COLUMN

本格ブーム到来 広がるサウナ文化

2019.09.30 :

今ちまたで、“サウナ”がブームになっているのを知っていますか?ここ数年、若い世代や女性にもその魅力が広がり、サウナにはまる人たち=通称「サウナー」が増えているんです。9月には、自然の中で楽しむ「サウナフェス」も開催されるなど、これまでにない楽しみ方も広がっています。拡大するサウナ・カルチャー。その最前線を、サウナー記者が取材しました。

 

(科学文化部・河合哲朗 ※サウナ歴8年)

老若男女が「ととのう」時代!

「サウナがブーム!」と始めましたが、そもそもサウナに行かない人にとってはあまりぴんとこない話かも知れません。まずは、昨今のサウナの盛り上がりを解説したいと思います。

「日本サウナ・スパ協会」の事務局長・若林幹夫さんによると、今のブームの火付け役となったのが、マンガ家・タナカカツキさんによるサウナ体験記『サ道』でした(2011年にエッセイ版、2016年に漫画版が刊行)。突然サウナの魅力にはまった著者の実体験をコミカルに描いたものなんですが、この本が画期的だったのが、サウナそのものよりもその後の“水風呂”にスポットをあてた点です。「サウナ」→「水風呂」→「休憩」をワンセットとして、これを複数回繰り返す“交互浴”という入浴法をわかりやすく解説したことで、サウナの気持ちよさが読者に浸透。サウナ後の心身のリラックス状態を表す「ととのう」ということばと共に、新世代の「サウナー」の輪が広がっていったのです。
“ととのう”ためには水風呂の設定温度も重要。17℃以下だとうれしい。
サウナを楽しむ環境も整えられてきました。WEB上では、全国のサウナ施設の情報をまとめたポータルサイトも誕生し、これまでよほどのサウナ通しか知らなかったような各地の人気サウナを巡る“聖地巡礼”を楽しむサウナーも今では珍しくありません。

また、最近は女性サウナーの増加を受けて、カプセルホテル併設型などの男性専用サウナ施設で、“女性開放デー”などのイベントを開催するケースも増えているんです。

さらに、“サウナ×仕事”の相乗効果を図る動きもあります。企業の間では、サウナによるコミュニケーションの活性化を目的にした「サウナ部」が次々と誕生していて、タオル一枚の裸のつきあいが年次や部署も越えた新しい交流を生み、ビジネスアイデアの創出にもつながっているといいます。「サウナ部」は2016年に「コクヨ」や「日本航空」などの数社から始まった取り組みでしたが、今ではおよそ40社にまで広がり、企業や業界の枠を越えた交流も生まれているんです。

サウナーが憧れる、本場のサウナ文化

そんなサウナーたちが、「いつかは体験したい」と憧れのまなざしを向けるのが、本場・フィンランドのサウナです。9月から公開されているフィンランドのドキュメンタリー映画『サウナのあるところ』では、そんな本場のサウナ文化をかいま見ることができます。
シラカバの葉を束ねた「ヴィヒタ」。体に打ちつけ、血行促進と香りを楽しむ。(c)2010 Oktober Oy.
先日、この映画の監督が来日していた時に直接話を聞く機会があったのですが、日本のサウナ文化との違いに驚きの連続でした。

なんでもフィンランドでは、人口550万人に対して300万(!)ものサウナが存在していて、自宅のプライベートサウナはもちろん、街なかの公衆サウナや、学校や会社にサウナが併設されていることも一般的なんだそう。一昔前は出産や死後の清めもサウナの中で行っていたほど人生に密接に関わる存在で、今でも「サウナでは教会にいるような気持ちで」という金言があるそうです。
多くの人が田舎の湖畔にコテージを持つ。夏にはここでサウナを楽しむ。(c)2010 Oktober Oy.
さらに、豊かな森や湖に恵まれたフィンランドでは、湖畔に建てられたコテージが数多く存在していて、自然の空気の中でゆったりとサウナを楽しむ習慣があります。サウナは、ただ汗をかく場所ではなくて、心を落ち着かせたい時や、誰かと語り合いたいときに足を運ぶ場所で、ライフスタイルに欠かせない存在なんだといいます。
サウナのあとは、大自然の湖が水風呂になる。(c)2010 Oktober Oy.

自然の中で楽しむ“サウナフェス”も開催!

長野県小海町の湖畔「サウナフェスジャパン」の会場
そんな本場流のサウナの楽しみ方が、日本でも広がりつつあります。
9月21日からの3連休、長野県小海町の湖畔で3日間にわたって開かれた「サウナフェスジャパン」。八ヶ岳を望むフィンランドさながらの自然の中で本格的なサウナを楽しもうというイベントで、車で牽引できるモバイル型やテント型など、19ものサウナが集結しました。
このイベント、もともとは5年ほど前にタナカカツキさんらサウナ愛好家が仲間内で始めた手作りイベントでしたが、ブームと共に参加者の輪が広がり、ことしは3日間で600人のチケットに3500人以上の応募が殺到するほどの人気ぶりとなりました。

会場では若い世代や女性の姿が多く見られ、サウナのあとはそのまま天然の水風呂(=湖)に飛び込む人も多くいて、自然の中でのサウナを満喫していました。これまでの日本のサウナのイメージとは異なる新しいサウナ・カルチャーが定着しつつあることを強く実感しました。
水着で参加できるため、男女関係なくサウナを楽しめるのも魅力。
フィンランド流、湖の水風呂を楽しむサウナーたち。
また、テントサウナはフィンランド製やロシア製が多いのですが、会場で出会った代理店の人に話を聞くと、最近はアウトドア好きの人が水辺のキャンプなどでの楽しみの1つとしてテントサウナを購入するケースも増えているということでした。値段はピンキリですが、私が聞いた範囲では、比較的安価なもので8万円台から購入可能なようです。
私もフェスのサウナを体験しましたが、木々の匂いが漂う自然の中で楽しむサウナは心からリラックスできる時間で、忙しい日常を送る現代人にとって最高にぜいたくな空間だと感じました。
会場の至るところに“ととのった”サウナーの姿が
サウナブームの火付け役でフェスの主催者の1人でもあるタナカカツキさんは、サウナブームの広がりについて、「無機物に囲まれて背中を丸めてスマホを見るという生活がずいぶんと続きましたので、服もスマホも肩書も全部ロッカーに入れて、ゆっくりとサウナを楽しんでほしいです。今後サウナが、ブームではなくて、むしろ日常に当たり前にある存在になればいいなと思います」と話しています。
サウナの素晴らしさを世に広める「サウナ大使」(日本サウナ・スパ協会 公式任命)でもあるタナカカツキさん。
新たな広がりを見せているサウナ・カルチャー。
この記事を読んで少しでもサウナに興味を持った方がいましたら、ぜひ一度、お近くのお風呂屋さんなどで、サウナの扉を開いてみませんか。

科学文化部記者

河合哲朗

平成22年入局。前橋局・千葉局を経て、平成27年から科学文化部で文化取材を担当。文芸・文学史をはじめ、音楽や映画などのポップカルチャー、囲碁・将棋まで幅広く取材。

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記事の内容は作成当時のものです

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