虐待などを受け、親元を離れて暮らさなければならない子どもたち。NHKでは、こうした子どもたちの受け皿として国が大幅に増やそうとしている里親の実情を知るために、全国の里親を対象にアンケート調査を行いました。独自の調査によって、里親が置かれている厳しい実情が明らかになりました。
概要 | |
方法 | 郵送・ウェブによる回答 |
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実施時期 | 2018年1月10日~30日(21日間) |
有効回答数 | 549(回収数553) |
主体 | NHK、チャレンジ中野!Grow Happy Family and Community |
協力 | 全国里親会 |
■ 里父のみ就労の家庭が最も多く約半数を占めた一方で、共働きも43%を占める結果になりました。
■ 里親の問題について詳しい静岡大学の白井千晶教授は「子どもたちは問題行動を起こして里親の愛情を試そうとすることがあり、こうした困難な側面を社会に知ってもらうことが重要だ。自治体がNPOなどと連携し、里親家庭にきめ細かく支援する必要がある」と話しています。
■ 子どもについて感じた困難で最も多かったのは基本的生活の難しさで229件。次いで愛着障害が見られるという回答も222件に上りました。
■ 最も多かったのは子どもの生い立ちを伝えたり、周囲に親子の関係を知らせたりする「真実告知」で32.2%に当る123件、次いで、「子どもとの相性」が31.4%に当たる120件でした。
■ また「自分が情緒不安定になる」と答えた人が19.9%に当たる76人いたほか、「里子を虐待しそうになり怖くなる」と回答した人も7人に1人にあたる14.9%、57人いました。
■ アンケートの自由記述の中には「このまま育てていたら虐待してしまうと思い、不調(養育関係を解消)にしてもらった」とか、「自分たちの精神的負担が限界だった」など、子どもを育てる難しさに直面したという回答が複数寄せられました。
■ 「子どもを見捨てたようで、後悔ばかりが残っている」「力不足を感じている」など自分を責める記述もありました。
■ 一方、「児童相談所が一方的に子どもを連れて行ってしまった」「もう少しがんばってみたいのにその機会が与えられなかった」など子どもの養育環境を決める児童相談所の対応について不満の声も寄せられました。
■ アンケートで、手当が十分かどうか聞いたところ、およそ3人に1人の35.9%が「不十分」と回答しました。また、子どもが何歳まで経済的なサポートが必要か尋ねたところ、専門学校や大学卒業までが79.6%、高校を卒業するまでが7.9%でした。
■ どのような費用のサポートが必要か自由記述で聞いたところ、「大学進学などの学費」や「部活動や修学旅行」という声が多く寄せられたほか、「学習塾や習い事に通う費用」という回答もありました。
■ 修学旅行や習い事など学校生活に必要な費用は一定の範囲で支払われていますが、不十分と感じている里親が少なくないことがうかがえます。
■ 最も多かったのは「子育てを通して社会・福祉に貢献したい」が55.5%の304件、「子どもを育てたい」が53.3%の292件でした。
■ 「実子がいなかったから」という回答が42.9%の235件、「不妊治療を断念したから」という回答も30.7%、168件あり、子育ての経験がないまま里親を希望したことも少なくないことがわかります。
里子は我が家をとても明るくしてくれている。子供にとっても、ありのままを受け入れ、大切にしてくれる家庭は絶対に必要だと思う。
(関東甲信越地方 女性)
子供と接していくと可愛くて仕方なくなり、親子は血のつながりだけではないことを身をもって感じた。
(中部地方 女性)
障害児を育てている。とても愛おしく、小さな成長をともに喜ぶことが生き甲斐になっている。
(関東甲信越地方 女性)
里親制度をよく知らない人が多く、里子を養育していることを隠す里親が多い。堂々と言える社会になればいいなと思う。
(関東甲信越地方 女性)
安心して里親ができるための具体的で実践的な支援を作っていかなくてはならないと思う。
(関東甲信越地方 女性)
親権が強すぎて、親が同意をしないばかりに面会もないのに何年も施設で過ごす子供がいてかわいそうだ。
(関東甲信越地方 女性)
制度が里親のハードルを高くしていると感じる。日帰りの預かりから始めていずれ里親になるなど段階的な研修システムを構築していくべきだ。
(関東甲信越地方 女性)
私達里親は社会的養護について知識があり、里親の仲間、児童相談所、支援員の方々と交流があるので、里子、養子を育てることに抵抗はない。しかしいざ里子を引き取ったあと日常的に接して行くのは、そういったことに関心がない近所や職場の人達になる。関心の無い人との付き合いをどうしたらいいのか悩んでいる。まだまだ里親制度に理解知識がない人が多く、養子里子に対し偏見を持つ人が多い。テレビ新聞など多くの人の目につくメディアで里親制度を取り上げて頂いて、理解が進めばいいと思う。
(関西地方 女性)
