知られていなかった子どもの「社会的入院」

虐待が疑われる子どもについて、放射線科や小児科の医師や看護師、ソーシャルワーカーなど専門的な立場から対応にあたる埼玉県立小児医療センターの虐待対応チームを取材した、社会部の野田綾記者の解説です。

報道局社会部
野田綾記者

病院は、虐待の疑いがある子どもが運ばれてくると、入院させて治療する一方、児童相談所に通告します。治療が終わった子どもは、本来は、退院しなければなりませんが、児童相談所が家庭に帰せないと判断した場合は、乳児院や児童養護施設などへの入所を検討します。
しかし、施設に常に空きがあるわけではなく、子どもに虐待による後遺症や障害があると入所を断られることもあります。こうして、行き先をなくした子どもは、治療は終わっていても入院を続けざるを得なくなります。これが「子どもの社会的入院」と呼ばれる状態です。

こうした実態は、これまで、一般の人にはほとんど知られていませんでした。その背景には、児童虐待が子どもや親のプライバシーにとても気を遣う問題で、オープンな議論がしづらいという事情があります。さらに、治療の必要がない子どもを入院させることは、現在の保険診療では原則認められていないため、病院の側から、積極的には問題を明らかにしてこなかったこともあります。
問題の解決に向けては、虐待を減らすことが第一ですが、こうした問題が起きていることを多くの人に知ってもらい、問題意識を共有することが重要です。その上で、子どもたちの居場所を確保するにはどうしたらよいか議論していく必要があります。里親や養子縁組を増やしたり、新たな受け入れ先を作ったりするなど、社会全体で子どもを受け入れる裾野を広げていく必要があると感じました。

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