COLUMN

人類最古のイノベーションとは?

2018.02.02 :

人工知能や量子コンピューター、そして月面探査。人類は絶え間ない科学技術の革新=イノベーションによって進歩してきました。このサイトも、そうした人類の未来を見据えた技術革新を取材していますが、いったい人類のイノベーションの「原点」とはどこにあったのでしょうか。

”国宝級”の石器コレクション

世界最古260万年前の石器実物
東京・文京区の東京大学総合研究博物館。ここに人類が初めて成し遂げたイノベーションの産物があると聞いて見に行ってきました。「最古の石器展」として陳列されたアフリカ・エチオピアで出土した石器。国宝級・門外不出のコレクションです。

「デザインされた」最古の石器

「デザインされた」最古の石器、175万年前の「アシューリアン石器」
写真は、いまから175万年ほど前につくられた「ハンドアックス」、「ピック」、「クリーバー」という3種類の「アシューリアン石器」です。製法は複雑。巨大な原石を選ぶことから始まり、そこから20センチから30センチにも及ぶ大きな剥片を切り出し、さらに整形します。ハンドアックス(左)はごつごつとした面で、クリーバー(右)は平たい面で、いずれも大きな動物を解体するのに適した形になってるのです。

石器が語る「最古のイノベーション」

諏訪元 東京大学総合研究博物館館長・教授 1980年代からエチオピアで調査に従事し、ラミダス猿人の化石発見で世界的に知られる人類学の第一人者。
これらの石器を製作した祖先たちは、明らかに最終的な完成形を想定した上で製作していたと館長の諏訪元教授は指摘します。「これらは『デザインされた』最古の石器です。ここまでの精巧な石器を作るのには、相当な計画性や階層的な認知能力が必要となります。ヒトの祖先がサバンナの中で大きな動物を食糧資源として利用するようになり、新たな生活様式を獲得したことが関係していると思います。豊かな食糧資源は脳の発達を可能にしました。その結果、これまでの石器よりも一段と精巧かつ複雑な「アシューリアン石器」が作られたのです。「アシューリアン石器」は、我々につながる、いわば『最古のイノベーション』と言えます」
175万年という時を超えて、目の前で見たこれらの石器。人類社会を大きく変える力をもったイノベーションの「原点」に触れた思いです。新しい視点を持って、科学・技術の最前線を紹介していこうと気持ちを新たにしました。

【メモ】
「最古の石器展」は東京大学総合研究博物館(東京・文京区)での公開は既に終了したが、JPタワー学術文化総合ミュージアム(IMT:東京・千代田区)では石器コレクションのうち8点について4月8日まで展示が行われている。また2月11日から4月22日まで兵庫県立人と自然の博物館(兵庫・三田市)、5月11日から5月31日まで早稲田大学大隈記念タワー(東京・新宿区)で、それぞれ「最古の石器展」が巡回開催される予定。

科学文化部記者

斎藤基樹

平成13年入局。沖縄放送局を経て平成19年から科学文化部で環境問題、生物多様性、文化などを取材。平成25年から3年間、和歌山放送局に在籍した後、平成28年から再び科学文化部で宇宙や先端科学分野を担当。“本業”の昆虫記者歴は30年超。

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