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人口減少対策の切り札に?

地方自治体にとって地域社会をどう維持するのかは深刻な課題だ。
最新の推計では2045年には7割以上の市区町村で人口が2割以上減るとされている。
こうした中、注目したいデータがある。
取材班は全国の市区町村の人口データを独自に分析した。
そのうち、日本人が減った一方で外国人が増えた自治体をまとめた。

外国人の増加で総人口が増加
市町村 ランキング

2017年住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数より作成

このように外国人住民の増加が日本人住民の減少分を補い、
結果として人口全体が増加した自治体が41か所あるのだ。
こうした外国人の存在に注目する動きが今、広がり始めている。
「外国人の移住・定住を切り札にー」
人口減少対策に動く自治体を取材した。

国際化する「神話の国」

縁結びの神様として知られる島根県出雲大社。大国主大神が治めたとされ、「神話の国」とも呼ばれる彼の地の光景にここ数年ある変化が起きている。


出雲市の市街地を歩くと何やら美味しそうなにおいが漂ってくる。
ドアを開いて入ってみるとー

ブラジル料理のレストランだ。

市役所の周りだけでも3つの店があり、ここ数年の間に相次いでオープンしたという。
伝統の出雲そばに加えて本格的なブラジル料理が楽しめる国際的な街に様変わりしつつあるのだ。
レストランだけでなくブラジルの雑貨を扱う店もオープンしている。

市内在住の外国人は1000人増加

出雲市に何が起きているのか。
市内にある大手電子部品メーカーの工場で働く日系ブラジル人などが急増しているのだ。スマホの部品などの主力製品の製造が好調なことを背景に、人員を拡大しているためだ。

市役所に取材に訪れるとブラジル人のグループが窓口にぞろぞろとやって来た。
来日したばかりの家族が転入手続きを行っていたのだ。
市役所では外国人の姿を目にしない日はないという。

定住に数値目標

出雲市は2年前、「外国人住民のうち、5年以上市内に住む人の割合を30%台にする」ことを目指すと宣言した。
外国人の定住に数値目標を掲げ地域の担い手として明確に位置づけたのだ。

市では外国人住民の相談態勢を充実させるため、ブラジル人の嘱託職員も採用している。

また今年度(2018年)の予算では市内の小学校を増築する費用を盛り込んだ。
外国人の子どもが増えていることで今後教室が足りなくなる恐れがあるためだ。
新しい校舎は外国人の子どもたちが日本語教育を受ける教室などにあてられる。
外国人の定住化を図る一環で受け入れ態勢を充実させようというのだ。

日本人の減少を補う外国人

出雲市が外国人の定住を目指すのは、日本人の人口の減少が続いているためだ。

出雲市の総人口は17万4000人余り。外国人の人口は全体の2%弱だが、外国人の増加分で総人口が維持されている形だ。

出雲市の人口の増減

住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数より作成
2013年の数値を0としたときの増減をグラフ化

外国人の中には「永住者」資格に切り替え、出雲市で暮らしていくことを決める人たちも目立つようになっている。

ローンを組んで市内に家を建て親を呼び寄せて3世代で暮らす家族や、長年働いた実績を買われて会社で役職を与えられた人もいるという。 後継者不足に悩む出雲市特産のぶどうの生産に挑戦しようと就農支援を受ける人もいる。

財政維持に不可欠な存在に

こうした動きは出雲市だけではない。外国人住民の存在が財政の維持に欠かせないととらえるのが北海道中央部、大雪山の麓にある東川町だ。

2015年に全国で初めて自治体が運営する日本語学校を設立した。
町独自の奨学金を設けてこの日本語学校と町内にある専門学校の留学生全員を対象に学費の半分を負担するなどして受け入れを進めている。

さらに留学生には毎月8000円分の買い物ができるカードを配布する。ここまで力を入れるのは財政上のメリットがあると考えているためだ。


町にとっては人口などに応じて配分される国の地方交付税が最大の財源だ。
町内に住む約200人の留学生で地方交付税4000万円分を確保できると試算している。それを高齢者福祉や子育て支援の財源にするという。

総務省によると「留学生も住民なので住民が増えれば、その分行政コストもかかるので地方交付税の額が増えることになる」という。
また、留学生が町内で暮らすことで消費の活性化にもつながると期待される。

募る危機感

こうした自治体に共通するのは強い危機感だ。
移住者の住宅の購入費や改修費を助成するなど、どの自治体もあの手この手で人口減少対策に取り組んできた。
しかし、日本全体で人口が減少する中で日本人を呼び込むのは限界があるというのだ。

出雲市の長岡秀人市長は次のように話す。
「人が住まないと街は衰退する。人口減少がもたらす弊害というものは惨憺たるものがある。外国人だろうと日本人だろうと住みやすさというのをもっと極めていけばなんとか人口減社会に逆らうことができるのではないだろうか。
ぜひこの地で永住してもらいたいという思いがある。それをしっかりと取り組んでいくことが元気な地方として生き残る最大のチャンスだと思っている」

また、東川町の松岡市郎町長は次のように話す。
「様々な方法で国内の人を呼び込むこということで展開をするんですけどなかなか集まってこない。国内で若い学生の取り合いをしていてもダメだろうと。留学生でも住民登録をすれば国勢調査上、人口として扱われて地方交付税が配分される。そうなれば留学生が税収の不足分を地方交付税で補ってくれるんですね、それを住民福祉のほうにあてるというようなことができるわけです。外国人であろうと人が住んでいるということは町にとって極めて大きなメリットがあるというふうに考えています」


日本を支える外国人の存在。人手不足に悩む産業の現場だけではなく、自治体の間にも期待が広がり始めている。