里親80%「養育上困難」経験 
NHKアンケート

里親が置かれている厳しい実情が明らかになりました。NHKが全国の里親を対象に独自にアンケート調査を行ったところ、80%以上が子どもを養育するうえで困難を感じたと回答しました。
国は今後、里親への委託率を大幅に拡大する方針で、専門家は、きめの細かい支援が必要だと指摘しています。



虐待などを受け、親元を離れて暮らす子どもについて、厚生労働省は家庭的な環境で育てようと、施設ではなく里親に預ける子どもの数を、今後およそ3倍に増やす目標を掲げ、自治体に対し、目標に沿った計画を作るよう3月中にも伝えることにしています。


NHKはことし1月、里親の有志のグループとともに全国の里親を対象にアンケート調査を行い、553人から回答を得ました。


この中で「養育で困っていることはあるか」と尋ねたところ、80.6%が「はい」と答えました。


どんなことに困っているか複数回答で聞いたところ、子どもの行動について「基本的生活に難しさがある」が最も多く52.5%、次いで「愛着障害が見られる」が50.9%、「ばれるようなウソをつく」が39.7%でした。


また里親のおよそ4人に1人にあたる26.6%が、養育に困難を感じるなどして子どもとの関係を解消する「委託解除」の経験があると答えました。



里親の問題について詳しい静岡大学の白井千晶教授は「子どもたちは問題行動を起こして里親の愛情を試そうとすることがあり、こうした困難な側面を社会に知ってもらうことが重要だ。自治体がNPOなどと連携し、里親家庭をきめ細かく支援する必要がある」と話しています。



関係解消の理由は…

アンケートで、子どもとの関係を解消する「委託解除」を経験したと回答した26.6%の里親たちは、自由記述のなかで、つらい心境を綴っています。


この中では「このまま育てていたら虐待してしまうと思い、不調(養育関係を解消)にしてもらった」とか、「自分たちの精神的負担が限界だった」など、子どもを育てる難しさに直面したという回答が複数寄せられました。


また「子どもを見捨てたようで、後悔ばかりが残っている」「力不足を感じている」など自分を責める記述もありました。


一方、「児童相談所が一方的に子どもを連れて行ってしまった」「もう少しがんばってみたいのにその機会が与えられなかった」など子どもの養育環境を決める児童相談所の対応について不満の声も寄せられました。


「困難」の理由は

アンケートで、子どもを養育するうえで困難を感じていると里親の80.6%が回答していますが、さらに子どもとの関わり方について困ったことを複数回答で聞きました。(回答者数は382人)


最も多かったのは子どもの生い立ちを伝えたり、周囲に親子の関係を知らせたりする「真実告知」で32.2%、次いで、「子どもとの相性」が31.4%でした。


また「自分が情緒不安定になる」と答えた人が19.9%いたほか、「里子を虐待しそうになり怖くなる」と回答した人も7人に1人にあたる14.9%いました。



里親になったきっかけは

アンケートで、里親になったきっかけについて複数回答で聞きました。


最も多かったのは「子育てを通して社会・福祉に貢献したい」が55.5%、「子どもを育てたい」が53.3%でした。


また「実子がいなかったから」と回答した人が42.9%いたほか、「不妊治療を断念したから」という人も30.7%いました。


子育ての経験がないまま里親を希望した人も少なくないことがわかります。



手当などは十分か

里親には、養育に必要な費用として一般的な里親の場合、子ども1人につき、里親手当と子どもの生活費を合わせ、毎月、13万6000円から14万4000円ほどが支払われます。このほか、子どもの成長に合わせ、入学支度金や就職支度費なども支給されます。


アンケートで、手当が十分かどうか聞いたところ、およそ3人に1人の35.9%が「不十分」と回答しました。


また子どもが何歳まで経済的なサポートが必要か尋ねたところ、専門学校や大学卒業までが79.6%、高校を卒業するまでが7.9%でした。


どのような費用のサポートが必要か自由記述で聞いたところ、「大学進学などの学費」や「部活動や修学旅行」という声が多く寄せられたほか、「学習塾や習い事に通う費用」という回答もありました。


修学旅行や習い事など学校生活に必要な費用は一定の範囲で支払われていますが、不十分と感じている里親が少なくないことがうかがえます。



自由記述には里親のやりがいも

アンケートの自由記述欄には、たくさんの声が寄せられました。



「里子は我が家をとても明るくしてくれている。子供にとっても、ありのままを受け入れ、大切にしてくれる家庭は絶対に必要だと思う」とか、「子供と接していくと可愛くて仕方なくなり、親子は血のつながりだけではないことを身をもって感じた」、「障害児を育てている。とても愛おしく、小さな成長をともに喜ぶことが生き甲斐になっている」など里親として子どもを育てる喜びを感じているという声が数多く寄せられました。


一方、制度の課題を指摘する意見もありました。


「里親制度をよく知らない人が多く、里子を養育していることを隠す里親が多い。堂々と言える社会になればいいなと思う」とか、「安心して里親ができるための具体的で実践的な支援を作っていかなくてはならないと思う」という意見もありました。


また、「親権が強すぎて、親が同意をしないばかりに面会もないのに何年も施設で過ごす子供がいてかわいそうだ」、「制度が里親のハードルを高くしていると感じる。日帰りの預かりから始めていずれ里親になるなど段階的な研修システムを構築していくべき」などといった声も寄せられました。



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