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制作スタッフによる現場日誌

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FONT BAR

例えばウイスキーバーでウイスキーを注文する時、スコッチ、アイリッシュ、ジャパニーズなど、ざっくりとしたジャンル分けは何となく分かりますが、仔細に見ていくと、素人にはなかなか違いが分かりません。
フォントの場合、明朝体、ゴシック体など、ざっくりとした書体のジャンルは理解していても、さらに似たようなフォントの微差の領域に話が及ぶと、どれも同じに見えてしまいます。

お酒の場合、「マスター」がいることで、お酒がよりいっそうおいしくなることがあります。
卓越した知識と話術で、繊細な味の違いを解説し、頼んだ客が、自分のイメージにぴったりのお酒だと感じることができるからです。
フォントはお酒ではありませんが、微差を楽しむ、という点では共通しています。どこか嗜好品に近い、マニア心をくすぐる何かがあるのかも知れません。日常の仕事や友達にメールを送るような場面で、自分の気分や伝えたい気持ち、内容に応じてフォントを使い分けられたら、とても粋だし、素敵ですよね。

もしも、バーで提供するのがお酒でなくフォントだったら。マスターが超フォントに詳しかったら。そんな妄想の果てに実現したのが「FONT BAR」の世界観です。抽象的なSF空間は、アニメを作ったミズヒロさんの素晴らしいアイデアによるものです。

また、フォントの取材にあたっては、両見英世さんはじめ、タイプフェイスデザイナーの方々に大変お世話になりました。実ははじめ、「初恋の味」を明朝体で表現する、というお題を設定していたのですが、「游明朝は学級委員長」「筑紫明朝は芸術肌」「石井オールド明朝はタートルネックがよく似合う」などなど、私の想像をはるかに超える濃密なフォントークを繰り広げていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

最後に、NHKには、「NHK明朝」と「NHKゴシック」なるものが存在します。あまり私も使用したことがありませんが、もし見つけたら密かに萌えていただければと思います。
 

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ディレクター 池田拓郎

Eテレ「デザインあ おとなスペシャル」
再放送 2018年1月6日(土)前0:30~*5日深夜 

モノの向こう側を想う

「おとなスペシャル」の「デザインの観察」では、使い終わったモノを、資源としてもう一度使う方法=リサイクルを取りあげました。コーナーの最後にOECD加盟国のリサイクル率を示しましたが、日本は25位と決して高くありません。

どうすれば、リサイクル率を向上させることができるのでしょうか?

そのアンサーの一つが、番組で放送した「捨てたあとを考える」デザインの数々。「環境配慮設計」という名前で呼ばれているものの一つです。
番組中で登場したした、素材を統一する・簡単分解できるといった視点で製造された商品のほか、環境に優しい素材を使ったり、だるまのようにリサイクル素材を用いてものづくりをする、などといった観点から商品を設計します。ゴミを捨てる段階ではなく、生産の段階からゴミになったときを想像してアプローチをすることで、リサイクル不可=焼却処理・埋立となるモノを減らす。モノの循環そのものをデザインすることの重要性を伝えたいと思い、構成に組み込みました。

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製品の評価のしかたにもこれまでとは異なる視点が入ってきています。「性能」と同じぐらい高い水準で、「ライフサイクルアセスメント」が重要視されています。

一つの商品を、原材料の調達から、生産・流通・使用・廃棄に至るまで、モノのライフサイクルを、「どんな原料を使うか」「環境への影響はどうか」「労働力の搾取はないか」といった視点から評価をする手法です。製品がどのような経緯を辿って店頭に並んでいるのかを、大々的に公表している企業も出てきています。
ライフサイクルの視点を持って消費を行うことが、広くは社会貢献につながることを指し、最近は「エシカル(=倫理的な)消費」と言う言葉なんかもあったりします。

モノは、私達の手を離れたら、「資源」になります。私たちは、そのモノを所有する一時的な権利をお金を使って行使しているに過ぎません。
使い終えたモノは再び社会へと還元する必要があります。たとえば、家に眠っている昔の携帯などには、無数のレアメタルが眠っています。現在は母数があまりに少なく、採算が取れないためリサイクルの対象になっていませんが、一人ひとりが意識を変えることで、リサイクルの土俵に乗ります。レアメタルを自国で生産できるようになると、アフリカやインド、中国などで行われている、劣悪環境下での採掘や、基盤解体に割かれる児童労働を削減することにつながると考えられています。

