虐待対応チームの看護師たちは

埼玉県立小児医療センターの看護師、近藤美和子さんと曽我貴子さんに社会部の野田綾記者が話を聞きました。


看護師の役割は?

野田記者:

一時保護委託をされた子どもを病院で預かる際、看護師は、どのような役割を担うのですか?


近藤さん:

子どもたちが安心して入院生活を送れるようにお世話をするのが看護師の役割です。医療ケアはもちろんですが、乳児であれば、なるべく家庭に近い環境で育てられるように寄り添い、声をかけたり、泣けば抱き上げたりして愛情を持ってお預かりしています。子どもにとっては、病院での生活はかなり環境が変わるので、安心して過ごせるようにどうしたらよいか常に考えています。

野田記者:

虐待を受けた子どもには、どんな特徴がみられますか?


曽我さん:

乳児だと、不機嫌に泣いたり、頭の出血の影響でミルクがうまく飲めなかったりする子がいます。幼児くらいになると、はじめは表情が少なかったり硬かったりして、絵本を読んであげても反応が乏しいことがあります。こうしたお子さんも、看護師などが、毎日一緒に遊んであげたり、泣けば抱いてあやしてあげたり、触れあいを重ねていく中で、徐々に表情が出てきたりします。甘え泣きを覚えたり、あやせば笑うようになったりしますし、もう少し大きくなると、周りの影響を受けて話したり挨拶したりできるようになります。「これを食べたい」とか、自己主張できるようになったりもします。こういう変化が見られると嬉しくなりますね。

成長を支える難しさ

野田記者:

病院という特殊な空間で長く生活することに限界を感じることはありますか?


曽我さん:

お母さんやお父さんに会えない寂しさはあるかも知れません。面会者の制限もありますし、ほかの子どもは面会者が来ているのに自分には来ていないということもあります。病院での生活は制限が多く、寝る時間も決まっていて、ご飯も出されたものしか食べられません。遊ぶスペースはありますが、順番で使わなくてはいけません。病院に長くいることで、かわいそうな思いをさせている面もあると思います。

近藤さん:

大きな子の場合、病院では、友だちとの関係を作るのが難しいと感じます。また、思春期は多感なので、本来なら、家族に気持ちをぶつけていく時期だと思いますが、それができない。その結果、医療者に気持ちをぶつけたりしているところを見ると、子どもの心の成長を支える面では難しさを感じますね。

病院では限界も

野田記者:

親が面会に来ることもあると思いますが、どのように対応していますか?

曽我さん:

面会中は、つききりではないにしても、できるだけ気にかけて見るとか、声をかけるようにして、病院内で再び虐待が起きないように注意しています。同時に、親が子どもにどのように接しているか注意深く見ています。子どもが泣いたときにあやすのか、こちらから声をかけなくても抱っこしているか、そういった親の反応を注意深く観察しています。また、お母さんたちの中には、おむつを替えるなどいろいろと世話をしたいという希望もあるので、必ず看護師がついて、できることをやってもらうようにしています。お母さんたちがちゃんとあやしてくれていたら、子どもは看護師に見せるような笑顔を見せます。親が愛情を持って面会に来ていれば、子どももそれに応えようとするのです。

野田記者:

最後に、子どもたちの保護のあり方について思うことはありますか?


近藤さん:

なるべく家庭に近い環境で育てたいと思って対応しても、病院では限界を感じることがあります。家庭に帰る準備期間中の子どもに、自宅で過ごす時間を設けることがありますが、子どもたちはそういう時間をとても楽しんでいます。家庭での生活を求めているのだと思います。子どもたちの成長のことを考えると、すぐに家に帰すことは難しくても、病院ではない、家庭に近い環境で生活できる施設などにできるだけ早く移れるようにしてあげられたらと思います。

その他の記事
情報・意見はこちら