STORY

原発 テロ対策施設遅延なら運転停止へ

2019.04.24 :

原子力規制委員会は、24日、原子力発電所でテロ対策の施設が期限までに設置できない場合、原則として運転の停止を命じることを決めました。
期限を過ぎても運転できるよう求めていた電力会社の意向を退けた形です。
川内原発(鹿児島県)はすでに期限まで1年を切っていて、運転が停止される可能性があります。

問題のテロ対策施設とは

問題となっているのは、「特定重大事故等対処施設」と呼ばれる施設です。東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて作られた新しい規制基準により、設置が義務づけられました。
テロによる航空機の衝突などへの対策として、原子炉から100m以上離れた場所に予備の制御室や電源、ポンプなどを設け、遠隔で原子炉を冷却できるようにすることが求められています。

施設の場所は、テロ対策上、明らかにされていません。
この施設、当初は新規制基準の施行から5年後(平成30年7月)までに設置することとされましたが、多くの原発で再稼働に向けた審査が長期化したため、4年前(平成27年)、「原発の工事計画の認可から5年以内に設置する」と見直されています。

電力各社 工期遅れる見通し明らかに

ところが、九州電力と関西電力、四国電力は、4月、複数の原発で工期が期限より1年から2年半遅れる見通しを明らかにし、原子力規制委員会に対し、期限を過ぎても運転できるよう求めました。
ほかの電力会社も含め、工期が期限に間に合わないか、めどが立っていない原発は、全国の7原発13基に上り、このうち5原発9基がすでに再稼働しています。

各社の見通しは以下の通り。
九州電力:
▼川内原発(鹿児島県)
▽1号機※最も早く再稼働
来年3月の期限よりおよそ1年遅れ
▽2号機※再稼働
来年5月の期限よりおよそ1年遅れ

▼玄海原発(佐賀県)
▽3号機と4号機※再稼働
3年後の期限には間に合わない見通し
関西電力:
▼高浜原発(福井県)
▽3号機と4号機※再稼働
来年8月と10月の期限よりおよそ1年遅れ
▽1号機と2号機
再来年6月の期限よりおよそ2年半遅れ

▼美浜原発(福井県)
▽3号機
再来年の期限よりおよそ1年半遅れ

▼大飯原発(福井県)
▽3号機と4号機※再稼働
3年後の期限よりおよそ1年遅れ
四国電力:
▼伊方原発(愛媛県)
▽3号機※再稼働
再来年が期限よりおよそ1年遅れ
日本原電:
▼東海第二原発(茨城県)
4年後の期限に対し着工のめど立たず

「いつか来た道に戻るかどうかの分かれ目」

原子力規制委員会 更田豊志委員長
これに対し、原子力規制委員会は、24日、延長は認めず、期限に間に合わなかった原発は原則として運転の停止を命じることを決めました。

その理由として、更田豊志委員長は「基準を満たしていない状態になった原発の運転を看過することはできない」と述べました。

運転の停止を命じる具体的な手続きは今後検討するとともに、運転停止後も、テロ対策施設の工事が完了し、規制委員会の検査に合格すれば、再稼働は可能としています。

電力会社側の意向を退けた今回の決定について、更田委員長は記者会見で、期限が迫る中で間に合わないと訴え始めた電力会社の姿勢を厳しく批判しました。
「工事に対する見通しが甘かったし、規制当局への出方も甘かった。何とかなると思われたとしたら大間違いだ」
その上で、電力会社の事情を考慮して規制の在り方を変えてしまえば、福島第一原発事故から教訓を学んでいないことになると、強い口調で訴えました。
「運転中の原発がテロ対策施設の設置期限を仮にきょう迎えたとしても、きのうときょうではリスクは変わらない。しかし、設置に手間取るとか、もう少し時間がかかるとかということを繰り返していたら、新しい規制の精神では安全の向上につながらない。いつか来た道に戻るかどうかの分かれ目だ」

電力各社コメント

今回の原子力規制委員会の決定に対する、電力各社の反応です。
九州電力
「安全性をさらに高めようと設計の見直しを重ねた結果、施設の配置場所を確保するのに必要な固い岩盤の掘削などの土木工事が、想定より大規模で難しいものになってしまった。今後の対応についてはしっかりと検討して参りたいと考えています。テロ対策の施設はさらなる安全向上のために必須のものとして認識しているので、早期の完成に向けて引き続き最大限の努力を続けて参ります」
四国電力
「きょうの決定を非常に厳しい判断と受け止めている。丁寧かつスピード感を持って審査に対応するとともに、その後の工事についても工期の短縮が図れるように最大限の努力を継続していきたい」
関西電力
「施設の早期完成に向けて引き続き最大限の努力を継続する」
電気事業連合会
「テロ対策施設などは原発のさらなる安全向上のために必須のものと認識しており、早期の完成に向けて最大限の努力を継続する」

電気料金に影響が及ぶ可能性も

一方で、原発が停止すれば、電力会社の経営に影響が及ぶ可能性があります。

電力各社によりますと、原発が1基停止すると、火力発電でその分の発電を代替することになり、天然ガスや石油などの燃料費が年間500億円前後かかるとしています。

原発を再稼働させた関西電力や九州電力は、発電のコストが下がったことを理由に電気料金を値下げしていて、原発を停止することになれば、電気料金に影響が及ぶ可能性があるほか、夏や冬に電力の需給が厳しくなるおそれもあります。

関係者の受け止めは

鹿児島大学・宮町宏樹教授(川内原発の安全性などを検証する鹿児島県の専門家委員会座長)
「原子力規制委員会は常識的な判断をしたと受け止めている。福島第一原発事故の教訓を踏まえて定めた原発の規制基準を、規制委員会みずからがそのときどきで変えてしまっては何のためのルールなのかということになるので、原発の安全性を考える上で妥当な判断だ」
鹿児島県薩摩川内市・岩切秀雄市長(川内原発が立地)
「具体的なことは承知していないので、現時点においてコメントは差し控える」
鹿児島県・三反園知事
「原子力規制委員会において考え方などが示されたと承知しています。県としては今後の動向を見守ってまいります」
「川内原発30キロ圏住民ネットワーク」高木章次代表(原発に反対する鹿児島県内の住民グループ)
「本来であれば、テロ対策のための施設は再稼働の前に完成していなければならない施設だった。今回の決定を評価はしているが、規制機関として、最低限のことをやっただけだ」

科学文化部記者

大崎要一郎

平成15年入局。平成20年から報道局科学文化部。主に原子力や科学分野の取材を担当。平成27年から2年間は福島放送局で原発事故の取材をしていました。現在は天文や海洋、先端科学など幅広く取材しています。

大崎要一郎記者の記事一覧へ

科学文化部記者

藤岡信介

平成20年入局。青森局・福井局を経て、平成29年から科学文化部で原子力分野を取材。前任の福井局では、原発の再稼働や廃炉、高速増殖炉「もんじゅ」などを取材し、現在は、原子力規制委員会を担当。

藤岡信介記者の記事一覧へ

記事の内容は作成当時のものです

STORY一覧に戻る