シリーズ ディープオーシャン「超深海 地球最深(フルデプス)への挑戦」

取材記「超深海に挑む」 廣瀬 学(NHKディレクター)

マリアナ海上にかかった虹。この下に世界一深い海がある。

今回、番組の舞台となったのは、「超深海」と呼ばれる、地球の海全体のうち、2パーセントにも満たない場所です。中でも、世界で最も深い海、マリアナ海溝は、水深10920メートル。現在まで、この海の底にたどり着いた人間がわずか3人しないないという、地球上で最も手つかずの世界と言えます。それだけに、超深海は未だに謎だらけです。そこにはどんな生き物がいるのか?そして、どうやって生きているのでしょうか?今回は、そうした謎に迫りました。

「ランダー」が落とされるスポットは研究者たちによって地形や海流のデータから導き出された。何が写っているのか…。結果がわかるのは海底から回収された後だ。

実際に超深海の撮影を始めようとして、そこがいかに遠い場所なのか思い知らされました。なんと言っても現場へ取材班(人間)が行くことが出来ないのです。これまで放送された、発光生物や南極の回では、有人潜水艇を使うことが出来ました。ところが、水深1万メートルに潜ることが出来る潜水艇は、世界中どこを探しても存在しません。そこで登場したのが、タイマー制御のカメラを搭載した「ランダー」と呼ばれる観測機器です。船から海底めがけて落下させ、超深海の生き物を撮影しようという試みです。ランダーでの撮影は、賭けです。何が写っているのかは、ランダーを回収してみないと全くわかりません。研究者と一緒に映像を確認する作業は、はらはらどきどきの瞬間でした。さらに今回は、新たに開発された無人探査機「UROV11K」を用いて、リアルタイムでマリアナ海溝の海底を観察・撮影するという意欲的な試みも行われました。

早朝4時、海へ潜る無人探査機「UROV11K」。「ランダー」よりも数倍大きく、セッティングも大掛かりだ。海底の映像をリアルタイムで送ってくる。

超深海というと、生物の全くいない世界をイメージする方も多いと思います。しかし実際には、想像以上にたくさんの生き物がいて、しかも彼らは超深海というフロンティアに進出してきたパイオニアだということも分かってきました。知られざる超深海の世界、ぜひ番組で味わってください。