です(他の作品もそうですが)。ふつう映画では、登場人物が泣いたり笑ったり、切ない表情をしたりして、その人の気持ちが分かるのですが、この映画ではまったく表情がありません。
だから、その人物の気持ちがわからないか、と言われるとそんなことはけっしてなく、むしろその微妙な気持ちがとてもよく伝わってくるから不思議です。

ことばがないほうがよく伝わる…
そう考えてもう一度世界を観てみると、少し違って見えてくるかもしれません。

と、こういうふうに書きますと「じゃあ、これからはあまり語らず、無口でいこう。ハードボイルド。言わぬが花だ」と言い出す人がいますが、わたしの過去を考えますに家族・恋人・友人関係でうまくいったためしがありません(特に恋人)。時にはことばにすることも大切です。