シリーズ ディープオーシャン「超深海 地球最深(フルデプス)への挑戦」

未知のフロンティアにすむモンスターに迫る!

2017年11月28日、「マリアナスネイルフィッシュ」に学名がつきました。
Pseudoliparis swirei Gerringer and Linley という名前です。“シュードリパリス スワイヤーアイ ゲリンジャー アンド リンレイ”と発音します。

Pseudoliparis が属名、swirei が種名、Gerringer and Linley が命名した人の名前です。

Gerringer さんは米国ハワイ大学、Linleyさんは英国アバディーン大学で学位を取った気鋭の深海生物学者です。二人とも、東京海洋大学神鷹丸のFISH2017航海に参加していました。

なが~い名前の由来

学名の由来についてもう少し説明します。
Pseudoliparis (シュードリパリス)属は、日本海溝域の深海に住むクサウオの仲間について命名された属名です。
千島海溝、日本海溝からマリアナ海溝にかけての超深海に分布しています。和名はシンカイクサウオです。今回記載された「マリアナスネイルフィッシュ」は、この属の特徴を備えています。マリアナ海溝南端部、チャレンジャー海淵からシレナ海淵にかけて分布する個体群は、形態的にも遺伝的にも一つの系統にまとまり、日本海溝の種とは異なるので、今回、新種として記載されたのです。

種名のswirei (スワイヤーアイ)は、チャレンジャー号の測深担当士官、Herbert Swire 中尉に由来します。チャレンジャー号は世界周航の途中、1875年にマリアナ海溝で8,200mという、その当時、世界で最も深い測深記録を得ています。「記録を得た場所が世界の最深部チャレンジャー海淵であること、8,200mは、魚類の理論的な生息限界水深に近く、また、マリアナスネイルフィッシュの生息分布の限界でもあることなど、いろいろ繋がるので名付けたのです」と、命名者の一人Gerringerさんが教えてくれました。

超深海の生物の進化のシナリオがひも解かれる?

論文によると、北半球の超深海魚類であるPseudoliparis 属は、南半球のNotpliparis 属とは、形態的にも遺伝的にも異なった系統になるとのことです。

また、新種P. swirei は、マリアナ海溝チャレンジャー海淵域に特化して分布しています。一連の研究は、超深海に生きる魚たちの生態や進化のシナリオを語ってくれているように思います。

文 : 東京海洋大学 特任教授 北里洋さん

先端的な海洋観測機器を用いつつ海洋生物、とくに有孔虫類の起源、進化そして生態に関する研究を行っている。日本海溝、マリアナ海溝、トンガ・ケルマディック海溝、南大西洋など世界中の深海を研究対象としているが、日本近海ではおもに相模湾をモデル海域としている。
今年一月、世界一の深さを誇るマリアナ海溝の深海底調査航海/FISH2017の首席研究者として、国際合同調査チームをまとめあげ、大きな成果をあげた。