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温暖化対策「長期戦略」案まとまる 排出二酸化炭素の再利用も

2019.04.23 :

地球温暖化対策を進めるための政府の「長期戦略」の案が、23日まとまりました。いったん排出された二酸化炭素を回収し、再利用する新たな技術の開発を進めることなどが盛り込まれています。

この「長期戦略」は、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を締結したすべての国に、来年末までに策定し、国連に提出することが求められています。

この戦略の政府案が、23日に開かれた会合で公表されました。

それによりますと、「パリ協定」では、世界全体の温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにする目標が掲げられていて、これを受けて政府も2050年までに国内で80%削減する目標を立てています。

これを達成するため、火力発電への依存度を可能なかぎり引き下げる一方、太陽光や風力、それに地熱による発電など二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを「主力電源化」することを強調しています。

そのうえで、いったん排出された二酸化炭素を回収し、燃料などとして再利用する技術を開発して、4年後の2023年までに実用化することや、燃料電池車などに使われる「水素エネルギー」の製造コストを、今の10分の1以下にして普及をはかることなどが盛り込まれています。

政府は、今後、一般から意見を募集したうえで、ことし6月のG20大阪サミットまでに「長期戦略」を策定する方針です。

二酸化炭素回収のカギは宇宙に

23日、示された政府の「長期戦略」の案では、大気中にいったん排出され、蓄積されている二酸化炭素を回収する方法について、基盤となる技術の確立が必要だとしています。

この技術について、日本では、これまで、宇宙船や潜水艦の中など「限られた空間」から回収する方法の開発が進められてきました。

このうち、JAXA=宇宙航空研究開発機構が進めてきたのは、宇宙船内で人間が呼吸によって排出した二酸化炭素を高い効率で取り除く装置の開発です。

今は、アメリカなどが中心となって2026年ごろの完成を目指している、月を周回する新しい宇宙ステーション、「ゲートウェイ」での活用を想定し、開発が進められています。

装置には、「アミン」と呼ばれる化学物質を使った粒状の吸着剤がたくさん入れられていて、二酸化炭素を吸着する高い能力があるということです。

この装置を使うことで、75立方メートルの空間内で、大人4人が1日にはき出す二酸化炭素をすべて回収できるということで、JAXAは、5年後の2024年までの実用化を目指しています。

ただ、これには、1日に1キロワットの電力が必要になります。JAXAによりますと、この技術を地上で応用するには、回収の対象となる空間が大きくなることから、さらに多くの電力が必要になり、現時点では、回収するよりも多い二酸化炭素を放出することになる可能性があるということです。

JAXA有人宇宙技術センターの中野屋壮吾技術領域主幹は、「まだまだ課題は多いが、私たちの技術を応用した装置が地上に並んで、大気中の二酸化炭素を回収できたら、地球温暖化対策の切り札になるかもしれない」と話しています。

専門家「改めて考える機会に」

地球温暖化対策に詳しく政府の「長期戦略」策定に向けた専門家の会議の委員も務めている東京大学の高村ゆかり教授は、二酸化炭素を回収する技術開発について、「経済性やコストの点で課題が多く、将来の実現可能性について不確かなところがあるが、二酸化炭素の排出を本当にゼロにしていくならばチャレンジしていく必要がある」と述べました。

そのうえで、「最近の気候変動、温暖化が要因になっていると思われる自然災害が非常に甚大、激甚なものになってきている。こうした危機感が、排出を大きく、急速に減らしていかなければならないという共通の認識を生んでいると思う。戦略の案には、温暖化対策を進める中で日本経済や企業の成長の機会を見いだそうというメッセージも込められている。『2050年までの80%削減』などに向けて、私たちがどうすべきなのかということを改めて考える機会にしていただきたい」と話していました。

記事の内容は作成当時のものです

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