COLUMN

日本の情報収集衛星ってどんなもの?

2018.02.26 :

安全保障に関する情報を集める政府の情報収集衛星が、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケットの38号機で打ち上げられました。情報収集衛星は、これまでに16機が打ち上げられていて、衛星の開発や打ち上げ、運用に、過去10年間で年間平均700億円あまり、情報収集衛星の導入が閣議決定された平成10年以降、総額1兆3000億円近い国費が投入されています。安全保障に関わることを理由に、情報収集衛星の能力や打ち上げの詳細な情報はほとんど公開されませんが、日本の情報収集衛星とはどんな人工衛星なのでしょうか。

事実上の偵察衛星

情報収集衛星は、平成10年の北朝鮮による弾道ミサイル「テポドン」の発射をきっかけに政府が安全保障に関する情報を独自に集めようと導入した、事実上の偵察衛星です。政府の内閣情報調査室・内閣衛星情報センターが開発や運用を担っています。情報収集衛星は、日中の時間帯に高性能のカメラで撮影する「光学衛星」と夜間や悪天候の際に、電波を使って撮影する「レーダー衛星」の2種類があります。「光学衛星」と「レーダー衛星」をそれぞれ2機ずつ、あわせて4機で運用すれば、高度数百キロの上空から地球のあらゆる地点を1日1回以上、撮影できることになり、こうした「4機体制」は平成25年に整いました。現在は6機が運用されていて、今回打ち上げられた「光学衛星」の運用が始まると7機になります。

「能力」や「画像」は特定秘密

情報収集衛星は平成15年に導入された当初は、地上の1メートルの物体を見分ける能力があるとされていました。しかし、現在は、▼地上のどのくらいの大きさのものを見分けられるかを示す解像度や▼情報収集衛星で撮影された画像そのもの、そして、▼画像の分析結果は、いずれも平成26年に施行された特定秘密保護法に基づいて特定秘密に指定されています。
政府の宇宙基本計画では、情報収集衛星の能力について「解像度を含む情報の質等を、最先端の商業衛星を凌駕する水準まで向上すること等により、機能の拡充・強化を図る」としています。リモート・センシング技術センターによりますと、今回、打ち上げられた光学衛星の開発が始まった平成22年時点で、世界最高の解像度を持っていた商業衛星は、アメリカのGeoEye-1という衛星で、大きさが41センチ以上の物体を見分ける能力があったということです。また、現在の最大は同じくアメリカのWorldView-3と4という商業衛星で31センチ以上の物体を見分ける能力があるということです。日本の情報収集衛星はこれらの能力を凌駕することを目指して開発されているとみられます。

「画像」を公開するケースも

一方、内閣情報調査室は平成27年9月の「関東・東北豪雨」の際に、災害に関する画像は公開する新たな方針を決め、堤防が決壊して大規模な浸水被害が起きた茨城県常総市を「光学衛星」が撮影した2枚の画像が、衛星の能力がわからないように画質を落とした状態で公開されました。その後も、去年7月の九州・北部豪雨では被災状況を撮影した画像や先月発生した草津白根山の噴火でも、火口の様子を撮影した画像が公開されています。

投入国費は年間平均700億円あまり日本最大の宇宙事業

衛星の能力や運用状況は謎に包まれていますが、平成10年度の閣議決定以降、衛星の開発、打ち上げ、運用に1兆3000億円近くの国費が投入されています。新年度の当初予算案にも620億円が計上されています。これは、現在、日本人宇宙飛行士の金井宣茂さんが長期滞在中の国際宇宙ステーションに使われる予算の年間およそ400億円を上回っていて、日本の宇宙関連事業の予算としては最大となっています。

「10機体制」に増強の方針

政府は、さらに情報収集衛星の数を増やし「10機体制」を目指すことを、宇宙基本計画の工程表に明記しています。いまの「4機体制」だと、テロや災害が起きた時に、欲しい画像が入手できるのが、翌日になってしまう恐れがあるためだとしています。「10機体制」だと、特定の地点の撮影を1日に複数回できるようになるということです。一方、衛星の設計上の寿命は5年から6年で、体制を維持するには、常に新しいものに更新していく必要があり、当然、予算も継続的に必要になります。

科学文化部記者

古市悠

平成22年入局。水戸放送局時代は、つくば報道室で研究機関の取材をしました。大阪放送局では医療取材などを経験し平成29年から科学文化部文科省担当。

古市悠記者の記事一覧へ

記事の内容は作成当時のものです

COLUMN一覧に戻る