STORY

漫画家 矢部太郎と考える“核のごみ”

2019.04.17 :

ニュースで時々、耳にする「核のごみ」。原発で使い終わった核燃料から出る『高レベルの放射性廃棄物』のことです。なにが高レベルかというと、廃棄物から出る放射線。極めて強いので、どこに処分するか決まっていません。原子力の大きな課題の1つです。

 

「身近じゃないから興味ない」と言わないで!大切な問題なので、少しでもわかりやすくお伝えしたいと今回、お笑いコンビ「カラテカ」の1人で漫画家の矢部太郎さんに、マンガにしてもらいました。

“まったくわからないかも”

ことし3月、私たちは矢部太郎さんと初めてお会いしました。

核のごみの現状をマンガにしてもらうための打ち合わせです。

矢部さん、そもそも核のごみってご存じでしたか?
「まったくわからないかもしれないです」
核のごみという言葉は聞いたことはあるけど、よくわからないという矢部さん。みなさんも一緒に核のごみについて考えてみましょう。

“それが核のごみなんですね”

ふだん、私たちが何気なく使っている電気。火力、水力、太陽光、そして原子力などを利用して発電されています。

このうち、原発からは使い終わったウランなどの核燃料のいわば燃え殻、使用済み核燃料が出てきます。

日本では、この使用済みの核燃料を、再び原発で燃料として使おうと計画しています。
「え?そんなことできるんですか?」
使用済み核燃料は、青森県六ヶ所村にある再処理工場という施設に運ばれます。ここで再び原発で利用するプルトニウムなどを取り出し、「リサイクル」しようと考えているのです。そして、この過程で出てくるものが大きな問題となっているんです。
「あ、それが核のごみなんですね」
そうなんです。取り扱いがやっかいな廃液が出てきます。

これをガラスと混ぜて固めたものが、いわゆる「核のごみ」と呼ばれています。

この核のごみがやっかいなのは、放射線が極めて強いことです。
つくられたばかりのときは、人が10数秒とどまるだけで死に至るレベルの被ばくをするとされています。

原発で生み出した電気は最終的にこうしたごみが出てくるんです。
「なんかやっぱり出るんですね、ごみっていうのが…」

“数万年、誰も生きていない”

この核のごみ、すでに青森県六ヶ所村と茨城県東海村の施設にあわせておよそ2500本がたまっています。

オレンジ色のふたの下に入っていて、十分に温度が下がるまで30年から50年間、厳重に保管し続けることになっています。

矢部さん、この核のごみ、どうしたらいいと思いますか?
「えー、普通のごみは埋め立てますよね。だから、どこかに埋めるんですよね?」
そう、国は、300メートルよりも深い地下に埋めるとしています。
「めちゃくちゃ深いですね!なんでそんな深いんですか?」
理由は、核のごみから出る極めて強い放射線にあります。天然のウランと同じくらいの線量に下がるまでかかる時間は、なんと“数万年”。その間、人も立ち入れない地下深くで保管する考えなんです。
「数万年!えっ?もう誰も生きていないですよね、私たち。まったく想像できないです。急にすごいスケールの話が…。地震とかあったらどうなるんだろう」
地震大国と呼ばれる日本ですもんね…。

処分地を決めるのは、電力会社などでつくる「原子力発電環境整備機構」、通称・NUMO(ニューモ)です。

NUMOは、処分地を選ぶプロセスで、近くに活断層や火山活動がないか詳しく調査するとしています。
また、これまでの研究では地下深くの岩盤は安定していて地震の揺れの影響は小さく、地下水の流れも緩やかだとしています。

また、核のごみは、分厚い金属の容器や特殊な粘土で包まれ、外部に放射性物質が漏れにくいよう対策を施すため安全性は確保できるとしています。

“引っ越したいなと思う”

