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小惑星の地球衝突に備えよ

2017.05.22 :

地球に衝突するおそれがある小惑星が見つかったとき、私たち人類はどう行動すればよいのか。
先週、東京で、世界各国の宇宙機関の関係者や研究者らが集まり、対策や課題を話し合う国際会議が開かれました。会議には、NASA=アメリカ航空宇宙局をはじめ、世界24の国から宇宙機関の関係者や研究者、およそ200人が参加。たとえば、10年後に東京付近に衝突するおそれがある小惑星が見つかった場合などを想定して、徹底的に議論が行われました。

国際天文学連合のまとめでは、地球に接近するおそれがある小惑星などは、この20年間に相次いで発見され、ことし2月現在で1万6000個余りにのぼります。小惑星などの地球への衝突が現実的な脅威として研究者の間で認識が高まりつつあります。

小惑星の衝突に備え国際会議

今月15日から5日間、東京・江東区の日本科学未来館で、小惑星などの地球への衝突にどう備えるか、世界各国の宇宙機関や研究者らが対策や課題を話し合う国際会議が開かれました。会議では、運営委員長を務めるJAXA=宇宙航空研究開発機構の吉川真准教授が講演し、「現在、アメリカ中心となっている小惑星の監視態勢はまだまだ十分ではなく、現在は空白区となっている日本を含むアジア地域を含めて、監視態勢を強化していく必要性がある」と訴えました。

また、今回の国際会議では、地球に衝突する可能性がある小惑星が見つかったという想定で、どのように対応すべきか検討する訓練を兼ねた研修会も開かれました。研修会にはおよそ200人が参加し、10年後に地球に衝突する可能性がある小惑星が見つかり、その大きさが100メートルから300メートルとみられるという想定で、どのように対応すべきか検討を行いました。
参加した人たちは、8つのグループにわかれて、衝突する可能性のある場所や日時の推定や、市民への告知の方法、市民の避難の方法、そして小惑星に人工衛星をぶつけて小惑星の軌道を変える方法などについて、それぞれ議論を行いました。こうした、小惑星の接近を想定した研修会は、国際会議の期間中、毎日行われ、浮かび上がる課題を各国の研究者の間で共有しました。

なぜいま議論活発に

なぜいま、こうした議論が活発になっているのでしょうか。 小惑星の地球への衝突に備える重要性は、1994年に木星で大規模な天体の衝突が発生したことなどを受けて、1990年代後半から国連でも議論されるようになりました。
特に、世界各国の宇宙機関や研究者が、対策の重要性を痛感したのは、4年前です。2013年2月、ロシア中部のチェリャビンスク州で、小惑星が大気圏に突入して爆発し、その際の衝撃で建物のガラスが割れるなどして、住民およそ1500人がけがをしました。
各国の研究者による調査の結果、小惑星の直径はわずか20メートルほどとみられる一方、地上の被害の範囲は、東西100キロ余りにも及んでいることがわかりました。小惑星に詳しいJAXAの吉川准教授によりますと、それまで地球に衝突して被害を及ぼす小惑星は、直径100メートル以上と考えられてきただけに、その5分の1の大きさで、大規模な影響が出たことに多くの研究者が大きな衝撃を受けたといいます。また、吉川准教授は、この小惑星が、事前には世界のどの宇宙機関にも観測されず、その存在が把握されていなかったことも研究者の間で重く受け止められていると話します。

続々と見つかる小惑星

地球に接近するおそれがある小惑星などの天体は、この20年ほどの間に続々と見つかっています。

国際天文学連合のまとめでは、1990年の時点では、およそ130個しか見つかっていませんでしたが、2000年以降、観測技術の発達で、相次いで大量に見つかるようになり、現在はおよそ1万6000個余りに上っています。
見つかった小惑星の内訳は、大きさが1500メートル以上のものが1000個余り、150メートルから1500メートルまでのものがおよそ7500個などとなっています。

吉川准教授によりますと、現在の観測技術と観測の態勢では、直径100メートル以下の小惑星は見つけることが難しく、その多くがまだ発見されていないとみられるということです。そして、小惑星は、実際に地球に接近したり、衝突したりしています。数多くの人工衛星が飛行している地球から4万キロ以内の近さまで接近した小惑星は、2004年以降の13年間だけでも、17にのぼり、このうち3つは地球に衝突しています。
吉川准教授は、「日本を含め各国が連携して、地球に接近する小さな天体をできるだけ早く見つけられるようにする精度の高い観測網の構築が重要だ」と話しています。

「はやぶさ」で衝突回避の研究も

小惑星の衝突に備えて、早期に発見できる監視態勢と並んで重要なのが、地球に衝突しそうな小惑星が見つかった場合にその軌道を変えるための技術の開発です。小惑星の地球への衝突を回避する方法として、世界の研究者の間で最も有力だと考えられているのは、小惑星に人工衛星を衝突させてその軌道を変える方法です。

日本では、小惑星探査機「はやぶさ」で、こうした技術を開発するための基礎的なデータを集めています。「はやぶさ」は、12年前の2005年に小惑星への着地に成功し、その際、小惑星「イトカワ」の詳しい姿を至近距離から調べました。
吉川准教授によりますと、「はやぶさ」による調査の結果、この小惑星は、いくつもの岩石が集まってできているとみられ、人工衛星のぶつけ方によっては、小惑星の軌道が、意図しない方向に変わってしまうおそれがあることなどがわかったということです。

JAXAでは、現在、別の小惑星に向かっている「はやぶさ2」でも、軌道を変えるための技術開発に必要なデータを集めることにしています。

“地球上で最大級の防災課題”

地球の歴史に残る小惑星の衝突としては、およそ6550万年前、現在のメキシコのユカタン半島に、直径およそ10キロの小惑星が衝突し、地球の気候が大きく変わったことで、恐竜が絶滅したと考えられています。
JAXAの吉川准教授は「小惑星が地球に衝突するときのスピードは、秒速20キロと極めて高速で、もし海上に落ちれば、大規模な津波をもたらすおそれもある。小惑星の衝突は、地球上で起きうる最大級の災害だと考えたほうがよい」と話しています。

はたして宇宙からの脅威に人類は何らかの備えを講じることができるのか。
今回の取材でもっとも印象的だったのは、各国の研究者が一丸となって活発に知恵を出し合う姿です。

なお、現時点で、地球上の生活への影響が想定される、具体的な小惑星の接近情報はありません。

科学文化部記者

黒瀬総一郎

平成19年入局。岡山局、福岡局を経て平成26年から科学文化部。海洋や天文のほか、現在は、サイバーセキュリティーやネット社会の問題を中心に取材。また、全国の水辺を巡って、ウナギやサンゴなど、生態系の保全や資源管理に関する取材を続けている。川で取ってきたニホンウナギを、長年、自宅で飼育し、体長は80センチに(すでに死亡)。

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