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“ゲノム編集で双子誕生” 中国人研究者の姿は

2018.12.06 :

「ゲノム編集」と呼ばれる技術で遺伝情報を書き換えた赤ちゃんが産まれたと、中国の研究者が主張している問題で、この研究者を知るアメリカ人の研究者に話を聞くことができました。彼が語った中国人研究者の姿とは。

南方科技大学 賀建奎 准教授
中国の南方科技大学の賀建奎 准教授(が・けんけい)は、ことし11月、ゲノム編集で遺伝情報を書き換えたヒトの受精卵から、双子が産まれたと主張。中国当局は「法や規則などに違反している」と指摘して、活動の停止を指示しています。
スタンフォード大学 ウィリアム・ハールバット教授
この問題が明らかになる前から賀准教授を知るアメリカ・スタンフォード大学の生命倫理の研究者、ウィリアム・ハールバット教授に話を聞きました。

「わたしからみた賀准教授は、まじめで熱心な研究者。アメリカでも知られた研究室で博士号を取得したり、研究を行ったりしており、ゲノム編集については十分な知識があった」。
ハールバット教授によると、賀准教授は2017年1月、スタンフォード大学で開かれたゲノム編集に関する研究者の会議で、ネズミやサルなどの動物の受精卵でゲノム編集を行う計画があることを話したということです。

このときに賀准教授と知り合ったハールバット教授は、最初のときを含めて合わせて4回、スタンフォード大学や自宅で、ときには自宅近くの林を散歩しながら、数時間にわたって、ゲノム編集や生命倫理などについて話し合ったといいます。

そして、ことし10月に自宅近くで会ったとき、賀准教授は「年末までに重要な論文を発表する」と話したということです。
「その内容については、はっきりと述べなかった。しかし、それまでの話からヒトの受精卵に対してゲノム編集を行ったのではないかと感じた」と振り返るハールバット教授。
このとき、賀准教授は「ヒトに応用することが重要で、批判されてもかまわない」などと話したということです。
ハールバット教授は、「賀准教授は、科学に関する知識はあったが、あまりにも成果を得ることを急ぎすぎて、自身の行為によって引き起こされる問題を自覚していなかったのではないか。有望な科学者として輝かしい未来が待ち受けていたと思われるのに、いまはどこにいるのかも分からず、心配している」と話していました。

最後に、生命倫理の専門家として、今回の問題はどのようなこととして位置づけられるか聞きました。

スタンフォード大学 ウィリアム・ハールバット教授
「ゲノム編集は革命的な技術で、簡単に遺伝情報を書きかえることができるが、とくに受精卵に対して行うことは、何世代にも渡って予想できないような結果をもたらすおそれもあり、人類全体に関わる問題だ。多くの人が気づかないうちに、私たちはきわめて重要な過渡期にいる。人類の未来をどう形作っていくのか問われている」

アメリカ総局記者

籔内潤也

1996年入局。京都・大阪・和歌山を経て、2008年から科学文化部で、再生医療やがん、放射線の影響など医療分野を取材。2013年から長崎で事件・原爆担当のニュースデスクを経験した後、2016年にアメリカ総局(ニューヨーク)特派員。宇宙や医療などの科学分野のほか、トランプ政権で揺れるアメリカの科学、そして、日本の研究の国際的地位の低下を憂慮しながら取材。2019年、科学文化部医療担当デスクに。

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