シリーズ ディープオーシャン「南極 深海に巨大生物を見た」

取材記 「南極の深海に挑む」 薦田昌純(NHKディレクター)

宇宙よりも未知だといわれる深海。その中でも、南極の深海は最も調査が進んでいない場所です。その理由は、遠く、寒いというだけではありません。
南極に到着してまず目に飛び込むのは、自分が小人になった錯覚を覚えるほど巨大にそそり立つ氷山。その下には、さらに10倍もの大きさの氷が沈んでいるといいます。その氷山が、風や波で激しく動き、調査隊を翻弄します。南極の海は地球の自転の影響で、「世界一荒れる」海なのです。風も波も高く、天気はめまぐるしく変わりました。時折、遠くのほうでは地鳴りのように氷山が崩れる音が聞こえ、恐怖と感動が合わさったような不思議な感覚に襲われます。
航海中は限られた気象情報と目の前の天気を睨みながら朝から晩まで運航計画を練り直す日々。綿密な潜行計画を立てても、現場に行ってみると、氷山に行く手を阻まれたこともしばしばです。

そんな困難なコンディションの中でも、毎日発見がありました。血液の透明な魚に、海を埋め尽くす大群のオキアミ、そして目を疑う長さの巨大クラゲ。調査に参加してくれた科学者がつぶやいた、「深海は小説より奇なり」という言葉が、まさにぴったり当てはまる世界でした。
2つの潜水艇には、合計10台に及ぶカメラを仕込み、調査の状況を克明に記録しました。苦労の末に撮影できた映像は、NHK深海プロジェクト史上、最も多様で高密度な生きものの世界です。ほとんどが世界初撮影という生きものの数々は、世界中の海を探検してきた潜水艇パイロットも、数十年の南極調査を続けてきた科学者も驚愕させました。前人未到の大冒険を、皆さんも是非味わってみてください。