NEWS

ニホンザルも協力できる 実験で初確認

2019.11.05 :

1人ではできないことも「せーの」で息を合わせて取り組めばうまくいく。「仲間と協力すること」ができるニホンザルがいることが、大阪大学の実験で明らかになりました。

 

え?ニホンザルならいつも温泉でお互い毛繕いして、仲よく協力しているじゃないかって?

 

いえ、ニホンザルの世界は厳しい上下関係のもと、ケンカが絶えない世界だとされているのです。

 

そんなニホンザルが示した「協力」とはいったいどのようなものなのでしょうか。

ニホンザルは”協力”できない!?

実験を行ったのは、大阪大学大学院人間科学研究科のグループです。
ニホンザルは群れの中の上下関係が厳格な動物です。エサを巡って周囲を激しく攻撃することでも知られています。
研究グループによると、このような状態は、霊長類学的に、周囲との「寛容性」が低いとみなされ、これまでニホンザルは、個体どうしが協力して行動することはないと考えられてきました。

ニホンザルが毛繕いをし合っている様子が見られることはありますが、ほとんどが母と娘という、限られた関係のサルだということです。

なぜか仲よし 淡路島のサルで実験開始

そんなニホンザルですが、なぜかお互いの仲がよいことで知られるのが、兵庫県の淡路島のサルたちです。

そこで研究グループは、この群れを対象に、サルどうしが協力できるか試す実験を行いました。

実験は、ロープを引っ張るとエサを獲得できるという装置を使って行いました。

この装置には、ちょっとした仕掛けがあります。
片方の端だけを引っ張ると、ロープが抜けてエサを獲得することはできません。
しかし、2匹のサルがロープの両端を同時に引っ張ると、エサを獲得することができます。

実際の実験の様子を撮影した動画がこちらです。
エサは目の前に見えています。すぐにでもエサがほしい。

ニホンザルはエサを巡って激しく周囲を攻撃することもあります。

できれば独り占めしたい。

そんな状況でも、もう1匹が来るのを待ったり、息を合わせて同時にロープを引っ張ったりといった協力をすることはできるのでしょうか。

協力実験の結果は?

実験の結果、挑戦した回数は1488回で、このうち2匹が協力してエサを獲得できたのは874回でした。率にして58.7%に上りました。

この淡路島のサルの群れは、淡路島モンキーセンターが管理し、血縁関係を記録しています。調べると、母娘の関係だけでなく、血縁関係のないサルどうしでも協力していました。

仲間が来るのを待って、ロープを引っ張るサルもいました。

その様子を捉えた動画がこちらです。
一方、同じ実験を、岡山県真庭市に生息するケンカの多い一般的なニホンザルの群れで行うと、198回、挑戦して、成功したのは2回。協力できた割合はわずか1%にとどまりました。

研究グループによりますと、ニホンザルの研究は、70年以上、各地で行われてきましたが、サルどうしが協力できることが確認されたのは初めてだということです。
研究を行った大阪大学大学院人間科学研究科の貝ヶ石優さんは、この結果をみたとき、驚きを禁じ得なかったといいます。
「サルが協力に成功したときはとても驚いて、思わず声を上げてしまいました。なぜこの群れだけが協力できるのか、さらに調べたり、逆にどのような条件なら協力できないのかといったことも調べたりして、人間社会の成り立ちの分析にまでつなげたいです」

取材を終えて

「協力できる」といっても、どの程度のものなのだろうか?そんな疑問を抱きながらスタートした取材でしたが、2匹で同時にロープを引っ張るサルの姿に癒やされました。

なぜ、淡路島のサルたちだけが、これだけ協力できるのか。70年を超えるニホンザルの研究に一石を投じたというサルの群れをめぐる今後の研究をこれからも追跡したいと思います。

※掲載された論文はこちらから(※NHKサイトを離れます)
https://link.springer.com/article/10.1007/s10329-019-00742-z

大阪放送局記者

三谷維摩

平成21年入局。徳島放送局、金沢放送局を経て、平成29年から大阪放送局で医療、科学、文化を担当。最先端の研究や上方ならではのお笑い文化など幅広く取材。

三谷維摩記者の記事一覧へ

記事の内容は作成当時のものです

NEWS一覧に戻る

関連記事