生産者と消費者が、お互いにほんの少し、モノの向こう側を想像する。これだけで、リサイクル率はぐいっと上がると言われます。

取材を通じて、私は普段の生活態度がすっかり変わってしまいました。


ディレクター 池田拓郎

 「デザインあ おとなスペシャル」
再放送 2018年1月6日(土)前0:30~ *5(金)深夜
Eテレ

映像手法と目的

 

「デザインあ」の中には様々なコーナーがあります。
映像手法でざっくり分けると、「実写」「イラスト」「アニメーション」に分かれています。

 それぞれのコーナーの演出方法はなんとなく決まっているのではなく、
はっきりとした目的に沿ってつくっていたりします。(全部ではありませんが。)

まず、「実写」ベースのコーナー。
モノの構造やディテールに注目させる、
人の表情やモノの外側にある情報(光、質感など)まで子細に写し出すことで
リアリティを生み出す、などの効果を狙って作っています。
『デザインの観察』『つくる』『デザインの人』『考えていない』『うらおもて』など。

次に、「イラスト」ベースのコーナー。余分な情報をそぎ落とし、
現実の中から伝えるべき情報を選択して、
一目で分かる、伝わるようにすることができます。
『ぬきさし』『アンドゥトロワ』『チーム○○』など。

そして「アニメーション」。実現することが難しい空間や、架空のモノを表現することができます。
やたら間隔の狭い階段を瞬時に生み出すこともできるし(『ちょうどいい』)、
階数ボタンが多すぎる不便なエレベーターも作れます。(『うごきのデザイン』)
ややこしいモノの製造工程をシンプルに伝えるのにも適しています。(『のこり』)
「~だったりして」を映像に落とし込める所がアニメの強みです。

実際のコーナーは、こうした手法ごとの利点を組み合わせ、
複合的に作っているものもあります。

映像を作る時、撮影手法の面白さや、ビジュアル表現の斬新さを優先して考えるのも大事ですが、「そもそも何を伝えたいんだっけ?」という視点に立ち戻って表現手法を練ることも、「デザインあ」で大切にしていることの一つです。

 

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画像は、『デザイン問答・偉人編』から、ミズヒロさんが描いたこども時代のガウディ、ヤコブセン、イサム・ノグチ、シャネル。今は亡き偉人たちのこども時代を動きで伝えることができるというのも、アニメーションの魅力の一つですね。みんな良い表情してます。

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普通はアニメだろ!という所をあえて実写&CGでやってのけて強烈なインパクトを
与える『思ってたんとちがう』。毎回斜め上のオチが待ち受けています。

もーん

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「もん」撮影現場。描いているのは紋章上絵師・波戸場承龍さん。

「もん」の構成を担当しているディレクターの池田です。
「もん」は、日本の伝統的な紋様がグラフィカルに描かれる様子を、
渡辺篤史さんのダンディな声で実況していただくコーナーなのですが、
もともとは完成した紋をひたすら愛でる、
という会話劇ベースのコーナーを作ろうとしていました。
作図過程を見せることはプランになかったんです。
ですが、取材を進めるうちに、絵師の方々が非常にシステマチックに図形を
作図していることが分かってきて、その面白さを伝えるべく構成に組み入れました。

紋の形というのは、その多くが一つの円の中に収まるように表されます。
円の中に線を引いて分割したり、別の円を足したりして紋を作るわけなんですが、
描くにあたって、ビシッとした基準と、ゆるっとした基準、ふた通りあるんですね。
ビシッとした基準はどういうものかというと、

「円を等間隔に分割して、さらにその分割線に内接する円を配置する」
といった具合に、明確な基準が存在するパート。
ゆるっとした基準は、
「花の雌しべの大きさ」「花びらの曲線の曲がり具合」といった、ディテールを描く際に
適用されます。配置する場所もサイズも紋章上絵師(紋章を専門に描く職人さん)の腕に
委ねられるパートです。

