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がんゲノム医療 本格的に開始へ 遺伝子検査に医療保険適用

2019.05.29 :

患者の遺伝子を調べてその患者に合った抗がん剤を探す新しいがん治療の手法、「がんゲノム医療」のための遺伝子検査に公的な医療保険が適用されることが、29日に開かれた中医協=中央社会保険医療協議会で決まりました。国が推進する「がんゲノム医療」は来月から本格的にスタートすることになります。

 

「がんゲノム医療」は、患者の遺伝子を網羅的に調べて効果が期待できる抗がん剤を患者ごとに探す新しいがん治療の手法で、国は、地域のがん治療の拠点病院など全国160余りの医療機関で実施する準備を整えてきました。

29日開かれた中医協で、「がんゲノム医療」に欠かせない遺伝子検査に公的な医療保険が適用されることが決まり、このがん治療の新しい手法が来月1日から本格的にスタートすることになりました。

対象となるのは、がんの再発などで標準的な治療では効果が見込めなくなった患者などで、開発途中の抗がん剤や、国内では未承認の薬などにも選択肢を広げて薬を探すことで、再び治療を行えるようになるケースが増えると期待されています。

国は、「がんゲノム医療」をがん対策の重要な柱と位置づけていて、今後、患者から得られるデータを基にさらにがん治療の質を高めたいとしています。

「がんゲノム医療」とは

「がんゲノム医療」は遺伝子の検査を行って、効果が期待できる薬を患者ごとに探すがん治療の新しい手法で、国が定めるがん対策の基本計画の柱の1つとして進められています。

がんは進行したり再発したりすると、それまでの治療法では効果がなくなってしまうことが多くあります。

今回、対象となるのは、こうしたことが原因で標準的な治療の効果が期待できなくなり、治療の手立てがなくなった患者などで、最大で年間2万5000人余りと見込まれています。
はじめに患者からがんの組織などを採取して遺伝子解析を行い、100以上のがんに関係する遺伝子を網羅的に調べます。

そして、この検査でわかった遺伝子の特徴を手がかりに患者に合った薬を選んでいきます。

候補は、承認されている薬だけでなく、他の種類のがんの薬のほか、臨床試験が行われている開発中のものや、海外でしか承認されていない薬など選択肢を広げて探すことになります。

患者個人の特徴に合わせて治療を行う、いわば「オーダーメード」に近い医療で、治療の手立てがなくなった患者でも再び治療を行うことができるケースが増えると期待されています。

データに基づいて、どの薬を選択をするかは、高い専門知識が求められるため、がんの治療薬の専門家などが参加して検討する仕組みになっています。

そのため「がんゲノム医療」の検査が受けられる施設は、地域のがん診療の拠点病院など全国167の医療機関に限られています。

この新しいがん治療の手法が推進される背景には、肺がんや乳がんなどがんの種類が異なっても原因となる遺伝子は共通するものがあることが研究によって明らかになり「がんを引き起こす共通の遺伝子」を標的にした薬の開発が進んできたことがあります。

また、遺伝子解析の技術が急速に進み、安く、しかも早く、がん組織の遺伝子を解析できるようになったことも背景の1つとなっています。

大きな期待の一方で多くの課題も

「がんゲノム医療」には大きな期待がかけられる一方、課題も多くあります。

その1つが、検査を受けたとしても新たな治療薬が使えるとは限らないことです。

国立がん研究センターなどが200人余りを対象に行った臨床研究では、検査の結果を基に実際に薬を選び投与を開始できたケースは全体の1割余りにとどまったということです。

がん特有のさまざまな遺伝子の特徴が分かってきていますが、薬の開発は追いついておらず、検査をしても対応する薬がないケースが多いのです。

また検査結果を基に効果が期待できそうな薬が見つかったとしても、国内で未承認のものの場合は薬の費用は全額自己負担となるため、治療費が高額になることがあります。

さらに検査から治療開始まで時間がかかることも課題です。

患者からがんの組織を採取し結果が伝えられるまでには2週間から3週間ほどかかり、その結果を基に薬を探して治療を始めるまでにはさらに時間が必要です。

がんが進行するなどして体の状態が悪くなると、治療が受けられなくなってしまうことがあると指摘されています。

記事の内容は作成当時のものです

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