COLUMN

ストレスを客観的に計測する指標に?物質を発見

2019.09.03 :

上司や同僚との人間関係、長時間の通勤、家庭でのトラブル、ネットでのやりとり・・・。

 

皆さんはどのような場面でストレスを感じるでしょうか。

 

ストレスの感じ方は人それぞれで、それを見ることはできません。しかし、これからは、どの程度のストレスを感じているのか、客観的な数値で表すことができるようになるかもしれません。

 

大阪大学の研究グループが、ストレスの度合いによって濃度が変化する物質を発見しました。

ストレス、感じてますか?

皆さんの職場では、「ストレスチェック」は実施されているでしょうか。

平成27年から、従業員が50人以上の職場で年に1回実施することが、労働安全衛生法で義務化されています。ストレスの度合いを把握し、メンタルヘルスが不調になるリスクを抑えようというものですが、そもそもストレスの計測は、一筋縄にいくものではありません。
現在、健康診断などで心の健康状態を測るのによく使われているのは、「K6」と呼ばれる方式です。アメリカで開発され、「神経過敏に感じましたか」「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」といった6つの質問に答えるアンケート形式です。

ただ、ストレスを感じる場面や感じ方は人それぞれです。どの程度のストレスを感じているのか、ことばで表現しようとしても、人によって異なってきます。さらに、答え方によっては「ストレスなど感じてない」と見せかけることもできてしまいます。

老化に関わる物質に注目

ストレスの度合いを、客観的に計測することはできないか。そんな研究を行ったのは、大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの中西香織助教らの研究グループです。
研究グループが注目したのが、動脈硬化や皮膚の萎縮など、老化に関わる物質として知られる「αクロトー」という物質です。

元々、研究グループでは、喫煙習慣がαクロトーの血中濃度を上昇させることを、別の研究で明らかにしていました。喫煙は、体に負荷、いわば、ストレスを与えます。αクロトーの濃度の上昇は、喫煙だけでなく、ほかの生活習慣を原因とするストレスとの間にも、なにかしらのつながりがあるのではないか、と考えたのです。

実験では、たばこを吸わない、健康な40代から60代の男性およそ100人の健康診断のデータを活用し、本人が感じているストレスの程度と、血液中に含まれているαクロトーの濃度を測って比較しました。
すると、「ストレスに対応できているか」という質問で、できていないと答えた人は、できていると答えた人よりも21.3%、αクロトーの値が上昇していました。

また、「睡眠で十分な休養がとれているか」という質問で、できていないと答えた人はできていると答えた人よりも35.7%、値が上昇していたのです。

これらの結果から、研究グループは、ストレスの度合いによって、αクロトーの濃度が変化していると考えられ、この物質が、ストレスを客観的に計測するための指標になるのではないかとしています。

実用化に向けて

研究グループは、今後、ストレスが原因で実際に病気になってしまった場合や、問題が解決されてストレスがなくなった場合などに、αクロトーの濃度がどのように変化するのかを研究して、αクロトーを日常の健康診断などで手軽に活用できるようにしたいと考えています。

また、検査にかかる費用を抑えることも必要だとしています。

研究にあたった中西助教は次のように話しています。
「自分が疲れていることやストレスを受けていることに気付かずにいて、倒れてしまったり、病気になったりして初めて気付く人もいる。客観的な指標があれば、自分で気付くこともできるし、会社や学校できちんと対応することもできるのではないか」
私自身、どれだけのストレスを抱えているのか、自覚しにくいと感じますし、健康診断で問診を受けても、表現するのが難しいと感じることもあります。

「ストレスがかかっています!」

身につけているだけで、そんな風に知らせてくれる装置の開発は、そう遠くないのかもしれません。

今回の研究結果は、アメリカの科学誌「Journal of Investigative Medicine」に、掲載されました。

※掲載された論文はこちらから(※NHKサイトを離れます)
https://jim.bmj.com/content/early/2019/07/18/jim-2018-000977

※厚生労働省は、職場のメンタルヘルス対策や過重労働対策に関する情報をまとめた「こころの耳」というサイトを開設しています。ストレスをケアする方法や相談窓口などがまとまっています。アクセスはこちらから(※NHKサイトを離れます)
https://kokoro.mhlw.go.jp

大阪放送局記者

三谷維摩

平成21年入局。徳島放送局、金沢放送局を経て、平成29年から大阪放送局で医療、科学、文化を担当。最先端の研究や上方ならではのお笑い文化など幅広く取材。

三谷維摩記者の記事一覧へ

記事の内容は作成当時のものです

COLUMN一覧に戻る

関連記事