色々な事があります。辛いことも嬉しいこともたくさんの事がありすぎる人生を選択したことに悔いはないし、やり甲斐を感じています。お父さん、お母さんと呼べる人が居て当たり前の世の中で、その世界を傍から見なければならない子どもたちの存在を私たちは知らなければならないし、子どもたちが一人残さず寂しい思いをせず幸せに成長できるよう、できる事の一つとして里親がもっと世間に広がっていってほしいと心から願っています。
(関東甲信越地方 女性)
たくさんの人と繋がりながら、マラソンのような里親養育から駅伝のようなチーム養育へ繋がることを期待しています。エピソードはうちの子たちの愛らしさは世界一ですのでたくさんありますが、今日感動したエピソードを。上の子は小学校4年生。もうすぐ2分の1成人式です。そのテーマ曲が今日決まったと帰ってきました。kiroroの「生きてこそ」です。歌いだしの歌詞が「ママ私が生まれた日の空の色は?パパ私が生まれた日は嬉しかった?」だったので、この歌をどう思ったか聞いてみました。すると「私とは違うなと思ったけれど、この曲を作った人は私の事情なんかは知らないわけだし、ほとんどの人はこれにあてはまるから別に大丈夫だよ。いい曲だし」とお風呂で歌いまくっておりました。愛着に課題があり自尊感情がとても低い子だったのにここまで成長した彼女の力に感動しました。しんどいことも多いですがこんなことが時々あるので里親は止められません(笑)
(九州地方 女性)
子どもの里親についてまだまだ社会に浸透していない制度です。2年生の学校の授業にある「生い立ち授業」でつまづいてしまう子ども達がとても辛いです。施設にいる子ども達も里親にいる子ども達も、大人の都合でその場にいるだけなのに。もっと社会が理解してほしいと思います。自分の生い立ちに自信が持てるよう社会になって欲しいです。また小さい頃をどのように過ごしてきたか?これは子どもの成長にどのような影響を与えるかをもっと真剣に大人が考えるべきです。心の傷は簡単に消えるわけではありません。傷を癒されていくまでの子どもの葛藤する姿は、とても辛いものがあります。でも苦難な道を子どもと一緒に歩んでいく里親が絶対必要だと思います。
(中部地方 女性)
私達夫婦は不妊治療も出来る限りやりましたが、実子に恵まれませんでした。結婚当初より子供がいる家族を求め里親登録しました。2年間全くお話しが無くあきらめかけていた時にやっと、お話しをいただき現在では特別養子縁組をした4歳になる男の子と3年が過ぎようとしています。親族、近い友人には話してありますが、ほぼ周りにはその事は伝えていません。いろんな考え方の人がいるので、理解して下さる方、偏見を持たれる方、同情の目で見る方、様々です。私達夫婦は自分の意思で選択して求めたことなので何を言われようと戸惑う事もありませんし。全力でこの子を守り育てていくだけです。ただ本人は生まれて望んだ選んだ人生じゃありません。真実告知はしていますが、まだ認識できる年齢では無いので。これからその事はどう受け止めていくのかが、心配なところです。普通の親でも同じかとは思うのですが。この子が来てくれてから、私達の人生は明るく変わりました。子供の力って凄いなぁと、毎日感心する日々です。いろんな方との出会いを連れてきてくれました。本当にこの出会いに感謝です。その思いを繋げる為に。やっと落ち着いてきた昨年から養育里親として本格的にスタートしました。子育て経験は、1人だけで未熟ですが。その子1人1人と向かい合って、心の支えになれるような大人の1人になりたいと思っています。現実問題、私達の様に実子がいない夫婦の里親さんは多いです。縁組が出来なくても自分の有り余る母性や愛情を注ぎ子育てに携わりたいと思っています。1人と真剣に正面から時間をたっぷりかけて育てられる環境は、施設では難しいと思います。お子さんが1人でも寂しく辛い毎日から早く脱出して安心して暮らせる環境になれることを一日も早く願います!
(関東甲信越地方 女性)
綺麗事と思われるかもしれませんが、私は本当に里親になって幸せです。里子がくる前私はボランティア、仕事、友人関係共に満足し幸せな生活を送っていました。縁あって今我が家に子どもがきてますが、彼がきて私はもっと幸せになりました。彼が幸せそうな顔をすると、私も幸せですし、彼が話す言葉、やらかす事等々子供を育てるのは楽しい事です。確かに生活は目まぐるしくなりました。かなり頑張らなくちゃいけません。しかしそれ以上にこの子のとの生活は満足したものです。きっとこの子が家庭を築いた時に幸せな家庭生活が出来るように思いやりのある優しい、そしてしっかりと意見を言える子どもに育てたいと願ってます。
(九州地方 女性)
今回のアンケートでは実際に里親登録をしている方々から、里親を続けていく中での悩みやその中での喜びなど様々な思いを寄せていただきました。こちらのサイトや一連のニュースををみて感じたこと、伝えたいことがございましたら【こちらのフォーム】よりお寄せ下さい。
子どもたちに「居場所」が見つかるよう、社会はどう取り組んでいかなければならないのか、これからも取材を続けていきます。
取材班