ただ、この処分地、なかなか決まりません。

日本で最初の原発が稼働し始めてから50年以上がたちますが、一向に候補地も見つからなくて…。
「うーん、ごみ箱がないのに、ごみをどんどん出しているみたいなことですよね」
NUMOが設立されたのは2000年。これまで繰り返し全国各地で説明会を開くなど、自治体に処分場の調査を受け入れてもらうための活動を続けてきました。しかも、文献による調査だけでも受け入れた自治体には最大20億円が交付されるんです。

さらに詳しい調査を受け入れればより高額の交付金が入る仕組みとなっています。

これに対して、財政難に苦しむ一部の自治体が検討する動きを見せました。

2007年、過疎や高齢化が進む高知県東洋町は、全国で唯一となる調査受け入れの応募をしました。

しかし、住民の反対などで応募は撤回。その前の年にも、滋賀県余呉町の町長が応募する方針を明らかにするなど、全国各地で検討の動きがありましたが、住民の反発を受けるなどして応募するまでには至りませんでした。
仮に矢部さんのお住まいの近くで「処分場をつくりたいのですけど、どうですか?」と聞かれたら、どうですか?
「ちょっと、引っ越したいなと思ってしまいますね。処分場が近くにあると、皆さん、僕の家に来てくれなくなりそうですよね」
海外でも高レベルの廃棄物の処分は大きな課題となっていて、どの国でもまだ処分は行われていません。

ただ、処分場の計画が進んでいる国もあります。

最も計画が進んでいるフィンランドでは、すでに処分場の建設が始まっていて、2020年代から処分を始め、スウェーデンでも処分地は決まっていて、2030年代から処分を始めるとしています。

いずれも地震のリスクが小さい国とされ、計画は原発の立地地域で進められています。

“話をしている間も使っている”

科学的特性マップ
進まない処分場選定の閉塞感を打破したい。

国は、2017年7月、ある全国地図を公表しました。

「科学的特性マップ」と呼ばれるもので、処分場として適性のある地域などが色分けされています。

このうち、近くに火山や活断層がないなどの基準から、処分場として「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」は薄い緑色と濃い緑色で示されています。
「難しい。ちょっと意味が分からないですね、この言葉」
あくまでも科学的に見て「好ましい」というだけで、実際に緑色の場所が候補地になるわけではないと、誤解を避けるための表現だそうです。
「候補地ってわけではないんですね。全然決まっていないんですね、本当に」
8年前の福島第一原発の事故のあと、原子力に対する不信や不安が強まりました。処分場の候補地選びについては、まず、国や事業者が「信頼」を得ること。

そして、核のごみの問題に関心をもってもらうことが大事だと関係者は話しています。

NUMOは、去年1年間に全国各地で43回、説明会を開きました。

しかし、参加者は平均で20人。たった4人しかいなかった会場もありました。どうやったら核のごみへの関心を高められるか、相変わらず大きな課題となっています。
「この話をしている間にも、私たちは電気を使っているわけですもんね。電気を使わないわけにいかないですもんね…」
矢部さんは、核のごみの問題に少しでも関心をもってもらえればと、わかりやすくマンガで描いてくれました。そして、次のメッセージを寄せてくれました。
「今まで描いたことがないテーマ、恥ずかしながらほとんど分からないことを、僕自身が勉強しながら描かせて頂きました。そのなかで大きな課題が残されていることを知り、どうしたらよいのかな?どんどんもやもやした気持ちになりました。いつもはマンガを描き終えるとスッキリした気持ちになるのですが、すごく、もやもやしています」
矢部さんのマンガは、こちらのサイトからご覧いただけます。
『どうする核のごみ』

科学文化部記者

重田八輝

平成19年入局。福井局・大阪局で原子力分野を中心に、アスベスト・化学物質による被害、先端医療などを取材。平成27年から科学文化部で、国の原子力政策や福島第一原発の廃炉などを担当。
重田八輝記者の記事一覧へ

ニュースウオッチ9

馬場卓也

ディレクター

馬場卓也記者の記事一覧へ

記事の内容は作成当時のものです

STORY一覧に戻る