法則性のある形と、”あそび”のある形。
両者の絶妙なバランスの中で美しい形を作るのが、紋の面白い所なのだと
ご出演いただいている波戸場承龍さんは仰っていました。

ひとたび「もん」を作り始めると、あらゆるところで
様々な紋が目に入ってくるようになります。
家紋だけでなく、刺し子などの伝統紋様まで視線を広げれば、
居酒屋の軒先、神社の手水場、町工場のシャッター、
宣伝ののぼり、純喫茶の装飾、などなど、
町を歩けば紋にぶつかるぐらいの勢いで見に飛び込んで来るようになりました。
市町村区のマークも、紋や紋の応用形が用いられていることがあります。

今ではあまりいい意味では使われませんが、
「紋切り型」ということばの語源だったりもします。
「決まり切ったやり方」=「頭の固い奴」という意味に転じたのですが、
手順を踏んで形を作る訓練は、ものの形を認識する上でもとても大切なように思います。

あ、ちなみに、家紋って代々受け継ぐものだと思っている人が多いと思いますが、
自由に決めてしまってもいいそうです。オリジナルもOK。
どんな形があるの?と疑問に思われた方は、墓地に行ってみてください。
本当にいろんな種類の紋に出会えます。
海外の方が家紋を作りに来るケースもあるそうで、
オリンピックが近づくにつれて、ますます注目されるようになるかも知れませんね。

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紋章上絵師の仕事道具「ぶんまわし」。
名前はちょっと物騒ですが、とても繊細な道具で、
紋章上絵師の腕に応える大切な相棒です。
鉛筆の代わりに筆を取り付けて使用する、竹製のコンパスです。
筆なので、当然円を描く途中で墨を付け足さないといけないのですが、
細かいディテールを描き分けたり、竹のしなりを利用して円の半径を微調整するなど、
かゆい所に手が届くデザインになっていたりします。 

 

5分版・オープニング撮影風景

久々のブログ更新です。

年度が変わり、新コーナーが次々と登場している「デザインあ」ですが、「5分版」も地味に頑張っています。お気づきの方はかなりの通だと思いますが、今年度のオープニング映像に動画が混じっている回がちょいちょい出てきます。しかもハイスピードで撮影してます。凝ってます!そんな涙ぐましい成果の一つとして「ひねる」の撮影風景をお届けします。

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風呂場で大の男がよってたかって、被写体に必死にカメラを向けています。

カメラの石田さんは、バスタブにしがみつきながら懸命にカメラ位置にたどり着きました。男達のまなざしを一身に浴びている肝心の被写体は、お風呂の蛇口。

真上から撮影しないと、ひねりがきいた画にならないんですね。

 

努力の甲斐あって、最後はとても気持ちのよいひねりが揃いました。

放送は4月15日(水)7:25~。是非ご覧下さい!

 

テロップのうしろにもご注目!

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毎回、第一線で活躍されているデザイナーの方を訪ねて、デザインマインドを磨くために大切だと思うことを語っていただく「デザインの人」。こどもの声で決まった質問をして、それにデザイナーの方が答える、という演出方法をとっています。

こどもの声でデザイナーのみなさんに質問をする時、画面には質問の内容がテロップされるのですが、その背景の映像は、その方のデザインに対する姿勢や思考を端的に表したものだったり、制作風景を映した貴重な映像だったりします。

例えば写真は、6月28日放送されるフードディレクターの奥村文絵さんとの打合せ風景です。
なぜかテーブルに土鍋がでんと置いてあります。
奥村さんの事務所は、打合せのための部屋が一つと、仕事部屋が一つの、小さな空間ですが、奥に台所があります。きれいなシステムキッチン、というよりも、もっとぴりっと引き締まる雰囲気の「台所」です。ここで日常的に、スタッフ4人が持ち回りで、昆布やかつおなど、素材からしっかり出汁をひいて、お味噌汁、和え物、漬け物などを作り、みんなで昼食をとられています。土鍋は、そんな話をしている中で出てきたものです。最終的に、今回のテロップの背景はどんな映像になったのか?そしてなぜそこまで手間をかけてご飯をつくるのか?そこには深~いワケが…
(あとは放送をご覧ください!)
番組のコーナーは3分前後しかありませんので、デザイナーの仕事を語るには不十分です。
ですが、デザイナーのみなさんの言葉や、テロップの背景に「あ」と思うことがあれば、是非その方の仕事を深く掘り下げてみて下さい。