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制作スタッフによる現場日誌

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もーん

DSC00897.JPG
「もん」撮影現場。描いているのは紋章上絵師・波戸場承龍さん。

「もん」の構成を担当しているディレクターの池田です。
「もん」は、日本の伝統的な紋様がグラフィカルに描かれる様子を、
渡辺篤史さんのダンディな声で実況していただくコーナーなのですが、
もともとは完成した紋をひたすら愛でる、
という会話劇ベースのコーナーを作ろうとしていました。
作図過程を見せることはプランになかったんです。
ですが、取材を進めるうちに、絵師の方々が非常にシステマチックに図形を
作図していることが分かってきて、その面白さを伝えるべく構成に組み入れました。

紋の形というのは、その多くが一つの円の中に収まるように表されます。
円の中に線を引いて分割したり、別の円を足したりして紋を作るわけなんですが、
描くにあたって、ビシッとした基準と、ゆるっとした基準、ふた通りあるんですね。
ビシッとした基準はどういうものかというと、

「円を等間隔に分割して、さらにその分割線に内接する円を配置する」
といった具合に、明確な基準が存在するパート。
ゆるっとした基準は、
「花の雌しべの大きさ」「花びらの曲線の曲がり具合」といった、ディテールを描く際に
適用されます。配置する場所もサイズも紋章上絵師(紋章を専門に描く職人さん)の腕に
委ねられるパートです。

法則性のある形と、”あそび”のある形。
両者の絶妙なバランスの中で美しい形を作るのが、紋の面白い所なのだと
ご出演いただいている波戸場承龍さんは仰っていました。

ひとたび「もん」を作り始めると、あらゆるところで
様々な紋が目に入ってくるようになります。
家紋だけでなく、刺し子などの伝統紋様まで視線を広げれば、
居酒屋の軒先、神社の手水場、町工場のシャッター、
宣伝ののぼり、純喫茶の装飾、などなど、
町を歩けば紋にぶつかるぐらいの勢いで見に飛び込んで来るようになりました。
市町村区のマークも、紋や紋の応用形が用いられていることがあります。

今ではあまりいい意味では使われませんが、
「紋切り型」ということばの語源だったりもします。
「決まり切ったやり方」=「頭の固い奴」という意味に転じたのですが、
手順を踏んで形を作る訓練は、ものの形を認識する上でもとても大切なように思います。

あ、ちなみに、家紋って代々受け継ぐものだと思っている人が多いと思いますが、
自由に決めてしまってもいいそうです。オリジナルもOK。
どんな形があるの?と疑問に思われた方は、墓地に行ってみてください。
本当にいろんな種類の紋に出会えます。
海外の方が家紋を作りに来るケースもあるそうで、
オリンピックが近づくにつれて、ますます注目されるようになるかも知れませんね。

bunmawashi.png
紋章上絵師の仕事道具「ぶんまわし」。
名前はちょっと物騒ですが、とても繊細な道具で、
紋章上絵師の腕に応える大切な相棒です。
鉛筆の代わりに筆を取り付けて使用する、竹製のコンパスです。
筆なので、当然円を描く途中で墨を付け足さないといけないのですが、
細かいディテールを描き分けたり、竹のしなりを利用して円の半径を微調整するなど、
かゆい所に手が届くデザインになっていたりします。